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Evidence
平和な日常
ある日いつものように暇だからとデイダラの部屋に遊びに来ていると、
「なぁ、せっかく休みなんだしどっか行かねぇか?」
とデイダラがデートの提案を持ちかけた。

あたしはベッドで転がりながら
「出掛けたいけど、これ見てよ。」
昨日任務で負った足の傷を指差す。
正直、治るまでは安静にしていたいものだ。

しかしデイダラは
「そんなのたいしたことねぇよ。うん。」
と笑った。

そうかなぁ、とうつぶせの状態で足を覗く。
なんとなくその格好はデイダラの目に毒だったようで、彼は思いっきり目をそらした。

「やっぱ出掛けようぜ!うん!」
決意をこめてデイダラは立ち上がった。

「んーでも〜。」
尚もあたしは拒否の言葉を出しながらベッドで転がると、
急にガバッと持ち上げられた。

「え?」

「よし!これなら足に負担はない!行くぞ!うん!」

まさに、俗にいうお姫さま抱っこでデイダラに連れてかれた。

ちゃっかり、外に手配してあったお手製の粘土の鳥に乗せられる。一体どこに向かうのだろう。
そんなことを思いながらデイダラの背中に捕まった。

「どこ行くのー?」
デイダラの耳元に問い掛ける。
彼はニヤッとしつつもその問には答えなかった。


そのまま暫く空を飛んで、少し下降する。
そして鳥は着地した。
「なにここ?」
デイダラに担がれ、鳥から降りたのはなんの変哲もない芝生が広がる丘。

まぁ、空気は美味しいし、爽やかな風が辺りに吹いているので悪くはないけど。でも特に何もない。
芝生に座らせられ、隣にデイダラが座った。
ふと気付いたのは目の前に広がる夕焼け。
太陽がちょうど山に隠れる頃だった。
綺麗な朱色の沈んでいく太陽に目を奪われる。

「芸術的だろ?あんだけ昼間は存在を主張してる太陽も、沈むときは一瞬なんだぜ、うん。」

確かにもう、太陽は消えていた。
「まっこれを見せたかったわけじゃねぇけどな。」

「え?違うの?」

てっきりこの夕焼けを見せに連れてきてくれたんだと思ってた。

「ちょっと寝転がってみろよ、うん」
デイダラの指示に従い、彼の言うとおり仰向けで体を倒した。

「ほら、もう出てるぜ。一番星。」
2人して仰向けで空を眺める。
わずかに光輝く星をデイダラが指差した。
まだ空も全然暗くなってないのに星って出るものなんだ、とふと思う。

「ここがオイラのお気に入りの場所だ。連れてきたのはお前が初めてだ、うん。」
“初めて”という言葉はなぜか人を嬉しくさせる言葉だ。

「デイダラが星を見せに来るなんて、意外にロマンチストなんだね。」
ちょっとした皮肉を言うと、コツンと頭をこずかれた。




一番星が出ると、空は瞬く間に暗くなっていった。
たくさんの星がその存在を主張し始める。
なんて空との距離が近いんだろう。
まるで手が届くかのようだ。

「ありがとう。」

顔だけデイダラに向けて、お礼を言った。
デイダラはちょっと照れたように笑い、あたしの右手を握ってくる。


会話はなくても、穏やかな時間が過ぎていった。

幸せだ、と心の底から思う。


この満ち足りた気持ちが永遠に続きますように…
と流れる星に祈っておいた。





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あきゅろす。
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