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伊達家武芸会





まったく、雪様ったらまた無茶を

いくら貴蝶が変装が得意だからと言って、絶対にバレない訳ではないんですからね!



「雪?どうしたhoney?まだ怒ってんのか?」

「え?あ、いえ政宗殿。怒ってなどおりませぬ」



ああー、ほらっ、やばい、もうバレそうじゃないですか!


雪に変装した貴蝶は政宗に顔を覗き込まれ、焦ったように言い返した

この場を凌げなければ雪は早々に連れ戻されてしまう



「き、今日は政宗殿は参加されないのですか?」

「俺が出たら優勝は決まりだぜ?monotonousだろ」


「モ、ノ?」

「つまんねえってことだ」



はじめろ、その言葉と共に二人が前に進み出る

どうやら彼らが最初の試合のようだが、雪はどこだろうと貴蝶は気が気でなかった

試合は進む毎に熱くなり、否応無く(政宗風に言うならば)tensionが上がっていく



「次の者、前へ」

「はっ」

「おう」



あ、雪様

貴蝶は思わず身を乗り出した

雪はバレないように顔を布で覆い、いつもは一つに結んでいる髪を下ろしていた

菊池正則に借りた青い羽織に比較的軽い防具を付けている

獲物は持ってきたものを使う訳にはいかなかったので、貴蝶が長刀を用意した



「見ねぇ顔だな」

「そうなんですか?」



若干訝しげではあるが、政宗があれが雪だと気づいた様子はない

貴蝶がホッと胸をなで下ろし、雪に目を戻した次の瞬間には試合を決める一撃を雪が繰り出した後だった

さすが雪様、って‥‥やりすぎですっ!



「‥‥小十郎、あれは誰だ」

「あれだけ腕が立てば知らぬはずはないのですが、存じません」



ゴクリ、貴蝶は緊張に息を飲む

バレては困るが試合は見て貰わねば更に困る

力を認めて戴くこと、それが雪様の望みなのだ


幸い調べるまでには至らず、勝ち残ればどこの誰か分かるという話しになった

そして政宗殿の言うtournament制の武芸会は進み、四人にまで絞られた



「great.よく勝ち残ったな。てめえ等には勝とうが負けようがbonusを付けてやる」

「では、名を名乗れ」



さあ雪様、ここまで勝ち残れば十分

馬での遠乗りも剣術の稽古もきっとお許し戴けますよ!

だから早く名乗って下さいぃっ



「田沼隼人」

「伊藤竜胆」

「小笠原大道」

「渡辺、幸嗣」



うわ、ちょっ、それ渡辺沖嗣様(元腹心)の名前に幸荻様(弟)の名前くっつけただけじゃないですか!

貴蝶は開いた口がふさがらず、ただただ渡辺幸嗣と名乗った雪を見ていた



「渡辺幸嗣、聞いたことのねえ名だな」

「最近こちらに仕官致しました。手っ取り早く昇進するならこの武芸会に出ろと言われたもので」


「そうか」



もっともらしい言い方に貴蝶は卒倒しそうだった

だが本当に、これ以上はあの二人が雪の参加をどう取るか分からない

やめて下さい、その意を込めて雪を見るが首を横に振られた

にっこりと笑うあの顔は見たことがある


あれは

楽しんでいる時の雪様の顔だ




2009.6.26.


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あきゅろす。
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