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伊達政宗と身代わり姫の陥落
※戦国バサラ



冗談じゃない、まったく

突然知らない場所に来てしまったと思ったら、和服の変なオジサン達に捕まった

頭を下げて頼み事を聞いて欲しいと言うから同情して付いて行けば、時は戦国か平安かと見紛うような姫衣装を着せられた


しまった、駄目だ

着物が重くて逃げられないし、期待の目もウザい



「どうか姫様をお救い下さいませ、他に想い人が居られるのです」

「だからって他人を身替わりなんてまかり通るかっ!!」



信じられん

馬鹿じゃなかろうか?



「だいたい一国の姫ともあろう人間がその責任と義務から逃げてどうする?子供かっ!」

「姫様は今年で齢12になられますれば」


「っ‥‥、っ」



子供だ!

ユキはがっくりとうなだれた

そんな歳で嫁入りなんざ酷なことだ

それどころか、郷を離れるのも寂しいことだろう

いやいや、だからと言って私に押し付けられちゃ困る

第一此処がどこか知らないし、なんかみんな着物だし、車もなけりゃビルもないし

はっきり言って迷子なのだ(色んな意味で)

他人の面倒なんて見ていられない



「見たところ、其方も何やらお困りの様子。泊まる場所はお在りかな?我らの願いをお聞き届けくだされば、今日だけでなくこれからずっと衣食住の心配は要りませぬぞ?」

「‥‥‥‥」



あ、足下見やがってェー!

という心の叫びも虚しく、行く当てのないユキは身代わりの話しを受けたのだった

それからあれよあれよと事は進み、元の世界に帰る当ても無いまま輿入れの日を迎える(どう考えても時代か世界が違うんだ!)

ついでに言うともう相手の城に着いて挨拶も済ませ風呂に入れられている!

もう怖くて相手の顔も見れなかった

だって出迎えてくれた男の人がヤの字だったんだもの!


そしてあれよあれよとまた事は進み、なんと初夜

身代わりで嫁に行くなんて絶対バレると思っていたのに、誰も疑問に思うどころか一度も顔を上げようとしない女をキチンと姫として恭しく扱っている

みんな阿呆だ!



「Hey.そろそろ顔を上げな」

「‥‥‥っ」



あわよくば、あわよくば元の世界に帰れないかと思っていた

此処まで来て往生際の悪いことこの上ないが、まあだからと言って身代わりだとバラす訳にもいかない

みんな好い人達だった

本物の姫は名前を変えて愛する人のもとに行く



「震えてるのか」

「ぁっ‥」



ユキはこれでもかと言うほど身を引いた

触れた手から逃れ、思わず男の顔を見る


ああ何だ、普通の人だ、ヤの字じゃない



「あの、スイマセン」

「Huh.なかなか俺好みだな、遠目からじゃ不安だったが」



ん?え?

失礼な事をして、怒られなかったのはいいが何と言ったこの男



「遠目から?」

「Ah.アンタが本物の姫の身代わりだって事も知ってるぜ?」


「!!、ま、さか」



そんな、何故?

知っていたなら何故この数日、捕まえようともしなかった?

何故知っていて婚儀を済ませ、この初夜を迎えた?

そもそもバレていたなら彼方の家は偽の姫を嫁がせたと、咎めを受けるのではないか



「Ah.心配は要らねェよ、俺はアンタを奥に迎える」

「そんな、何故?」


「Why?‥‥そうだな、何処の馬の骨ともしれねェアンタが、見も知らない幼い姫さんの為に自分の人生投げ出そうって心意気に、心打たれたんだよ」



ち、違う、自分の為だ

全然知らない場所に落とされて路頭に迷ってたし、嫁に行く前に元の世界に帰れればいいなぁとか、そんな風に思ってたんだ

そう素直に言えばこの男、ユキを買い被っているのかこう返す



「ならなんで逃げなかった?アンタが本当に自分の為に身代わりになったってんなら、自分に利の無くなった今も此処に居る必要はないだろう」

「それは、だって、行く場所が」


「何でそんなに自分を卑下したいのかは分からねェがな、逃げ出さなかった時点でアンタは情にほだされ易いって知れてるんだよ」



情にほだされ易い?誰が?私が?



「‥‥‥今日はゆっくり休め。無理強いはしない」

「!」



そう言って頭を撫でられて顔に熱が上がる

そのまま横になってしまった男に困惑する

困惑する自分に困惑する


思えばこれが、この男の側を離れることが出来なくなった理由だったのかも知れない




2014.7.8.

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あきゅろす。
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