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政宗様の愛する方なら、私も好きになろう
※戦国BASARA




ただ、自由で居たかった

それを叶えようとしなくとも私には家族は既に居なかったし、運動神経は悪くないようで女だてらに剣で食いつないでいた

放浪に近い、傭兵稼業で全国を転々として辿り着いたのが奥州だった



「ユキ!Hey!こっちだ」



名を呼ばれ、振り返れば隻眼の主が得意気な顔で手招きしていた

ただ自由で居たかった筈なのに、私の心はこの方に捕らわれたまま、もう三年も此処に居た



「こんな所でどうなさったのですか?」

「いいから来いよ、見てみろ」



手招かれた部屋に足を踏み入れると、其処には数々の贈り物が所狭しと並んでいた

その瞬間に悟る

近々、政宗様が姫を娶るという話しは本当だったのだ



「どうだ?綺麗だろう」

「えぇ、こちらの簪の意匠など細やかで美しいです」


ユキがそう言えば、政宗は満足そうに笑う


相手の姫君の事は家臣達には知らされていない

いつ来るのかも、何処の姫君かも、名前すら明かされていない

噂の域を出なかった事柄が真実であったのかと、ユキは少なからず動揺していた



「気に入ったなら良かった」

「えぇ、‥‥きっと姫君も喜ばれます」


「そうか」



そう言ってまた微笑むのを、ユキは眩しい気持ちで見つめた

自分のその気持ちにはずっと前から気付いていたし、此処に三年も居ることがいい証拠だった

自分の望みが、自由でいたいという事から政宗様の側に居たいという事に変わったこともちゃんと分かっている

逃げ出すことも出来るはずだ

政宗様が姫君を愛し愛され、連綿と伊達家を繋いでいく様を見守るのが辛いならば此処を去ればいい


だがそんな選択肢はユキにはない


それを、見守っていきたいと思う

政宗様だけが、私に与えてくれる

ただ生きていく為だけの私の生に、意味を与えてくれた

私は寂しくて、苦しくて、嬉しくて、暖かで、愛おしいのだ


政宗がその腹心である小十郎に執務に呼び戻されていくと、ユキだけがその部屋に残った

否、小十郎だけが後から戻って来て、ユキにこう問うのだ



「奥州を去るか?」

「何故?」


「政宗様が姫君を娶られれば、お前も肩身が狭いだろう」



小十郎のその言葉に、ユキは少し驚いた

この三年の間に小十郎とも悪くない関係を築いては居たが、政宗様第一の彼に心配されるとは思っていなかった

だからという訳ではないが、ユキは正直な自分の気持ちを告げようと決めた



「案ずることはない」



もう一度部屋を見回し、小十郎に視線を戻してはっきりと告げる

嘘偽りのない心で

何者にも恥じる事などない



「政宗様の愛する方なら、私も好きになろう」



だって私は、政宗様の全てを好きだと言いたいのだから




2015.2.10.
(だってあの歌があまりにも美しかったから)

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