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命在ればこそfunny





「で?いつの話しだぁ?」



突然のスクアーロの質問に、キハネはキョトンとした

あれから結局キハネを引き取って部屋に戻ったスクアーロ

どうやら最愛の君やら命の恩人発言の真相を知りたいらしい



「いつ俺と会ったってんだぁ?」

「ああ、十年程前ですね」



十年!

そんな前のこと覚えちゃいねぇ

年齢的にも十やそこらだ、あの頃も剣のことしか頭になかった

人助けなんざしてる筈ないんだが‥‥



「まあ覚えてらっしゃらなくても良いのです。ただ私が誓いを立てたきっかけというだけなのですから」

「なんなんだぁ‥‥」



納得いかない様子のスクアーロに微笑んで、キハネはそういえばと膝をつく



「名乗り忘れていました。私の名はキハネ・アウローラ、北の双剣ヴィオラとヴァイオラを継ぐ者」

「北の双剣かぁ。聞いたことあるぜぇ」



黒い革張りのソファーにドカリと座ると、先程とは打って変わって興味津々でこちらに視線を向けてくる


良かった

嫌われなかったみたいだ



「北の山奥で眠っているときいたが、どういうことだぁ?」



守るべき国と王を失い、生き残った守護剣の一族は今度は双剣を守り受け継いだ‥‥

らしい、というのが現在の通説だ



「実際はどうなんだぁ?テメーがその守護剣の一族なのかぁ?」

「守護剣の一族は、すでに滅んでいます。私たちはそれを継いだにすぎないのです」



何処か愁いた様子のキハネにドキリとする

綺麗な女なのだ、キハネは

今は旅装なのかブラウンのコートに身を包み、髪を緩く束ねている



「その髪、地毛かぁ?」

「はい」



白く、いや、白銀に輝く髪

サファイアのように透明に青く輝く、海を湛えたかのような瞳


一度見たら忘れそうにないのだが、思わず伸ばした手にキハネの髪が触れた



「!、悪りぃっ」

「お好きに。この身は髪の毛一本まで貴方のもの」


「そんなこと言っていいのかぁ?俺は男だぞぉ」



スクアーロはニヤリと笑うが、キハネは微笑むだけだった



「言葉に嘘は有りません。貴方に救われたあの日、誓いましたから」

「なんか調子狂うぜぇ」



ここまで信頼、というか忠誠を向けられると手を出す気も失せた

まったく呆れる

命を救われたとして、わざわざ恩を返しに来るなんざ頭おかしいぜ(俺だったら忘れる)

それをそのまんま言ってやれば、やはり笑顔が返ってくる



「命あっての物種と言いますから」



その言葉からは違和感を感じて、誰かの言葉でも借りたようだった


だが、

命あっての物種か


その意見には賛成だと、スクアーロはニヤリと笑った




2010.12.12.

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