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Evidence
愛する人
冷たいクナイが頭に突きつけられている。

「せっかく前回はオレから逃げられたのに、残念だったな。」
フジに耳元で囁かれた。

「お前はオレに殺される運命だったんだ。」

フジは恐ろしいほど冷たい視線をあたしに向ける。

「なんか言い残すことはあるか?」

最後の義父の優しさだろう。
そんな優しさなんていらないのに。

「そんなのいいだろ。殺しちゃおうぜ。」
あたしの真後ろで兄が言う。

「まぁ待て。一応家族だろ?」
「フッ。親父が言うなよ」

悔しい。
こんなやつらにあたしは殺されるのだろうか。

「殺してやる・・・」
あたしはうつむいて絞り出すように言った。

フジはあたしの顔を覗き込み、
「はぁ?」
顔をしかめる。

「殺されるのはお前だよ。バカじゃねぇの?」
兄は鼻で笑った。

「ここで死んでも・・・すぐに呪い殺してやる・・・」

目の前にいるフジの顔を思いっきり睨んだ。

「フッ。楽しみにしてるよ。」フジはあざ笑ってクナイを取り出し、あたしの首に突きつける。
後頭部にもクナイ、首にもクナイ。
完全に挟まれていた。

悔しいけど、今回はあたしの負けだ。

「じゃあな。」
フジはクナイを振り落とした。
ぎゅっと目をつぶった。






「悪いな。来るのが遅れちまった。」

パッと目を開けると、デイダラが兄と義父のクナイを持つ手をつかんでいた。


「なんだ?テメーは」
兄がデイダラを睨んで言う。

「美里、オイラはこっちをやっていいか?うん」
デイダラはチラッと目で兄を見てから言った。


この際、デイダラの力を借りるしかない。

あたしは頷いた。

「うし。オラ、来いよ。」
デイダラは兄の手を乱暴に引っ張った。

「おい!なんなんだ!」
兄は叫びながらデイダラにズルズルと引っ張られていた。

フジは呆然としている。

デイダラはああ見えて力が強いから、フジは驚いているんだろう。

先ほど手に持っていたクナイはデイダラに盗られていた。

「なによそ見してんだよ。ばーか。」
あたしがそう罵れば、フジは悔しそうに歯を食いしばった。


「結局あんたは無力だね。
どうせ父を倒したのだって誰かの手を借りたんでしょ?」

フジはあたしを睨む。

「そうよ。」

いきなりスタッとサトコが降りてきた。

さっきまで彼女は幻術をかけられてぐったりしていたはずだったのだが。

あたしは首を傾げていると、サトコはさらりと言ってのけた。
「最初から幻術なんてかかってなかったのよ」

サトコはあたしに向かってパチッとウインクした。

ということは、あたしがあれだけピンチのときでも黙って見ていたということなのだろうか。
実の母親の神経を疑う。

じとーっと母親に疑いの目を向ければ、母親は唇をとがらせた。
「なによ〜ヒロインはヒーローに助けられるべきよ?」

あたしはその発言にガクッと肩を落とす。

ヒーローとはデイダラのことだろうか。
デイダラの戦いの方に目を向ければ、言うまでもなくデイダラの方が優勢だった。

ボンッボンッと爆弾を容赦なく使って、楽しそうに戦っていた。
「芸術は爆発だ!!」
そして大きな声で叫んでいる。

なんだかデイダラはヒーローには程遠い気がした。

「こら!美里!なによそ見してんのよ!2人でやるわよ!!」
サトコは叫ぶ。
人数が増えて圧倒的に不利になったフジは「チッ!」と舌打ちをした。

あたしと母親はタッグを組んでフジに挑んだ。
その間デイダラはさっさと春日を片付けて、あたし達のところまでやってきた。

だけどデイダラは一切あたし達の戦いに手は出さなかった。
きっとあたしの気持ちを察したんだと思う。


そしてフジを徐々に追い詰めていったのだが、彼も上忍なだけあってなかなか根を上げない。
「ハァハァ・・・」
だんだん息も荒くなり、チャクラも消費してきた。

「美里!後ろ!」
母が叫んだ。

少しあたしは気を抜いてしまったのだ。
振り向けばフジが雷遁の術を発動していた。

まずい!避けられない!




危機を感じた瞬間、母があたしの盾になった・・・

母が倒れるまで全てがスローモーションに見えた。


ドサッ。母は横たわる。
お腹を押さえていて、押さえている手から血が流れていた。

「お母さん!!」
あたしはうずくまって母にすがる。
その間見かねたデイダラがフジを歯おい締めにしてくれていた。

涙を流しながら、息づかいが荒い母の頬を撫でる。

「今までほったらかしちゃってご・・・めんね・・・」
母は苦しそうに、あたしに言葉を届ける。

あたしは必死に首を振った。

「あなたが来るのは・・・実はサソリから聞いたのよ」

「え?」


力無く母は笑う。
「フフ・・・くわしいことは彼から聞いて・・・」

「あなたに言うつもりは・・・なかったんだけど・・・まさかフジが来ちゃうとはね・・・」

黙って彼女の手を握った。
涙がとめどなく流れる。

ポタッと涙母の手の上に落ちて、はじかれた。

「泣かないで・・・」
彼女はおぼつかない手であたしの顔の涙を拭った。

きっと激痛で苦しいのは母の方なのに。

「ウッ・・・お母さん・・・」

死なないで・・・

「最後にあなたにそう呼ばれて良かった・・・あの人に自慢しなきゃ・・・」

だんだんと母の声は小さくなってくる。

「まだいかないでよ!せっかく会えたばかりなのに!!」
あたしは力の限り叫んだ。

「また1人になっちゃうよ・・・」

その言葉に少し悲しそうな顔で頬笑む母。
「あなたには彼がいるじゃない・・・」


彼とはサスケ?デイダラ?


「もっと素直になりなさいね・・・」

彼女はあたしの頬を優しくなぞって、その手はいきなりガクッと落ちた。


「え!?お母さん!!!」

あたしはすぐに母の口元で呼吸を確認したが、もう母の呼吸は止まっていた。

まだ聞きたいこともたくさんあるのに。

事実を認めたくなくて、しばらく呆然と座り込んでいた。

「美里!!お前はこっちをやっちまえ!!悲しむのは後だ!うん!」

デイダラの声にハッとしフジを見れば、いい気味だというように笑っていた。

お前だって直にこうなるのに。

あたしは悲しみを怒りに変え、デイダラに抑えられているフジのところまで駆け寄って、

フジの体にナイフを刺した。

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