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Evidence
過去、未来

最後にフジはこう言い残した。
「オレは一体何がしたかったんだろうな・・・」

そんなの、彼自身にしか分からない。
ただ彼の人生はきっと憎しみにまみれていた。
その憎しみをあたしに吐き出し、あたしはそれを受け取った。そして更なる憎しみが生まれた。

なんて虚しい。


あたしは達成感より、虚無感でいっぱいだった。


母の遺体を土に埋めた。
緑が好きな彼女は、この森でなら安らかに眠れるだろう。

本当に綺麗に彼女は眠るように死んだ。


フジを倒してからこれからの自分は一体どうすればいいのか・・・
途端に分からなくなっていた。

とりあえずサトコの家に戻り、ちゃぶ台のところに腰掛けていた。

呆然としているあたしの隣に腰掛け、デイダラは静かに話し始めた。

「オイラ・・・サトコさんに美里をよろしくって頼まれた・・・うん」

「・・・。」


「サトコさんが美里の母親だってことに薄々気付いてて、本人に確かめたらあっさり白状した・・・うん。
でもサトコさんに口止めされて、言えなくてごめんな。」


あたしはゆっくり首を振った。
「お母さんはきっと今ごろお父さんに会えて、楽しくやってるよね・・・」

デイダラは優しく微笑んだ。
「あぁ。」

「だけどあたしはこれからどうすればいいの?」
デイダラに真剣に問いかけた。

するとデイダラは困ったような表情を浮かべた。
「オイラの・・・弟子?」

なんだか突拍子もない答えが返ってきて、あたしも
「なにそれ。」
と言って笑った。


その後も彼はあたしのこれからの提案をしてくれた。

どれもこれもウケ狙いであたしは徐々に元気を取り戻した。

きっと彼は必死にあたしを励まそうとしてる。
その優しさが十分伝わってきた。
それだけでも泣きたくなるぐらい嬉しい。

「ありがとう。」

素直に感謝の気持ちを述べた。
もう十分すぎるほどあたしは彼にたくさんの優しさを貰っている。


お母さんに言われた通り、そろそろ自分の気持ちに素直になろう。

「あたし・・・これからも暁に居てもいいのかな?」

「そりゃそうだろ!お前強くなったしな!うん!」

わしゃわしゃと、あたしの髪をかき乱すデイダラ。

「さて、寝るか!」
デイダラはサッと立ち上がった。

しかし今さらだけど、あたしはデイダラになんて言えばいいんだろう。

自分の気持ちは分かってるのに、それを言いたいのに。

もじもじと座っていると、彼はしゃがみこんで、
「どうした?」
心配そうに尋ねてきた。

「え・・・と・・・」
あたしはデイダラを見つめて言葉を探した。

すごく恥ずかしい。
恥ずかしくない言葉が見つからない。

「・・・・。」
黙ってデイダラと見つめ合っていると、彼はいきなり顔をそっぽ向けた。

「どうしたの?」
側で頭を抱えているデイダラに尋ねた。

「やべーよ・・・今オイラすげー我慢してんだから、そんな目で見つめんなよ・・・うん。」

「なんの我慢?」

「お前を抱きしめたくてすげー我慢してんだよ!」

彼の顔は見えないが、耳は赤い。

いつもデイダラはバカなくらい真っ直ぐあたしにぶつかってくる。

あたしとは正反対だと思う。

ぴょこぴょこ揺れる丁髷を撫でて、
「我慢しなくていいのに。」
と言った。

デイダラは顔を上げた。
驚いた表情を浮かべる。
「え?」

「抱きしめてよ。」


すると彼も優しく笑って、すぐあたしの手を引いた。


あたしは彼の胸にすっぽり包まった。

強く強く抱きしめられたけど、でも全然苦しくなかった。

「好きだ・・・」
デイダラはあたしの耳元で囁いた。

「うん。」
あたしは頷く。

こんなに安心感に包まれたのは、いつ以来だろう。

デイダラの匂いが心地良い。

ふわっと彼の両手に顔を包まれ、軽く持ち上げられた。

