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プロローグ









―パンッ




突如聞こえた銃声に、ラビは振り向き様にその室内を目指した

中に居るのはラビのボスだった

同い年の男で日本人、夕陽にも似たオレンジ色の瞳がとても綺麗で印象的な男だった

抑(ソモソモ)死にかけた人間を拾って養う程寛容で、何故マフィアのボスに収まったのか不思議なくらい本当に本当に優しい男だった


そしてそれは突然訪れた

攻撃を受けたボンゴレファミリーは一時的に壊滅的な打撃を受け、仲間の為に、ボスは相手のボスと話し合いの席につくことになったのだ


たった1人でだ

たった1人で、ボスはあの部屋の中に居るのだ


焦燥がラビの心臓を跳ねさせ、絶対に来ちゃ駄目だよ、と言ったボスの言葉も忘れる

来ちゃ駄目?

丸腰なのに!




「待て!」



引き止める仲間の声も、行く手を塞ぐ敵の声も、




「邪魔だ」




邪魔なんだ


お互いにドアの外は少人数待機で、だがここは敵のテリトリー

それでも後から何人来ようが知ったことじゃない


勢いを殺さず間合いを詰めれば、怯んだ所を容易に突破出来た


早く早く早く行かなくちゃ

早くボスの所へ




「ボス!」




バン、と乱暴に開け放ったドアがギシギシと軋んでしばらく揺れていた

一瞬部屋の中にボス見つけられず、ふらふらと目を泳がせる




「ボス?」




応えはなかった

応えはなかった

応えはなかった


そして捉えた視線の先には赤い赤い赤い、血

息を飲もうとしたがうまく飲み込めず、寧ろ全部吐き出しそうになりながらラビは綱吉の元へ向かった



沢田綱吉、それがラビのボスの名前だった




「ボス?」



触れた手はまだ暖かった



「ボス」



こぼれた血さえ暖かった



「‥‥‥‥」




ラビは未だ、悠然と椅子に座る白い男を見やった

髪が白い、それだけでなく石膏で造った彫像のような印象の男


ミルフィオーレのボス、白蘭

この男こそボンゴレファミリーを強襲した張本人だった



「お前、が」



お前がボスを殺したのか?

わかりきった事実を確かめずにいられないのは、信じたくないから

だが次の瞬間には白蘭に襲い掛かってしまって、ミルフィオーレと戦闘が始まった



ねぇ

ボスの側に居れば良かった

離れなければ良かった




「‥殺す」




殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す

ボスが聞いたらきっと怒る言葉

だけど何も考えられなった


ラビの周りはいつの間にか全て敵に囲まれおり、百蘭は離れてラビを見ていた


ラビの戦闘スタイルは基本的に格闘だった

竜拳道という日本の古武術にアメリカ軍のナイフクラスの技を組み込んでいた

言えば今まで戦ってきた敵の技術も入っているだろうが、根本はその二つだった


銃の弾さえ躱して自滅を誘えばやがて銃は使わなくなる

どこから出てくるのか後から後から湧いて出てきた




『ラビ』




敵の血が瞳の中に入り視界が赤く染まると、一瞬、ボスの声が聞こえた気がした

それを合図にしたようにラビは動きを止めた



「‥‥‥‥ボス、」




ガクリと膝をついた

瞳から涙が零れ落ちる


その瞬間を逃さず、ラビは取り押さえられた



「押さえろ!」



床に叩きつけられ、腕をひねり上げられるとラビは我に帰った

愚かしかった


愚かしくて、泣きたくて、ボスに会いたくて、触れたくて、側で守っていけたらそれで幸せだったのに

それをコイツが奪った




「待って。へぇ‥‥‥うん、君の名前は?」



興味深そうに白蘭がラビの顔を覗き込んだ

名前を聞かれて唾を吐く


それさえ面白そうに笑うこの男がラビは初めて恐いと思った

完全にラビを問題になどしていないのだ



「いいよ、ホントは知ってるからさ。ラヴィニア・サントス、でしょ?」

「、なんで」



何故、知っているのかラビは分からなかった

それに気づいたように白蘭は笑ってラビの頭を撫でた



「知ってるよ?ボンゴレの片腕だからね」



右が獄寺隼人、左がラヴィニア・サントス

現体制になってからまことしやかに囁かれるボンゴレ幹部の噂

守護者以外でボンゴレのカーポの隣りに立つラビの噂はマフィアの間で未だ囁かれ続けていた



「当たりでしょ?潰すファミリーの情報だもんね」

「‥‥っ、‥貴様っ」



最初からそのつもりで!

話し合いなんてする気がなかったんだ



「どうして!なんで潰し合いをするっ!?なんで殺したんだ!綱吉をっ!!!!」

「クスクス、」



貴方が戻るなら、今を引き換えにしてもすぐに迎えに行くのに

笑うこの男が許せなかった



「笑うな!お前は綱吉を知らない!!」

「‥‥そう?でも、彼はもう居ない」



視界を塞ぐように広げられた手のひら

ラビの意識は暗転した





ボス

ボス


綱吉



―――


―――?




誰、だろう

誰を探してた?


呼んでた?



―――?




「ラビ、起きた?」

「‥‥‥‥‥ボス?」



ああ、そうだ

私はボスを呼んでたんだ



「ねぇ、マシマロ食べる?」





2009.4.16



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あきゅろす。
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