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Evidence
無意味な帰郷

鳥の鳴き声で目が覚めた。

今日は木の葉に行く日。

昨日のナルトの話しで木の葉に行く足取りはすごく重いが、それでも準備をして出発しなければ。

このまま暁に居れば、うまくナルトを助けられるかもしれないから、と自分にいい聞かせた。


暁にいるのがバレたら、ナルトやシカマルはどんな顔するのかな。
少なくとも友達には戻れない。そう考えると心臓が掴まれるように苦しくなった。


パタン・・・自室の扉を閉め、待ち合わせ場所に向かう。

廊下を歩いていると、眠そうな顔をしたデイダラと遭遇した。
彼と目が合い、
「行ってくるね」
と言った。

デイダラは複雑そうな面もちだったが、
「おう。」
と返事してくれた。

彼がいろんな意味で心配しているのはすごく伝わってくる。
この人を傷つけたくない。

あたしは今の自分の決意を述べた。
「あたしちゃんとけじめつけるから。側にいてほしいのはデイダラだけだよ。」

するとデイダラはいきなりガバッと抱きついてきた。

「!?」
驚くあたしをさらにぎゅーっと抱きしめる。


「大好きだ・・・うん」

あたしはデイダラの肩に顔をうずめた。


素直なデイダラが愛しい。

こんなに愛されてあたしは幸せ者だ。




「美里さん顔が緩いですね。」
鬼鮫に指摘されて我に返る。

デイダラに大好きと言われてから、その言葉がずっと頭の中でリピートされていた。

そりゃあ自然にニヤけてしまうだろう。

「何かいいことあったんですか?」

「別に・・・」

そんなあたしと鬼鮫の会話に全く興味をもたないイタチ。
1人悠々と歩いている。

木の葉まであと少し。
あたしは気を引き締めた。



「じゃあここから別行動ということで。」

イタチのおかげで木の葉の結界も易々と通り抜けたあたしたちは、計画通り別行動となった。

とりあえず一人きりになって、久しぶりの木の葉を散歩した。

やっぱり平穏で穏やかな里だ。あたしがこの里を出たときと何も変わらない。

あたしは一応バレるとマズいので別人の格好に変化していた。おかげでのびのびと木の葉を探索できる。

「なんか懐かしい匂いがするってばよ。」

この声と口調は紛れもなく、ナルトのものだった。
マズい・・・
血の気が引いて後ろを振り向けずに居た。
来てそうそう出くわすなんて。
ついてるんだかそうじゃないんだか。

「なぁに坊や・・・?」
苦笑いで振り向いた。

「坊やって・・・どう見てもオレと年変わんないぐらいじゃねぇか?」

ナルトは不思議そうな顔でまじまじとあたしの顔を覗き込んだ。

やばい!
変化を解かなければいい話だが、ボロが出そうで恐ろしい。

必死に顔を背けているとナルトも気持ちを察してくれたのか、顔を覗きこむのをやめた。

そしてナルトは思いついたように
「やべぇ急いでるんだったってばよ!」
と叫ぶ。

「じゃあな!」
そう言い残してナルトは走り去った。
彼は相変わらず無垢な顔で笑っていた。

ナルトとは別れも言わずに離れた。
1人ぼっちだったナルトには友達が出来たのだろうか?



あまりにもあっさりナルトに出会ってしまったので次に知り合いに会うのが気が気じゃなかった。

特に会うとマズいのはシカマル。シカマルはあたしの変化をことごとく見破る。
きっと今出会ってしまったらバレない自信はない。


あたしは親友に軽蔑の目を向けられるのは嫌だった。

そんな視線を向けられるくらいならもう再会なんてしなくてもいい。


でもサスケにはやっぱり会って話さなければ。
少しは成長しただろうか。
もしかしたらサスケも他に好きな子が出来てたりして。


それにしてもサスケってどこにいるんだろう。
木の葉って広いから探しようがない気が…


オロオロとさ迷っていると、時間が無駄に過ぎていくのが分かる。


「はぁ。」
ついため息をついてしまう。

もう何時間たっただろうか。一向にサスケを見つけられなかった。

こうなったら、危険かもしれないけど誰かに聞くしかない。
近くの八百屋のおじさんに声をかけようとした。

「え?」

が、急に体が浮いたと思ったら気付けばイタチに抱えれたあたしはいとも簡単に木の葉の外に出ていた。

「なんなのイタチ!」

あたしは降ろされた直後に彼の胸ぐらをつかむ。

すると見かねた鬼鮫が口を挟んだ。
「ちょっと厄介な相手が出てきたのでね、しょうがなかったんですよ」

鬼鮫は肩に手を置いてあたしをなだめた。
でも…結局サスケに会えなかった。

あたしはイタチから手を離しガックリ肩を落とした。

せっかくのチャンスだったのに。


そのままアジトに帰った。
デイダラは珍しくリビングの椅子に座っていて、あたしの顔を見たとたん飛び付いてきた。
「おかえり!うん!」

がっしりと抱き締められて身動きがとれない。

「デイダラ苦しい…」

しかしデイダラはそんなのお構いなしに力を緩めないので、もうどうでもいいやという気分になる。
「若いっていいですねぇ」
としみじみ言いながら鬼鮫はどこかへ消えた。

イタチはこちらを無表情で見ている。
目が合ったが反らされて自室に戻って行った。



イタチはサスケに会ったのだろうか。






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