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Evidence
.
「うぁぁぁあ!!」

断末魔のような叫び声が部屋中をこだました。


しかしおかしい。

その声は目の前の男によるものだからだ。

あたしは至って何ともない。

ふと目を開けると、男の体中に草花がまとわりついていた。

その草花は男の首にも巻きついていて、呼吸が出来ないようだ。

「な・・・なんだこれ・・・はっ・・・」
苦しそうに男はもがいている。
その隙にあたしは男から逃げた。

「う・・・・・・。」

その直後うなり声をあげながら男は息をしなくなった。

なんなんだ一体。

この植物達はまるであたしを助けたみたいだ。


「ありがとう・・・。」

とりあえずあたしは、いまだ男に絡みつく植物にお礼を言った。

そしてその場を後にする。








それにしても、不思議なことは起こるもんだ。

奇跡が起きたのだろうか。


あたしはなんだか嬉しくなって意気揚々と廊下を歩いていたら

「あ、美里!」
芸術コンビと出くわした。

「もう任務は終わった。ずらかるぞ。」
サソリの一言で任務終了となった。


道中でサソリとデイダラにさっきの不思議な出来事を話した。
「すげぇなぁ〜うん。そんなこともあるもんなんだな」
デイダラは手を組んでうんうんと首を振った。

「もしかしたら天国のお母さんやお父さんが助けてくれたのかも。」
あたしは空を見上げて呟いた。
「おいおい、お前そんな乙女なキャラだったか?うん」
デイダラが指を指し、気持ち悪そうな表情をする。

「間違いなく乙女なキャラです」
あたしがぷいっと言ってのければ
「ありえねぇ、うん」
すぐさまデイダラに突っ込まれた。


「てめぇらイチャつくならよそでやれ。」

これまで一切話さなかったサソリが、我慢できないというように口を開いた。

そして彼は、怒りを沈めて話し出す。
「美里。お前がさっき言ってた、植物が助けてくれたって言うのは奇跡でもなんでもねぇ。お前の能力だ。」

サソリの言葉に、さっきの殺されかけた情景が目に浮かんだ。
そういえば死にたくないとギュッと目をつぶった瞬間、体の中から何かが湧き出るような感じがしたような。

「しないような・・・」


「何ブツブツ言ってんだテメェ。」
コツンとサソリがあたしの頭を叩く。

「まぁ分かんねぇだろうな。お前はまだその力を使いこなせねぇ。ただ使えるようになれば、ものすごい能力になる。」

あたしは叩かれた頭を抑えながら、サソリの言葉に聞き入っていた。


能力を使えれば、義父を倒せる。

そんなことを真っ先に考えているんだ。あたしの心は汚れてしまったんだろうな。









それからというもの、修行をしても任務に行ってもあの力は発揮出来なかった。


やはり危機的状況にならないと発揮できないみたいだ。

なので、そんな状況を作ってみようと思った。


「で、なんでオイラなんだよ」
嫌そうな顔で立っているデイダラが言った。

「こんなこと頼めるのデイダラしかいないから。」
上目使いで可愛く言ってみる。
デイダラは頭を抱えながら、
「だってもしかしたらオイラが殺されるかもしんねぇし、お前を殺しちまう可能性だってあるんだぞ?・・・うん。」
呆れた声で言った。

