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農 事





「起きろ」



低くかすれた声に呼ばれ、瞳を開ける

誰だ、侵入者?



「起きろ、ユキ」

「ああ、小十郎か‥‥」



そうだった

昨日私は青葉城に連れて来られたんだった


これは小十郎の声だ



「‥‥‥ユキ」

「ふふっ、何度も呼ぶな。誘っているのか?」



ふざけて言えば、ごつりと拳が額に落ちた

痛くはない

小十郎も分かっていて返したのだ



「早いな。何かあるのか?」

「畑を見に行く。来るか?」



生憎と朝は低血圧なために外出は遠慮したかったが、小姓として雇われたようなものなのだ(報酬は小十郎)

行かない訳にはいかない



「行く。お前の一日の動きを覚えないとな」





「そうか」



身支度を整えて籠を持つと、小十郎が手招きした

畑は小十郎の屋敷近くにあって、朝に野菜を採ってから城に届けるのだそうな

というか、野菜を育ててたのか 小十郎



「これはまた見事な」

「そこの大根を二・三本抜いてくれ」



言われて大根を抜こうと葉の根元を掴む

力を込めれば案外簡単に抜くことが出来た

結局ユキは面白くて四本抜いた



「?‥小十郎!これは何だ?」

「どれだ?ああ、ちょっと前に苗をもらってな。南蛮の野菜だ」



変な形‥‥

抜いてもいいかと聞くとまだ駄目だと言われて諦めた


ネギやら大根やら、葉物や干してあった豆類も持って二人は登城する

本当にいつもの事らしく、炊事場の土間に持ち込んでも女中達は素知らぬ顔だった



「ふふっ」

「何だ?」


「此処は思ったよりも面白いな」



言えば小十郎は変な顔をした

わからなくてもいいよと、ユキは笑った

野菜を置いて、一度井戸へ行くと言う小十郎に付いて行くと、そこにはちょうど政宗が居た

小十郎はあからさまにしまったという顔をする



「ふふっ」

「よさねえか‥‥」


「Good morning.小十郎、やけに楽しそうだな」



仕方がないといった感じの小十郎の背に隠れながら、ユキはまた笑った




2009.12.6.


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あきゅろす。
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