花と華
桜はふと足を止めた
やはり馬鹿な事をしたと、心の中でそっと溜め息を吐いた
自分のつまらないプライドが嘘をつかせ、嘘を真実にしようとしてどうやら失敗したようだ
政宗が雪に口吸いするのを廊下の端から目撃して、父上には迷惑を掛けると自嘲する
馬鹿だ
自分の方が美しいなんて
自分の方が政宗様をお慕いしているなんて
雪の偽りのないであろう言葉に、その眼差しに
浅はかな自分が愚かに見えた
「桜」
「‥‥‥失敗しちゃった」
呼ばれて振り返ると、菊が居た
冗談めかして笑った桜の手を取って、菊は城の裏手にある庭まで連れて行く
「はい」
その庭の端の死角で、菊は面倒くさそうに桜に向かって両手を広げた
「菊って面倒見いい」
桜はそう言って菊の腕の中で泣いた
2012.11.18
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