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トラファルガー・ローが自覚する
※ワンピース
※続『トラファルガー・ローに指先が届かない』




暗い海の底で微睡む

眠れないのは、やるべき事が散開しているからなのか

読みかけた本をベッドサイドに落として脱力する

頭の中の靄が晴れない

ドアを叩く音がして、視線だけ上げればそれはペンギンだった



「キャプテン、飯できてますよ」

「‥‥‥あぁ」



朝起きて、飯を食って、進路を確認して、本を読み漁って、ベポの腹を枕に昼寝して

そこから何が無くなっていようが、己さえ揺るぎなければ気にも止めることもない

変わらない毎日はとうとう一週間を過ぎた


しかし誰も触れないその核心は何にも代え難い変化であり、確かにユキは此処に居ないのだと誰もが理解していた


そう、ユキはまだ戻らない




「戻ろうよ、キャプテン」

「ベポ」



咎めるような声音で言うベポに、ローが食事から顔を上げる

息を飲むまわりは気にせずに、ベポだけを見ていた



「戻ってどうする」

「えっと、ユキを迎えに行きたいなぁ、なんて」



ベポの押しの弱さはお墨付きである

周りからも溜め息が零れるなか、ローは意外にも悪くない考えだと思い至っていた

思い至って首を傾げた


何故、悪くない?


悪くないどころか、さっさと船を戻そうと考える自分が居る

何年もかけて進んだ海で、別に今更一週間分の遅れも何も無いとそう思う

これは言い訳か

居ないとすぐに分かる程には一緒に居て、今更ながらにユキが居ないことの意味を知ったのか

何も変わらないと思っていたというのに、ユキが居ない事をひどい違和感として感じていた

ああそうかと、ローは唐突に理解する

言われるまで気付かないとはかなりの重傷だ

俺は



「迎えに行きたい、のか」

「!、うんっ!迎えに行きたい!」



尋ねられたと勘違いしたベポがローの言葉に乗る

ローの気が変わる前にと周りも騒ぎ出して、流石に此処に2年居ただけあると妙に納得した

あっという間に話しは進み、意気揚々と船を旋回させるクルーを見ながら自問する


俺はユキを許せるのか?


しかしそんな問いに意味はない

ユキはこの船のクルーであり仲間なのだ

それは此処に居る仲間達にとって、ユキがドフラミンゴの息の掛かった人間であるという事より重い

それはきっと、ローにとっても


そして船は進路を変える

ユキの元へと




2015.12.10.

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あきゅろす。
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