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竜の許し



許して下された!

雪は喜び勇んで馬屋へ走っていた


綺麗な着物は脱ぎ、持参していた汚れてもいい袴などを着込んでいる



「夜刀、来られなくてごめんなさい!政宗殿からやっとお許しを戴きました!」



久しぶりの愛馬は多少機嫌を損ねていたものの、世話を始めると上機嫌になった

まだ遠乗りのお許しは戴いていないが、その内付き合って下さると申されていた

楽しみだ


楽しみ?



「あ、あの〜‥‥まさか、貴女様は」

「!、勝手に入って申し訳ありません。政宗殿に許可は戴いていますので」



馬屋の管理者であろう、そう言えば挨拶もせずに入ってしまったと雪は慌てて言い募った


「いえ、そうじゃないんです。政宗様が奥方をお召しになったと家臣の間では有名で」

「有名?ですか?」



一部の家臣達には挨拶をしたが、伊達家ともなれば全員というのは無理だ

雪は自分が政宗の奥方なのかと聞かれているのを察した



「この度政宗殿に輿入れすることになりました、三沼領主・安積幸嗣が姉、雪にございます」

「やはりそうで御座いましたか!私はここを任せて戴いております菊池正則と申します」



雪様の馬もお世話させて戴きますので以後お見知り置きを、と菊池正則は挨拶を返してくれた

それからは馬屋に来るたび菊池が相手をしてくれた



「そう言えば雪様、近々このお城で武芸会が開かれるのをご存知ですか?」

「ああ、政宗殿に私も出たいと言ったら駄目だと言われてしまいました」



それを聞いた菊池は笑い出す



「それは、政宗様らしいですな」

「どういう意味でしょう?」


「怪我でもしないかと心配なさっておいでなのですよ。証拠に未だ刀を握らせてもらっていないでしょう?」



そう言えば、と雪は思う

側室ごときにそんな気を遣わせてしまい、悪いことをした


だがいずれ正室を迎えればその護りも必要なはず

同じ女である私が一番お側近くでお守りできれば、戦で政宗殿の心配も減るだろう


そう考えた雪は、伊達家の家臣達に顔を知ってもらうのと、お守りできる力を持っているのとを示すために武芸会に出ると決めた

変わり身は貴蝶に頼めばよい



「うん、私もやはり参加しましょう」

「?ですが政宗様は」


「菊池殿。内緒で頼みます」



にっこりと悪戯っぽい笑みを浮かべた雪に、菊池は嫌な予感を覚えた

やる気満々なところ申し訳ないが、ここは伊達家家臣として止めなければ!



「駄目です!って、あぁっ」

「貴蝶に相談してきます!ではまた!」



時すでに遅く、雪は馬屋を出ていってしまった

これは一波乱起きそうだ

菊池は夜刀と目を見合わせたのだった




2009.6.23.

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