月が綺麗ですね、若
※ワンピース
どれほどの想いを汲んでも、若にはもう届かないだろうか
沢山の事を語ってくれたあの瞳にも、もう会えないのだろうか
ドレスローザに向かう交易船に身を隠しながら、負った傷の応急処置をする
(着くまでもつだろうか)
傷は深かった
一瞬の油断が、永遠の別れを生むと知っていた筈だというのに
交わした約束だけは果たしたいと、それはただの自己満足に過ぎないのだと知っていたけれど、国へ向かう足をとうとう止める事は出来なかった
深夜の内に港に着いた船
ズルリと身体を引きずり出して城までの道をゆく
裏口からプールサイドに回ると、珍しく不機嫌そうに口角を下げたドフラミンゴが居た
「若」
ドフラミンゴはいつものようには笑わなかったし、ユキもいつものようには笑えなかった
城の中は僅かに数名の執事やメイドが起きている程度で、この状況に気付く者は居ない
ユキはただ、此処に来るまでに何度も繰り返した思考を更に繰り返す
どれほどの想いを汲んでも、若にはもう届かないだろうか
沢山の事を語ってくれたあの瞳にも、もう会えないのだろうか
あの日の約束さえも覚えていないのか、それとも、私の話したことも覚えていないのだろうか
ユキはドフラミンゴを見上げ、泣くのをこらえて笑顔を作った
「月が綺麗ですね、若」
覚えていますか?
私の故郷の言葉でこう訳した、あの言葉を
覚えていますか?
2014.5.20.
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