右目の策謀
(※政宗たちの年齢は史実とは異なります)
雪は側室として迎え、愛姫は正室として迎える
それは伊達家として政略的にも必要なことだった
田村氏の娘である愛姫と婚姻を結べば、敵に囲まれた南方に楔を打つ形になる
一方雪は北方最後の抵抗勢力であった安積氏の娘で、北方はすでに政宗の手の中にある
雪を室に迎えると決めたのは病弱な雪の弟の庇護の為だ
「如何されました?政宗さま」
「小十郎、俺はこのまま雪を正室に据えるぜ」
そう言い切れば小十郎は驚いたように伏せていた目を政宗に向けた
政宗に企んだような笑みはなく、真剣な眼差しで小十郎を見据えていた
「それは、伊達家当主としての考えですか?それとも政宗さま自身の」
「Ha!両方だな」
今度こそ政宗は企んだような笑みを見せた
小十郎には政宗の真意が掴めない
熟考しようとして、だが小十郎の意識は政宗に呼び戻された
「南は自力で穫る」
「‥‥‥いいえ、姫には伊達へ嫁いで戴きます」
政宗の意志は堅いが、小十郎の意志も堅かった
正室ではないにしても、奥州筆頭の名は田村氏にとって十分魅力であるはず
伊達にとっても、利あって害なし
「正室は雪様、側室に愛姫様。これで若子が生まれれば、伊達家も安泰」
「‥‥それも当主の務めってことか。okay.雪を正室にできるならそれでいい。愛姫もまだ十二のガキだって言うしな」
戦国の世において、女は所詮道具
政宗さまはまだお若い
そのことを体現的に理解するまでは俺が指導して差し上げなければなるまい
2009.8.7.
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