Evidence
墨
あたしは、数日間サソリに謹慎をくらった。
サソリは一度機嫌を悪くするとなかなか戻らない。
あたしは任務で気を紛らわせようと思ったのに。世の中そんなに甘くなかった。
サソリの機嫌が戻るまで、あたしは何をしよう。
しかもサソリとデイダラは1週間は任務に行っているし。
今アジトには誰もいない。暇でしょうがない。
しかも、なんだかんだやっぱりサスケのことは気がかりで。
暇ということは、それにも拍車をかけた。
サスケは今、どこに居るんだろう。
何を考えているんだろう。
別にもうサスケに恋心があるわけではないけど。
サスケと一つ屋根の下で暮らしたことがある身にとっては、彼が大蛇丸のもとに行った事実はとてつもなくショッキングなことなのだ。
気になったあたしは、大蛇丸のことをもっとよく知るために彼の資料を手にとった。
――優秀な忍なのに、欲望のおもむくままに行動した結果が今の大蛇丸。
愚かな男だ。
だが、とてつもなく強い。
でもそんな男の力が欲しいのだろうか。
サスケはそんなにバカじゃないはず。
だけど復讐には手段を選ばないと決めてしまったら、周りが何を言おうと無駄なんだろう。
冷静に考えたあたしはそう悟った。
多分また、サスケには会うような気がする。その時はもしかすると敵になっているかもしれないけど。
どっちにしろ今考えるべきときじゃない。
「ただいまー!ってなんだこの資料!?うん!」
資料に埋もれてうたた寝していると、いきなりデイダラが扉を開けた。
「デイダラ…あれ?任務は?」
まだ覚醒しきってない頭を振って、彼に目をやる。
デイダラは無造作に落ちてる資料を手に取る。
「いや、急に中止になって……。」
彼は資料に目をやって、急に大人しくなった。
「なんでお前大蛇丸の…。」
ポツリと呟いた後、彼は資料から全てを悟ったのか自嘲気味に笑った。
「ハハッ。そうだよな。アイツ、このカスみたいなやつのとこに行ったんだってな。うん」
急にデイダラの顔つきが険しくなった。
「お前は結局うちはなのか!?」睨むようにあたしを見据えるデイダラ。
あたしはそれに反発した。
「違う!ただ元暁のこの男のことを調べただけじゃない!」
「でもお前最近様子がおかしかったじゃねぇか!」
デイダラの一言にハッとする。
確かにサスケのことを考えていたからだ。
押し黙るあたしにたいして呆れたようにデイダラは言った。
「オイラ、結局どこをとっても、うちはにはかなわねぇのかよ。」
「オイラはお前しか居ないのに、お前には常にオイラ以外の男がつきまとうんだな…。うん」
悲痛な面持ちだった。
あたしは何も言えない。
デイダラは扉を静かに開けて、部屋を出た。
追いかけたほうがいいのだろうか。
でもかける言葉がみつからない。
それは違うと言っても言い訳に聞こえる。
しかし確かに違う。
あたしの考えはまとまったはず。
あたしはサスケがいなくなっても大丈夫だったけど、今デイダラを失ったら。
――きっと生きていけない。
どうしたら、一番分かってくれるだろうか。
「しょうがねぇなぁ。お前の謹慎はといてやるよ。」
リビングのソファーに座るサソリに頭を下げた。
「ありがとう。」
サソリにお礼を言い、少ない荷物を持った。
「お前どこ行くんだよ。」
サソリはあたしの荷物を見て尋ねる。
「ちょっと行ってくる。」
あたしはアジトを出た。
デイダラに想いを伝えるために。
「いらっしゃい。」
ここはなんの変哲もない小さな里。でも有名な彫り師がいる。あたしは小さな店の扉を開けた。
「どうするんだい?」
あたしは彫り師に細かく注文する。
彫り師もそれに頷く。
――背中に痛みが走った。
「はい、出来たよ。」
さすが有名な人だ。ある程度短時間ですんだ。
お金を渡し、店を出る。
あたしは足早にアジトへ帰った。
もう既にアジトを離れて1日が過ぎようとしていた。
急に居なくなったから心配しているだろうか。
デイダラは。
まさかあたしに、愛想は尽かしてないだろうか。
少しビクビクしながらアジトに入る。
リビングには誰もいない。
ここに居ないとなると、彼は部屋にいるか、外出していることになる。
あたしはデイダラの部屋の扉を開けた。
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