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双竜邂逅





伊達政宗殿とは、戦場で直接見(マミ)えたことはなかった

いつも必ず父の居る陣を見抜いていた


あの時も





「Yeah!」



目の前に青い男が馬を止める

片目の、竜



「Hey.アンタが安積雪か?」

「はい」



答えれば品定めでもするかのように見つめられる

ふと、隣の男に視線が止まった


すでに顔を覆う布は外しているものの、脇に飛んだ刀や周りの様子で襲ったのだと分かる

だが雪は政宗が何か言う前にその刀を拾った



「伊達殿が迎えに来て下さったようなので、見送りは此処まで結構です叔父様」

「あ、ああ」



頭を下げさせて、去っていくのをそのまま見送ると雪は政宗に振り返った

政宗も黙っていた



「安積、雪にございます。わざわざのお迎え有り難く存じます伊達殿」

「‥‥Ha!思ったより肝が据わってんな?まあ今のは目を瞑ってやるぜ。come on」



差し出された手に戸惑う

雪が逡巡すると、政宗がその手を無理やり掴んで自分の馬の上に引き上げた



「!」

「Welcome.俺の事は政宗と呼びな」



馬の上で横抱きにされて慌てて降りようとするが、すぐに前に座り直させられる

抗議の為に振り向くと思ったより顔が近くて前を向く

そうすれば後ろで政宗が笑ったのが分かった


笑われた

恥ずかしさに顔に熱が上がる

それを誤魔化すように雪は愛馬の名を呼んだ



「夜刀(ヤト)!」



呼べば近くの茂みから黒い馬が駆け寄ってくる



「伊達ど‥、政宗殿。自分の馬に移ります」

「遠慮するな。honey、だがいい馬だ。very good」



は、はにー?

べりーぐー?

政宗は夜刀の首をなでながらそんな言葉を使う

南蛮語に詳しいとは聞いていたが、まったく分からない

頭に疑問符を浮かべている内に馬が走りだした



「Yeah!俺に嫁いだからには天下を見せてやるぜ!」





2009.6.14.



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あきゅろす。
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