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拾 物





山奥で人間を拾った

否、人間ではないのかも知れない


擦り切れた着物に伸び放題の髪をした男

否、そもそも修羅と呼ばれるコイツは男や女の性別を持つのだろうか?


同じ馬に乗せて腕に抱いてみて気づいたが、女のように細く柔らかい体をしていた

荷車に乗せても良かったのだが、自分が目を離した隙に臣下が襲われでもしたら一大事と思い、今に至る



「政宗様にどう言ったものか‥‥」

「‥‥‥政宗様とは、竜のことか?お前の主の」



ふと見下ろせば、瞳を閉じたままの修羅

まだ痺れるのか胸に体を寄せてくる



「‥‥おい」

「貸しておけ。減るものじゃないだろう?」



だが部下が変な目で見てる

そう言いたかった小十郎だが、そうさせたのは自分だ

仕方なく胸を貸す



「何処に行く?」

「青葉城に連れて行く。政宗様が先に戻られている」



ああ、ではあれは後始末というやつだったのか

ぼんやりと思いながら男の、小十郎の着物をぎゅっと握った


人に触れるのは本当に久しぶりだった

いけないな、そう思いながらも箍(タガ)が外れたようにそれを求めてしまっていた



「それで、私をどうする?」

「政宗様にお任せする」


それを聞いたユキはそうかとだけ言って、それきり喋らなくなった











「Hey!小十郎、人間を拾ったらしいじゃねえか?何者だ?」

「は、残党を追って山に入ったところ、その残党を始末したところを見つけました」



登城早々に報告に上がった小十郎

始末した、その言葉に面白そうに笑う政宗


政宗様の悪い癖だ

強い者とはただ戦いたがる



「それで、強いのか?」

「怪我を負わせました為連れ帰りましたが、多少は使える様子」


「Huh.小十郎よりは弱いか。ならそいつはお前に任せる。好きにしな」

「御意に」



上手い具合に主の興味が逸れてくれた

あんな危険なものを放置もしておけないが、政宗に近づける訳にもいかない




「おい、あいつはどうした?」

「ユキ様なら湯浴みに参られましたが?」


「ユキ?」



名はユキというのか

今更ながら名前も聞いておらず、名乗ってもいなかったことに気づく



「あの、かなり汚れておいででしたので私がお勧め致しました」

「いや、それはいい」



言い残して小十郎は湯殿へ向かった

政宗にユキの処遇を任されたのはいいが、どうするべきか迷っていた

どういう仕組みか、死なないアイツは放っておけば敵方になるかも知れない

それでは厄介だが、此処に、政宗の近くに置くにも不安はあった


深く思案しながら、小十郎は湯殿の戸を開けたのだった




2009.11.10.


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あきゅろす。
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