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二律背反と知る





いったい、何を言っておられるのか、政宗殿は

雪は正室という言葉を喜べなかった


雪は北方最後の抵抗勢力、安積家の長女

長きに渡る覇権争いに負け、伊達に下った安積家の差し出した貢ぎ物に過ぎないのだ

それに比べて愛姫は敵に囲まれた南の田沼家の娘であり、室に迎えればそこに南を切り開く楔を打つ形になる

政略的にも正室にするならば愛姫に決まっているのだ


雪はたまらず政宗に言い募った



「お戯れを申されますな。この雪、政宗殿の正室になろうなどと望んではおりません」

「Why?俺を愛してんだろ?」



きちんと正座して膝の上にあった手を掴まれて引き寄せられる

政宗の胸に飛び込む形になって、雪は顔を熱くした



「俺はアンタを正室にしたい。俺の子を産んでくれんだろ?」

「!!‥‥‥私は、質に御座います。伊達に嫁いだのはただ政宗殿のご恩情。これ無くば私は戦場を駆けるただの一武将に過ぎなかったでしょう」


「だがアンタは此処に居る。俺の寵愛を受けてな」



ふっと耳元に息を吹きかけるように言われ、雪の体が強張る

そんな雪の反応を楽しみながらも、そろそろ行かないとまた小十郎が迎えに来そうだ

政宗は雪を離して布団から出る



「側室は、伊達の当主として迎えなきゃなんねぇ」

「‥‥‥はい」


「だがな、雪」

「!」



一度口づけて政宗は笑う



「俺の子を産むのはアンタだけだ。You see?」

「、政宗殿」



嬉しい

正室にと望まれて、子を産むのは自分だけだと言われて


だが雪はそれがどうしても許せなかった


雪を正室にすることで起き得る影響、他の側室への扱い

それを考えればすべき事ではないとすぐに分かるのに

分かっていても、どうしても、雪の心は狂喜した


政宗の出ていった部屋で、雪は困ったように胸を押さえる



「‥‥‥‥」



きっと、きっと片倉殿がお諫めするだろう

どう考えても愛様を正室にお迎えするのが伊達家の為


雪自身もそう思い、そうすべきだと思う

だが同時に、政宗の子を産むのは自分だけでありたいとも思うのも事実だった



「‥‥愚かしい」



ああ、それでも

二律背反であったとしても、私は政宗殿に従うだけなのだ




2010.3.4.

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あきゅろす。
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