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Evidence
とまどい
デイダラがあたしの頬を撫でる。

デイダラの金色の長い髪の毛があたしの顔にかかるぐらい、距離が近かった。

彼はいつもの少年のような顔ではない。


こんな押し倒されているような状態でも不思議と嫌じゃなかった。


「あの〜そろそろどいてくれるかなぁ?」

さすがに体勢にキツいものがあったから。

デイダラは
「あぁ、悪い」
と言って体勢を元に戻した。


今思えば部屋に2人きりだ。何があってもおかしくない。

だけど彼はいつもの表情を取り戻し、何事もなく眠りについた。




夜が空け、サソリにぐだぐだ言われながらも任務は無事終わる。

そこからは母親探しが始まった。

サソリにも母親のことを聞き、彼女が行きそうなところを分析した。


「次の任務は1週間後だ。それまでに行けるところは行こう。うん。」

デイダラの鳥に乗ってしまえば早いもので、様々な場所に短時間で行けた。


だがそう簡単に見つかるはずもなく、休日も残り3日になってしまった。


「テメーらバカか!?顔も知らずに人探しなんか出来るわけねぇだろうが!」

サソリの部屋で床に正座させられ、説教されるあたしとデイダラ。

少しだけアドバイスをもらいにいこうとしたはずが、サソリに指摘されて、あれよあれよと説教されるハメになった。

「頭を使え頭を!」


「すいません。」
しゅんとうなだれるあたしとデイダラ。

サソリはヒルコを脱ぎ、ソファーにどさっと座る。

腕を組み、いきなり声を沈めた。


「実はな・・・風の噂で聞いたことがある。サトコはここから東に行ったところの深い森にいるらしい。」

あたし達は目を点にさせた。

「旦那知ってたのかよ!」
デイダラは驚いた顔で尋ねる。
「あぁ。聞かれなかったからな。」
サソリはすました顔で言った。

だったら早く教えろよ、と言いたかったが。

美少年の顔のサソリには怒りもどこかへ吹っ飛ぶ。
この顔にはどこか逆らえない。

相変わらずあたしはサソリの顔に弱い。
ホントはただのおっさんなんだけど。


まぁでも少し希望が見えた。


明くる日の早朝、さっそく東の森に向かった。


足元が悪い森の中は人が住んでいる様子はない。

だけど森の緑を見ていると気分が安らぐ。



「そういやお前と出会ったのも森の中だったな。うん」

前を歩くデイダラはその変で拾った枝を振り回しながら言った。

「そうだっけ・・・」
思い出そうとしたけどそう言えばその時は意識が朦朧としていたのだ。

「普通オイラは人助けなんてしねぇけどなんか気づいたら助けてたっけな・・・うん」

「・・・・」

「ホント最初っから美里は放っておけねぇよ。うん」

デイダラは振り返ってあたしに笑顔を向けた。


デイダラのいつもと変わらない優しい笑顔を見たらフワッと、あたしの心は温かくなる。


「あ、あのさぁ」
あたしはおずおずとデイダラに話しかける。

「ん?」

「これからも・・・あたしのこと放っておかないで・・・」

自分で言って驚く。
正直なあたしの言葉だった。

デイダラは近くまで来て頭をなで、
「当たり前だろ?うん」
と言って微笑んだ。

嬉しい。
デイダラに触れられた部分がやけに熱かった。


しばらく森をさ迷った結果、何も見つからずにいきなり雷が鳴りだした。

全くもってついてない。
これではデイダラの鳥が使えない。
もし雷が当たったらひとたまりもないからだ。

あたし達は帰る手段を失った。

「まずいな、どっか非難する場所ねぇかなぁ・・・うん」

2人してとぼとぼ歩く。


だけど神様はあたし達を見放さなかった。

いきなり女の人が現れたのだ。
「こんな嵐がくる前に歩いていては危険ですよ?」
女の人は心配そうに言ってくれる。


「はい・・・でも・・・」

帰れない理由を話せばその人は一晩ぐらいなら泊めてくれると言った。

その人の家は森の中の一軒家で辺りには誰も住んでいる気配はなかった。

「こんなところに住んでいて心細くならないですか?」

夕飯をごちそうになりながら女の人に尋ねた。

彼女はふんわり笑って
「ええ。全然。」
と言った。

あたしが、ありえないという表情を見せれば、彼女はクスリと笑う。

「だってここには木や花や草や鳥がいるでしょ?それだけで私は全然寂しくなんかないわ。」
女の人は幸せそうに言った。

デイダラはその人のことを
「森の妖精みてぇ・・・うん」
と言う。

すると彼女はいたずらっぽく笑って
「あら、口がお達者ねぇ」
と言った。


「ところであなた達は何をしに来たの?」
女の人が尋ねる。

「人探しです。」
あたしはハッキリそう答えた。
「ふーん。そうなの。」
彼女は興味なさげに相槌をうつだけで他には何も聞いてこなかった。

なんだか掴みどころがない人だ。

ふんわりしていて華奢で、でもどこか冷めているようなその人。

ふと隣にいるデイダラを見たら、彼女をひたすら直視していた。

タイプなのだろうか。



「よかったな・・・うん」

「そうだね。」

