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神崎ひとみは他人を巻き込んで世界を渡る
※天空のエスカフローネ


もうずっと、彼には会ってない

大学卒業を控えたこの年、何処か遠くを見るように言ったのは、神崎ひとみだ

ヒトミというのは、陸上を大学になってまで続けている変わり者で、否、良くいえば初志幹太?

とにかく、結構な頑固者であることは大学4年間を共に過ごした私が保証する

しかしそのヒトミが、今まで決して色恋沙汰には足を踏み入れようとはしなかったあのヒトミが、なんのつもりか急に中学の時の恋愛云々などを持ち出してきたのだ

どうしてなのだろうか、いい予感はしない


それからヒトミは最近よく見るようになった夢の話をして、懐かしそうに目を細めた

それはなんというか夢に有りがちな荒唐無稽な内容だったりするのだが、ヒトミがあんまり幸せそうな顔をするものだから、ユキはついに一度もツッコミを入れる事なく聞き終えてしまった


「行こっか」


そう言って立ち上がるのにも抵抗せず、ユキは導かれるようにヒトミの後を追う

そして自分の間違いに気付くのだ


突然舞い落ちてきたのは白い羽根だった

それに動きを止めたヒトミ、私はそれを不意に拾い上げる

そして次の瞬間には溢れる光が私たちを覆い尽くし、空へと吸い上げたのだ

無重力感に喘ぐ私とは正反対に、ヒトミは目に涙を溜めてこれを感受する


これは、だめだ、絶対巻き込まれている

異世界という荒唐無稽な夢の話しが頭の中を駆け巡って、ユキはヒトミにすがり付いた


「ごめんね、ユキ」

「な、にが」


ヒトミがそう言った時には足下に草が生い茂っていて、思わず辺りを見回した

今の今まで居たはずな街並みは消え去り、見渡す限りの草原に山に森に、遠くに見えるのは城なのか

昼でもはっきりと浮かぶ灰色の月が、見知らぬ土地であると言外にユキに告げる


「ここ、どこ?」

「鉄の月の下、赤き大地"ガイア"」


私の親友、神崎ひとみは他人を巻き込んで世界を渡る



2016.9.22

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あきゅろす。
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