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嵐の前の静けさ






ふっ、と

雪は眠りから一気に覚醒した


体が重い

まるで長の野戦の後のように、体中に纏わりつく疲労感


その理由を思い出し、雪はひとり頬を染めた



「‥‥‥政宗殿」



返事はない

まだ眠っているようで、雪は安心したように瞳を閉じる

暖かい、温かい、あたたかい

人肌とはこんなにも心地好いものだったろうか?


触れ合った素肌がまるで真綿に包まれたようだ

暖かく、柔らかく、包み込んで、包み隠して



「Good morning.雪」

「おはよう、御座います」



突然朝の挨拶であろう南蛮語と共に唇に落ちた口づけに、雪はとびきり顔を熱くした

どうしても慣れない

と言っても、まだ数える程度しかしたことはないのだが



「もう少し寝てろよ。疲れた顔じゃ貴蝶が心配する」

「貴蝶が?なにか申しましたか?」



その質問には政宗はバツが悪そうに笑う

貴蝶には日を置いてくれと言われたが、どうにも我慢が利かなかったのだ

その貴蝶の怒った顔を想像して政宗はまた笑う



「Don't worry.貴蝶は雪が心配でたまらねえのさ。特に一昨日は初夜だったからな」

「!!、貴蝶は、多少過保護なのです。子供の頃から」



布団の中で微睡みながら、政宗は雪の髪を梳く

政宗の言葉も相俟って、雪は恥じらいながらそれを受け入れた



「Ah.まるで姑か小姑だぜ」

「ふふっ、それを聞いたら貴蝶はそうだと答えるでしょう。望むところだと」



障子の外に気配を感じて、雪は起き上がった

政宗は分かっていながら起きたくないのか肘を立てて頭を乗せる



「Good morning.小十郎」

「おはよう御座います。もうすぐ朝餉の用意ができます。起きられませ」

「All right.雪と行く」

「御意に」



小十郎の去っていく足音を聞きながら、政宗は雪を見る

少し開いた襟元から覗く紅い痕に、ニヤリと笑った



「?、何か?」

「Ah.アンタを正室にしたい」


「‥‥‥?あの、愛姫様を娶られるとお聞きしていましたが」

「雪が正室だ。okay?」



正室?

側室ではなく、正室?



言われた言葉を繰り返して、雪はただ呆然とした





2010.1.30.

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あきゅろす。
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