1 『聖夜の星に願いを……』 「土方さん、遅いなぁ」 僕は、寒空の下、土方さんを待つ。 かれこれ一時間は経過していて、コンビニで買ったホットのミルクティーも気休めにしかならない。 「どうせ、あのひとのことだから、また仕事でもしてるんだろうけど。自分で呼び出したクセになぁ」 思わず、悪態が口をついてしまう。 そして、暇を持て余した僕は、後ろを振り返る。 僕の目に映ったのは、大きなクリスマスツリー。 その頂上には、これまた大きなお星さまがキラキラと輝いている。 その下を行き交う、たくさんの恋人たち。 みんな、その表情は楽しそうだ。 実は、ここって、この街でも有数のデートスポットだったりする。 なんでも、この大きなお星さまの下で愛を誓い合うと、その愛は永遠だとかなんとか……。 まぁ、僕にとっては、どうでもいい話なんだけどね。 だけど、この大きなツリーとお星さまは、けっこうすきだ。 だから、人ごみはすきじゃないけど、ここは嫌いじゃない。 「ふふ。そーいえば、初めて土方さんとクリスマスを過ごしたのも、ここだっけ」 僕は小さく微笑む。 そして、懐かしむように思い出の世界へと足を踏み入れた。 それは、今からちょうど10年前のクリスマスの夜の出来事。 まだ小さかった僕が、クリスマスの街に散歩に繰り出したときのお話。 [次へ#] |