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Evidence
墜落
あたしにとって耳を塞ぎたくなるような事件が起きた。

「サスケが大蛇丸の手に堕ちた。」

イタチが深刻そうな表情であたしに言った。
あたしは集会に参加はしない。
だから少しだけ情報が回ってくるのが遅かった。

「大蛇丸って、イタチが前言ってた…」

前、サスケの未来をイタチが話してくれたときにその名前が出てきたのをふと思い出す。

「大蛇丸は元暁のメンバーだ。」イタチは大蛇丸のことについて語りだした。

話し終わるころには、あたしの気分はすっかり落ち込んでしまった。
まさかこんなに早く、サスケの堕落の序曲が始まるなんて。


「あの時、木の葉に行ったとき、意地でもサスケに会っていれば…。」
あたしは口元を押さえた。
後悔ばかりが押し寄せてくる。

肩をすぼめるあたしを宥めるように、口を開くイタチ。
「お前のせいじゃない。例えお前に何を言われようとも、アイツはそうなっていた。」

もう、サスケのことは忘れようと思ったのに。
どうしてこんなに、心が乱れるんだろう。

「サスケは結局力を求める。オレを殺すために。」

あたしの脳裏をよぎるのは、サスケが言ったあの一言と、憎しみに満ちた瞳。





「よっ!美里!今日は早起きだな!うん!」

「あ、うん。」

だって昨日は眠れなかったから。いろいろと頭で考えていたら、すっかり朝になっていたから。
今日は任務なのに最悪だ。
「どうした?顔色よくねぇな…うん。」

デイダラが心配そうに顔を覗き込んできた。
「そうかな?そんなことないよ!」
彼に心配かけないように言った。デイダラは
「そうか?」
腑に落ちない表情であたしを見るが、笑ってごまかしておいた。


しかし、どうしてもサスケの事実があたしの脳を駆け巡っていた。

それはあたしの集中を掻き、任務に支障をきたすこととなる。

「美里!」

デイダラの切羽詰まった叫び声が聞こえてふと我にかえった。
敵のクナイが頭を貫通する刹那、サソリが機転をきかせてそれを払い除けてくれた。

「死ぬ気かテメェ!!!」
サソリが怒鳴り声をあげる。

あたしは黙って首を振った。

「いいから下がれ!!」

サソリに怒鳴られ、あたしは素直に従った。
確かに今のあたしは邪魔なのだ。

あたしは安全なところまで下がって、彼等の任務をただ傍観していた。



――決着がつくと、サソリは座っているあたしの手を掴んだ。
そして引っ張りあげて胸ぐらをつかむ。
「テメェ舐めてんのか?」
サソリがあたしを見下す。

あたしは
「ごめんなさい。」
と謝った。

「遊びじゃねぇんだ。任務だろ?もう、二度とお前に手は貸さねぇ。勝手に死ね。」
サソリは殺意に満ちた瞳をしていた。
確かにあたしは悪かった。いつもだったら容易く避けられるものも、避けられなかったのだ。
あたしは手を抜いていた。

そりゃ、サソリに怒られるのも当然。
あたしは恥ずかしくなって地面と睨めっこしていた。なんとなく、2人に会わせる顔がない。

すると、優しいデイダラは落ち込んでいるあたしの肩を抱いた。
あたしはデイダラにも
「ごめん。」
と謝った。


任務に私情は挟まない。
そんな当たり前のことを、あたしは今さら学んだのだった。





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あきゅろす。
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