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押し倒してみたんだけど








日本に着くとそこは快晴

だが日本特有のジメジメした夏の熱気がまとわりついた



「神秘だぜ〜。なんだよこの蒸し暑さ!」



文句を言いつつ空港を出て、すぐに並盛という街に向かう

骸の潜伏先は分かっているがアイツの能力は侮れない

骸の標的がマフィアなら十代目候補を利用しない手はない、というのがユキの認識だ



―ドンッ


ボンゴレの十代目候補、沢田綱吉の家を目指していると背中に衝撃



「ランボさんと遊んで!」

「ランボ?」



いきなり後ろから抱きつかれてビックリしたが、アニマル柄(牛)なガキじゃ暗殺もなにもない

腰から引き離して地面に下ろす



「で?なにして遊ぶって?」

「俺っち飛行機だもんね!」



屈んで目線を合わせると、勢いづいたようにそう言った

飛行機?ああ、と納得してランボの手を掴む

それから思いっきり振り回した



「ガハハ!ブーンブーン!!」

「ハハッ!」



やってる2人は笑っているが、道路の真ん中で危ないこと極まりない

近所の白い目を気にしないでいると、案の定顔を青ざめさせた少年が止めに入った



「ちょっ、ランボ!?何やってんのーっ!!?」

「ツナも回れーっ!!」



片手を離して少年に手を振って

まずい!と思って回転を止めた

だがユキが考えていた危険よりも何よりも、ランボの頭からバズーカがはみ出てきて仰天する



「は、ぁっ!?」



なんで頭からバズーカ!?遠心力?遠心力なのか!?ていうか頭ん中にバズーカって‥‥

駆け寄ってきた、このランボさんとやらの知り合いであろう少年の顔色が、更に青ざめたのを見た


少年はバズーカに手を伸ばす

ユキはランボを抱き止める






―ドンッ





あぁ、何だこれ?

当たっちゃったよ、少年に


もうもうと立ちこめる煙りを前に、ただユキは呆然とした

何だよこれ?

日本は平和ぼけした国じゃなかったのか???



「げほっ、げほっ、‥‥‥なんだ?」

「!!少年!?生きてるのかっ!?」



泣きじゃくるランボを捨てて、ユキは思わず駆け寄る


だってこんな目の前で死なれたりしたら、寝覚めが悪い

しかも警察なんかに事情聞かれたら身元がしっかりしてないのバレるんだよ!



「!、ユキか?」

「!?‥‥は?なんで名前」



煙りが晴れてきて、ユキは歩みを止めた

明らかに初対面の相手のはずだった

名前なんて教えてない

会話すらしていない



「なんだ、男か。女になれよ」

「!?????」



手首を掴まれ近くの塀に体を押し付けられる

現れたのはさっきの少年なんかじゃない


スーツ姿の男



「?」



なにか違和感を持ったのか、男はユキを凝視する

つーかコイツはなんで、俺の能力知ってるみたいな物言いしてんだっ?



「幼いな、十年後バズーカか。ならまだユキと出会ったばかりの頃かな」

「な、に言って‥‥?」



まったく弛まない手を、ユキはなんとか外そうとする

目の前の男は機嫌がよさそうに笑いながら話していて、まったくもって腹が立つ



「あぁ、ごめん。支配されるのは嫌いだったね」

「あんた誰だ?」



警戒したユキは身構えて男を睨みつける

するとクスクスと本当に面白そうに笑った



「綱吉、沢田綱吉だよ。そっかこの状況‥‥初めて会ったときか」

「沢田?ボンゴレの」



写真は手に入らなかったんだ

顔なんて知らなかった

無意識にボンゴレの名前を出してしまい、慌てて口を塞ぐ

その様子にも面白そうに笑って



「そう。十年後にはちゃんとボスだよ」



こいつは爆弾発言だ

確か何人か候補がいたはずだが



「つまり、アンタは十年後の沢田綱吉で、ボンゴレの十代目に落ち着いてるのか?」

「そうだよ」



十年後バズーカ、思い出した

本当に実在するとは思わなかったが、さっきの牛小僧はボヴィーノ・ファミリーの構成員か

それにしても、さっきの少年姿とはえらい違いだ

十年も経てばこんなものだろうか?



「ああそうだ、家においでよ。バズーカの効果5分しかないから早く」

「はっ!?」



グイッと腕を引かれ、数軒先の家に連行

躊躇なく中に入っていく沢田綱吉(十年後)

え?見た目が相当違うんだけど、そのまま入って大丈夫なわけ?



「ただいま」

「お、お邪魔します?」



バタバタと部屋にあがりこみ、誰にも会わなかった

そして勢いのままベッドにダイブ


ベッド?

ダイブ?



「アンタっ!何やってんだよ?」

「押し倒してみたんだけど」



みたんだけど、じゃねぇ!あれか?こいつは男が好きなのか?


柔らかいベッドの上で抑え込まれ、ユキはもがいて逃れようとする



「触んな!俺にそういう趣味はないっ」

「俺だってないよ。だから早く女になりなよ。それとも男のまま犯されたいの?」


「お、おかっ?!」



爆弾発言に顔が引きつる

内容が内容だけに顔が熱くなる



「あ」



―ボムッ



さっきと同じ、白い煙が立ち込めた

効果が切れたのだ

ということは十年後の沢田綱吉ではなく、現代の沢田綱吉が戻ってきたはず



「‥はぁ‥‥‥」

「!、あれ?なにこの体勢?」



戻ってきた綱吉は、男、もといユキを押し倒した体勢に固まって動かなくなった


そうだよな。誰だって男が男押し倒しちゃったら固まるよな。可哀想に、中学にしてこんな体験するなんて。いやいや俺も同じ歳なんだけどね。つうか、男が男に押し倒されても固まるよな。固まるよな?固まるよなっ!


ユキがそんな事を一瞬の内に考えている間、綱吉の頭の中にも様々なことが駆け巡る


ちょ、ちょっとー!!!!!!なにコレなにコレなにコレなにコレーっ!!?なんで外人の男押し倒してんの!俺ーっ!マジで何してんの十年後の俺ーっ!?


お互い愛想笑いしながらも動けず、心の内は大焦り

そしてどこからともなく、なんか、え?黒い物体が



―ドガッ


「げふっ」



沢田綱吉がベッドから落ちました。

そしたら代わりに黒いスーツを着こなした赤ん坊が居た



「お前にそっちの趣味があったとはな」



再教育してやる

そう言って赤ん坊は黒光りする拳銃を沢田綱吉に向けた




2009.1.22



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あきゅろす。
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