①ガニメデの優しい男
ふわり
日だまりの中に優しく影が落ちて、ガニメデは顔を上げた
見慣れた顔に微笑みを返して立ち上がる
「仕事？」
「そうだよ、行こう」
ふわふわと浮かぶ彼を胸に抱いて歩き出せば、マーモンが今回の仕事を説明してくれる
標的はカサノバファミリーのボスの一人息子
随分と勝手をして、親にも愛想を尽かされたらしい
それでもヴァリアーに仕事が回ってくるってことは、そこそこデキるということなのだろう
だが実際は、二人の幻術の前に仕事はすぐに終わったのだった
「ガニメデ、行くよ」
「待って」
言って、ガニメデは男の目を閉じさせる
余りに哀れな男への手向け
「ガニメデって馬鹿だよね」
「そうね」
貴方は何時もそう言うけれど
知ってるわ
それを許してること
だから貴方の情けも同じなのよ、マーモン
「好きよ、優しいマーモン」
「優しいのは君だろ？愚かと同義だけどね」
ならば貴方も愚かだわ
愚かな私を側に置く、優しい優しいマーモン
「好きよ」
「聞き飽きたよ」
それでもいいの
言い足りないから何度でも聞いていて
好きよ好きよ好きよ
好き
「やっぱり好き」
「呆れるよ。そんな君も好きだけどね」
ほら、好き
誰よりも優しい男
2009.10.27.
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