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Evidence
最後の

次にサスケと顔合わせるのは気まずい。
そう思いながらあたしはシャワーを浴びていた。

正直もうサスケと会いたくないような気もする。

サスケもあたしに会いたくないのではないだろうか。




洗面所の目の前に立つ。髪を整えていると、鏡に自分じゃない人間が映った。

面を被っている。

「トビ…。それとも、うちはマダラ?」
背後に立つ男に鏡ごしで尋ねた。


「フッ。イタチのやつ、口が固いくせにお前にはペラペラ喋るんだな。」

腕を組むマダラ。

トビとは何回も会話したことはあるが、マダラとは初めてだった。

「なんか用?」
あたしはそっけなく言う。

「そっけないじゃないっすかー!美里さん!」
急にトビのテンションで話すマダラ。

あたしは眉を寄せる。


「ハハハッ。」
あたしの表情を見てマダラは笑った。

「まぁそんな顔をするな。悪かった。」
マダラは謝るが完全にバカにされているようにしか思えない。



「ところでだ。イタチはどこまでお前に話しているんだ?」

やっと本題に入ったところか。

あたしはマダラの問いに答える。

「別に。サスケのこととトビの正体のことしかイタチからは聞いてない。」


「……そうか。ならいい。」

「疑わないの?」

「あぁ。イタチはお前を危険にさらすようなことはしないはずだからな。」


もしこいつの裏の情報を知っていたら、あたしの命はないだろう。

知っていたところで誰かに漏らすわけでもないのに。


黙っているとマダラが口を開く。
「お前は優秀な忍だ。だがもうこの組織には必要ない。サスケも時期にお前を必要としなくなる。」
「…………。」

「これはオレからのお前を思っての提案だ。」

あたしはマダラを見据えた。





「暁を抜けて、自由になれ。」


マダラはあたしとサスケを引き離したいようだ。

「例えお前が木の葉に戻ったとしても、暁はお前を追ったりしない。」


「どうだ?いい提案だろう?」

マダラはあたしのことが邪魔なのだ。
サスケを利用したいマダラがそれを邪魔しようとするに違いないあたしの存在が。


あたしは何も言わず、その場を早足で立ち去った。



サスケともう一度話し合わなければ。


二度と会わなくなる前に。






あたしはサスケが寝室に使っている部屋に勝手に入って
彼の帰りを待った。

すごく長く感じる。

――数時間経った後、サスケは帰ってきた。


「おかえり。」

「あぁ。」

あたしがいても驚きもしないサスケ。

サスケは上着を脱いで、ベッドに腰掛けた。


その隣にあたしも座る。

深呼吸し、あたしは話を切り出した。
「もうあたしはサスケに何も言わない。
多分、こうやって話すのはこれで最後だね。」

サスケは両肘を太ももにのせる体勢で、あたしの話を聞いてくれた。

「あたしは暁から抜ける。あたしはサスケがこれからどんな人になろうとも、憎まない。
…でももう恋心もサスケにはない。」

サスケは時折瞬きをするだけで、人形のように動かなかった。

「最後にサスケを利用してごめん。」

あたしはデイダラがいない寂しさをサスケで埋めた。
でも、あたしには擦っても消えない跡がある。

それをサスケが指摘した。
「お前の背中の刺青……。」

抱き合えば自然と見つかってしまう刺青。


「あたしがデイダラの物だっていう証だよ。」









サスケの部屋を後にしたあたしは、身支度を始めた。



いざ出ていくとなると、少し寂しさは残る。

いつの間にかあたしの居場所だった暁も、アジトも、気付けばまた居場所ではなくなった。


マダラに言われなくても、あたしはいずれ自分の意思でここを出ていっただろう。



昔、木の葉から出ていくときは不安でしょうがなかったが今は特にそうは思わない。

どこも行くあてなんてないが、なんだか不思議と1人じゃないような気になれた。





あたしの背中には、デイダラと一緒にいた証があるから…。









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