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三日月にkiss





政宗の隣りには雪が居た

白い戦装束を身につけた姿は、戦場において浮き上がったように美しい


青き月と白き月

双竜にして双月



「見事な布陣です、政宗殿」

「Thanks.」



見事だ、と言いつつ雪はそわそわとしていた

久々の戦であり、久々に握った愛刀に、雪は自分で浮き足立っているのが分かった

別に戦好きである訳ではない


役に立つのだと誓った心が焦ってもいるのだと、雪は浅く呼吸を繰り返しながら思った


政宗の執った布陣を、今は小十郎が動かしている



「shit!俺の出番はなさそうだな」

「‥‥‥政宗殿、片倉殿の狙いは何なのでしょうか?」


「Huh.聞いちゃいねえが、どうやら俺の出番は持ってく気らしいな」



小十郎の奴、俺の出番どころか雪の出番も持ってく気か?

一分の隙もない小十郎の采配に感心しつつも、政宗は眉間に皺を刻む

雪の顔見せだけが目的じゃねえんだぞ?



『雪様、後ろから来ます』

「!」



貴蝶の報告に雪は振り返り、長刀を抜き去った

合わせて政宗も振り返る

途端に陣幕の裏から現れた数人の忍



「政宗殿、お下がりください!」

「お手並み拝見だな」



雪と貴蝶が敵に向かうのを、政宗は腕を組んで送り出した

貴蝶が居れば、間違っても雪が傷付くことはない


その通り、雪が傷を負うことはなかったが貴蝶が手を出すこともなかった

貴蝶は政宗と雪の間に立ち、まるで政宗を守っているようだ



「Hey、貴蝶!なんで雪を守らねえ!?」

「‥‥‥雪様の御命令です」



ただ一言告げて、視線は雪に戻っていく

命令だと?


雪を見れば五人居た忍の内、三人を斬り倒したところだった

残り二人もすぐに倒すと、雪は政宗に向かって小走りになる



「政宗殿、お怪我は御座いませんか?」

「All right.」



すでに貴蝶は近くに居ない

騒ぎを聞きつけた重臣達も、倒された五人の忍を調べている



「どうなされたのですか?」

「いや、come on」



雪を呼び寄せれば素直に前に立ち、見上げてくる

身長差は三寸(約10p)程度で、女にしては背が高い


政宗は不意に雪にkissをした

驚いた雪は思わず一歩後退りする



「Hey,雪。kissからは逃げるんじゃねえ」



哀しくなる

そう耳元で囁けば、雪は簡単に身を任せた

どの位時間が経っていたのか、眼下で繰り広げられていた戦は終わっていた

戻って来た小十郎が忍の亡骸を確認している



「ん、‥‥ふ、ぁ、‥政宗、殿」

「なんだ」

「皆様方に見られております‥‥、恥ずかしゅう御座います」



暫くはなすがままになっていた雪も、すぐには解放されないと悟ったのか政宗の胸を押した

政宗も気付けば小十郎が近くに来ていて、多少バツが悪そうに雪を離す



「やりすぎですな、政宗様」

「sorry.それで、片づいたのか?」


「はい。こちらも旨くいったようですな」



チラと視線を向けた先には雪を見る重臣の姿

最後のは予定外にやりすぎたが、第一段階は成功だ


政宗は上機嫌に笑うと、後始末は小十郎に任せて雪と城に戻ったのだった




2009.11.14.


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