デイダラと目線が合わさり、しばらく見つめ合った後、キスを交わした。



デイダラが居ればきっと辛いことを乗り越えられる。


アジトに帰ればさっそくサソリが冷めた目であたし達を迎えた。

「サトコはどうした?」
帰って来てそうそうサソリに母のことを尋ねられる。

今更だけどサソリと母の関係ってなんだったんだろう。

サソリは、母は急に消えたと言ったし、母はサソリにあたしが来ることを聞いたと言った。

2人の言っていたことは矛盾していた。

「実は・・・」

サソリに母のことを話した。
だけど最初から最後まで彼の表情は変わらなかった。

サソリと母の関係が気にならなくはなかったが。

根ほり葉ほり聞くのは好きではないから、あえて聞かなかった。



「美里っ!」
急にデイダラはいきなり後ろから抱きついてきた。

「何?」

「あいかわらず冷てぇなぁ〜うん」

いきなり抱きつかれたから驚いただけなんだけど。

「あのときはあんなに可愛かったのになぁ〜」
ニヤニヤと笑いデイダラは指でつついてくる。

あのときとは、キスしたときのことだろうか。
急に思い出すと、すごく恥ずかしい。

「顔赤いぞ、うん。」
デイダラに指摘されて、顔をそっぽ向けた。

そのデイダラとの一連の流れを眺めていたサソリは驚いた表情を浮かべ、
「お前らやったのか?」
と、とんでもないことを言ってきた。

あたしはすぐさま首を横に振った。
「違う!」

そんなのまだ絶対ありえない。

「オイラはいつでも大丈夫だけどなぁ〜うん。」
爽やかに笑うデイダラ

言ってることは全然爽やかじゃないが・・・


サソリはこそっとあたしの耳元で
「男は狼だから気をつけろ。」と言った。

「は・・・はい・・・」
あたしは内心ドキマギしながら頷く。

そんなこと言われても・・・

デイダラはそんな人じゃないと思いたい。

が、さっきの彼の言動を思い返すとそんなこと思ってもいられない。

サソリは
「じゃあなバカップル」
と言ってどこかに行ってしまった。

チラリとデイダラに目をやれば、
「旦那に何を言われたんだ?うん」
キョトンとした表情で言われた。

あたしは答えたくなくて、無視して部屋に戻った。

デイダラが動揺の声を漏らしていたのは言うまでもないが。



自室であたしはゆっくり本を読んでいると、部屋の扉がコンコンとノックされた。

デイダラか、と思って扉を開けて立っていたのは金色ではなく、漆黒の黒髪の男だった。

「どうしたの?」
いきなりのイタチの訪問に驚いた声をあげた。

「入っていいか?」

イタチに言われ、あたしは神妙に頷いた。


ソファーに座っているイタチにお茶を出す。

イタチはあたしを冷たい目で見つめた。
その目に恐怖を覚える。

彼は単刀直入に聞いてきた。
「サスケはもういいのか?」


「いや・・・えっと・・・」
あたしは思わず言葉を濁す。

なぜイタチはデイダラとのことを知っているんだろう。
さっきのあたし達のやり取りを聞いていたのだろうか。

「いいから答えろ。」
威圧するようにイタチは言った。

「どうでもいいわけじゃないよ。サスケは大事な友達だよ・・・」

「前は友達だったのか?」

イタチに痛いところをつかれる。
イタチからすればサスケからデイダラに簡単になびいた、最低な女に見えるんだろう。


「だって・・・遠くの親戚より近くの他人ってゆうか・・」
口をすぼめて言った。

「ふざけるな・・・お前はサスケがどうなってもいいのか?」

なんだか先の見えない話にイライラして、あたしも逆上してしまう。
「そもそもあんたはサスケを憎んでいるんじゃないの!?一族を全滅させたのはイタチでしょ!?」

すると彼はため息をつき、睨むような視線をやめた。

「そうだな・・・お前には特別に教えてやろう。うちはの過去と、サスケの未来を。」

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