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Evidence
再会

最近アジトはやけに静かだ。

それもそうだ。誰もいなくなってしまったのだから。

たまに鬼鮫とは顔を合わせるけど少し挨拶して、その程度。

あたしは毎日デイダラの夢を見て、起きて現実に戻って、の繰り返しだ。


ここ何日もアジトにひきこもっている。

最近は生きているという感覚があまりない。

だけどデイダラの後を追うような真似も出来なかった。

あたしは死ぬ度胸なんてない。



イタチがサスケのもとに行った数日後――。


あたしはリビングのソファーに座って本を読んでいた。
ちっとも本の内容は頭には入らないけれど。



するといきなり女の声がした。「ちょっとぉ〜!待てよぉ〜!」

明らかに聞いたことのない声だ。

あたしは声のする方に視線をやった。

リビングにいきなり入ってきたのは、髪の長い女の子。



と、サスケだった。


あたしは突然のことに固まってしまった。

サスケがあたしに気付く。

…目が合った瞬間息が止まるかと思った。


あたしは座っているから分からないけど、身長もきっとあたしより随分と高くなった。

サスケも表情はあまり変わらないけれど多分驚いている。


昔よりサスケの空気が少し冷たい。
やっぱり彼は変わってしまったのだろうか。


あたしは何も言えずに口を開けて彼を見ていた。

そしてゆっくり近づいてきて、先に口を開いたのはサスケ。
「久しぶりだな。」

あたしは神妙に頷く。

少し気まずい空気を察知したのかサスケの隣にいた女の子は、キョロキョロとあたしとサスケの顔を見る。


そして女の子は眼鏡を光らせ、あたしに尋ねてきた。
「あんた誰だよ。」


「えっと…」
あたしが答えあぐねていると、サスケが口を挟んだ。
「香燐、お前はどこかへ行け。オレはこいつと話がある。」

香燐という子はサスケに一瞬、
「はぁ!?」
と突っ掛かったが彼の冷たい視線に押されたのか渋々その場を離れていった。
去る間際、鋭い視線を感じたがあたしは見てみぬフリをした。


――しばらく沈黙が流れゆっくりサスケがあたしのもとに近づいてきて同じソファーに座った。

サスケがいる右側がやけに緊張する。

今度はあたしから先に口を開いた。
「ホント、久しぶりだよね…。」
あたしはチラッとサスケを見る。
サスケの横顔を見ているとやっぱり懐かしい気分になってしまう。

そんなに視線を送るつもりじゃなかったけど、ついつい見入ってしまう自分がいた。

サスケもそれに気付いたのか不思議そうな顔をあたしに向ける。


昔のサスケだったら照れているかもしれない。

でも彼は涼しい顔だった。
やっぱり昔よりも闇を帯びた漆黒の瞳であたしの顔を見ていた。


その黒い瞳に映るあたしは、どこか顔が引きつっている。

昔居心地がいいと感じたサスケの隣は、もうそうじゃなかった。


「会いたかった。」

あたしは静かにそう言ったサスケの言葉に戸惑って視線を反らす。

視線のやりようがなくて仕方なく自分の膝を眺めた。


何も言えないあたしに、サスケは質問をしてくる。
「お前は違うのか?」

あたしは思わず頭を振る。
「違くはないよ…ただ…」

確かに会いたかった。
あたしは昔サスケに会いたくて涙を流していたときもある。

「あの、金髪の暁のやつか?」

サスケはあたしが言う前に尋ねてきた。
金髪で暁のメンバーはデイダラしかいない。

「なんで?」

「あいつが、“美里は渡さねぇ”って叫んでた。」

「そう…。」

不意に思い出してしまったデイダラのせいで視界が滲んでくる。

戦いの途中でもあたしを思いだしてくれてたのだろう。
無性にそれが嬉しく思えた。

一粒涙が頬を伝う。
もはや自分でその涙を止められなかった。

サスケはあたしが泣いているのに気付いたのか、震えるあたしの左手を握った。

でもあたしが欲しいのはデイダラの手だ。


サスケの手が優しいのが心苦しい。






「オレはずっとお前のこと忘れなかった。」


ゆっくりサスケの方を向く。

サスケはしっかりとあたしの目を見据え、言った。




「好きだ。」






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