寝支度を整えながら今日1日を振り返る。

「なんか不思議だよなぁ〜こんなとこに住んでるなんて。」

「うん。」

「しかもあんな美人がもったいねぇよ、うん」

「そうだね。」

あたしがそっけない態度をとるので、デイダラも不思議そうに
「どうしたんだよ。」
と尋ねる。

「別に」

なんだかイライラしていた。

デイダラがその人のことを考えていると思うと腹が立つ。

そんな自分にもイラつく。


デイダラはため息をついて、とうとう話しかけなくなった。


「ごめん。」
やっぱり話しかけられなくなるのは寂しいので謝る。

デイダラはシュンとしているあたしの隣に座って
「お前の気まぐれなんて慣れっこだ・・うん」
と言って頭を撫でてくれた。

どこまでこの人は優しいんだ。

「あの人、キレイだよね。」

おぅ、とデイダラは頷く。
突発的なあたしの発言に彼は少し戸惑っているらしい。

ズキンと心が痛む。
痛いしイライラするし、この気持ちってなんなんだろう。

こんなの初めてだ。

「でもオイラは美里の方が可愛いと思うぜ、うん!」
彼は笑った。

「そんなの嘘だよ。ずっとあの人のこと見てたくせに。」
あたしは口を尖らせ、プイっとそっぽ向いた。

するとデイダラはあたしの顔を覗き込む。

「へぇ〜」
にやにやと笑うデイダラ。

いきなり顔が近くなり、たじろぐあたし。
「なっなんなの?」

「まさかヤキモチ?」

デイダラにそう尋ねられ、否定できない自分がいた。

「顔赤いし図星?うん」
頬をツンツンと指で指してくるデイダラ。

確かに頬が熱い。
しかもなんだか恥ずかしい。

その空気に耐えられなくなって気付いたらあたしはデイダラを押しのけ走り去っていた。
「バカ!」
と訳も分からず叫びながら。


「ハァハァ・・・」
息を乱しながら走って外に出た。

嵐の前の静けさか知らないが夜の森の中は怖いくらいの静寂を漂わせていた。

先ほどまではあんなに雷が鳴っていたのに。


息を静めるため、あたしは木の根元に座った。

外に出たのはいいものの、デイダラにどんな顔して会えばいいのか分からない。

「ふぅ・・・」
とりあえずあたしはため息をつく。

「あら、嵐が来るから外に出ちゃダメじゃない。」
どこからか声が降ってくる。

顔を上げれば今日泊めてくれる家主が立っていた。

彼女はあたしの隣に座り、
「まぁもう嵐は来ないけどね〜」
と言った。

彼女の発言に驚いたあたしは
「え!?」
と大きな声を出してしまう。

この静けさはただ単に嵐が過ぎ去った後だったみたいだ。

でも雷は鳴っていたが、嵐なんて来ていただろうか。


「なんだか嫌な予感がする・・・」
女の人は思いつめたように声を漏らした。

「え?」

「ふふ、なんでもない。」

彼女はすぐに何もなかったように笑うので、微かに湧いた疑問も泡のように消えた。


「それで、あなたはどうしてこんなところにいるのかしら?」ニコニコとした表情で尋ねられたのだが目の奥が笑っていない。

「えっと・・・ちょっと・・・」
なんだかわざわざ言うのも恥ずかしい。

デイダラにヤキモチ焼いてた自分が恥ずかしくて逃げてきた、なんて言えない。

「心配するじゃない。あなたみたいな女の子が1人で座ってると。」
声は穏やかなのに、彼女に冷たい視線を送られた。

「す・・・すいません」
彼女の無言の圧力であたしは謝らずにはいられなかった。


「彼と何かあったの?」
彼女は心配そうに尋ねてくる。
「あ、まぁ・・・はい。」
あたしは、たじろぎ頬を掻く。
女の勘はすごいと思った。

そして彼女は楽しそうに笑って「仲がいいのねぇ〜!」
と言った。

あたしはすぐさま首を横に振る。

「でも、好きなんでしょ?彼のこと。」

彼女の質問は単刀直入。
そしてその質問は、難題だった。

「分からないです。」

「自分の気持ちが?」

あたしはコクリと頷く。

確かにデイダラは好きだけど、それは恋によるものなのか。

それにあたしにはサスケという想い人がいるのに。

「あなた、彼の前ですごい楽しそうよ。」
思い詰めていると彼女は優しく笑った。

なんだかその笑顔を見ると癒やされるような気がした。

なぜか彼女の隣は暖かい。

不思議と彼女にはなんでも話せるような気がした。

サスケのことを話せば、彼女は昔の自分のことを語り出した。
「私はね、昔好きな人が2人いたの。あなたと同じように。
だけどすぐに分かったわ。
本当に好きな人が。」

「どうして?」

「その人といるとすごく楽しいし、ドキドキするの。もう片方の彼は優しくて、私のこと大切にしてくれたのになんだか物足りなかった。」

彼女はあたしを見て、真剣に言った。
「あなたに笑顔をくれる人と一緒になりなさい。」

あたしは彼女の瞳を見つめた後、黙ってうつむき、考えた。

サスケは大切だけど、デイダラは・・・。


彼女はあたしの頭を撫でて、優しく言った。
「もう分かってるはずよね。」
その撫でる手の優しさに、あたしは泣きそうになる。



そしてあたしは重大なことを思い出すのだった。

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