Evidence
受け入れられない想い
結局一睡も出来なかった。
デイダラがいなくなったらどうしようとか、そんなことばかり考えていたら眠るどころじゃなかった。
朝もいつものようにデイダラと出くわしても、話すことはなかった。
今回ばかりは彼も決意が固いみたいで、あたしにご機嫌とりのようなこともしてこなかった。
だから、先に折れたのはあたしの方だった。
その日の日が暮れるころには、デイダラの部屋に駆け込んだ。
あたしはその時泣いていた。
部屋で1人で籠もっていても、不安でしょうがなくなってしまったのだ。
泣くあたしの肩を優しく抱いて、彼は部屋に入れてくれた。
部屋に入ってからもあたしはデイダラにすがりついていた。
こんなにデイダラに依存している自分自身にも驚く。
デイダラの胸の中でひたすら涙を押しつけた。
そして少しあたしもようやく落ち着いたころ、デイダラは静かに自分の想いを語りだすのだった。
「オイラだって別に死にに行くつもりはねぇ。ただ勝つためには命も捨てる覚悟はある。」
「……。」
あたしは何も言わずに聞いた。
声を出せばまた涙が出てしまいそうだったから。
「美里、オイラがお前を置いていくと思うか?」
あたしは唇を噛み締めた。
そして小さく首を横に振った。
「だろ?オイラは負けねぇよ!
おらおら〜そんな顔してるとこうだからな!うん」
そう言って笑って、デイダラはあたしの脇腹をくすぐってきた。
「ちょっと!やだぁ!やめてよ!」
あたしは笑いながらベッドを転がった。
しばらくあたしの脇腹を狙ってくるデイダラと格闘し、
ふと気付くと笑顔を消したデイダラの真剣な顔が目の前にあった。彼は仰向けになるあたしを覆うような体勢だった。
デイダラの澄んだ青い瞳に、いつもあたしは釘付けになってしまう。
デイダラは愛おしそうに親指であたしの頬をなぞって、そこを唇で触れた。
あたしはゆっくり目を閉じて、デイダラの首に手を回した。
「愛してる、うん。」
耳元で囁かれる愛の言葉は、今までで1番切なかった。
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