「それでも一か八かやってみたい。」

デイダラはため息をつく。
「はぁ〜やめとけよ。もっといい修行があるはずだ・・・うん」


なかなか乗り気じゃないデイダラにイラつき、あたしはつい怒鳴ってしまった。
「そんなんじゃいつまでたっても強くなれないじゃない!!」

あたしが怒鳴ればデイダラは驚いた表情を見せた後、少しだけ悲しい表情をした。

なので自然に口から謝罪の言葉がこぼれた。
「ごめん」

素直に謝れば、デイダラはそうじゃないと首を振る。
「いや、ただお前が焦ってるのを見て何も出来ない自分が嫌なだけだ。」

「気にすんな・・・うん。」



あたしはいつでもデイダラに甘えていたような気がする。

いつも辛いときには側にいてくれたのに、あたしは自分勝手な振る舞いばかりして・・・最低だな・・・。


彼が元気をなくすと、チャームボイントの丁髷まで元気がないようで、それは寂しげに揺れていた。

「これでもデイダラにはすごい感謝してるよ。」
俯くデイダラに告げた。

すると彼はこっちを向き、口角を上げる。
その顔はなんだか意地悪そうな顔で少し嫌な予感がした。

「だったらオイラにお礼でもしてくんねーかな」

「お礼?」

デイダラは腰を少しかがめて目線を同じにしたかと思えば、とんでもないことを言い出した。「キスでいいぜ?うん」

「は・・・?」

呆れて目が点になる。

デイダラはその体勢で目をつぶった。
あ、まつげ長い。ついそんなことを思いながらデイダラを見つめていた。
もちろんキスなんてしてやらないが。

そのまま彼は目を開ける。
そして顔を離した。

と思ったが不意打ちに頬にチュッとデイダラの唇が当たった。
一瞬、何が起きたか分からなかった。
呆然としているあたしの頬にデイダラは指でツンと押して、
「今日はこれで我慢してやるよ。」
意地悪く笑って言った。

そんなデイダラの肩にパンチをお見舞いしてやる。

「イテっ!」

「自業自得!」


唇が触れた場所が熱いだなんて多分気のせい。



まぁそんなこんなで楽しく修行・・・出来るわけもないのだが、とりあえず始めようとデイダラが言った。


「早く上に乗っかってあたしの首を絞めて!」
あたしは仰向けに寝っ転がりながら叫んだ。
デイダラはポリポリと人差し指で頬を掻きながら
「なんだかアブノーマルなプレイみてー。・・・うん」
と言った。

「しかもなんだかお前キャラ違うしよぉ・・・うん。」
よたよたとゆっくりあたしの体に跨るデイダラ。

彼は重くないように膝で立っていてくれた。

しかしやっぱり気が進まないからか、彼は首を絞めるのをためらった。

そんな彼にあたしは
「早く。」
と言って急かした。

デイダラはゆっくりと両手をあたしの首もとに持ってく。

そして首をしっかり掴み、その力はだんだん強くなっていった。

痛い・・・苦しい・・・


だんだん意識が遠のく。


・・・?

ふと体が熱くなって力が沸く。

「お・・・おい!」

デイダラの声がしてハッと目を覚ませば、デイダラの首に草花が巻き付いていた。

デイダラはすっかりあたしの首を離して、地面に四つん這いになり、苦しそうに息をしていた。

「ハァッ!ハァッ!」
息をするのもままにならないようなデイダラ。

草花は前と違って即死するような首の締めかたをしていないようだけど・・・

いや、冷静に観察をしている場合じゃない。

「もういいから止めて!」
あたしは念じるように叫んでみた。

こんなことで収まるか分からなかったけど。

だが叫んだ瞬間だんだん草花は締め付けるのを止めた。

ゆるまったのを見計らってあたしはすぐさま草を払いのける。
デイダラは失神してしまっていた。

そのまま彼を地面に寝かせ頬をパチパチ叩きながら、
「デイダラ!大丈夫!?」
と声をかける。

しかし彼は動かない。

「嘘・・・」

目を覚まさないデイダラをひたすらゆすった。
「ちょっと!起きてよ!お願いっ!」


「・・・うるせぇなぁ〜死んでねぇよ・・・うん。」

いきなりデイダラが口を開き目をゆっくり開けた。

「・・・。はぁ・・・」
ほっとして、あたしは胸をなで下ろす。

「まじで死ぬかと思ったけど、こんなことでオイラ死なねぇよ・・・うん」
デイダラはゆっくり起き上がり、ふぅ〜とため息を吐いた。


よかった。
死んじゃってらどうしようかと思った。

「しかしなんだこりゃ?変な術だなぁ・・・」

「分かんない。」

ホントにやっぱり自分でも不思議でしょうがない。
自由自在に扱える保証もないし。

「お前、コントロールしてたよな?うん」
デイダラはくりくりした目を向ける。

「え?」

「だってその証拠にオイラは生きてる。」

まぁ確かに。あたしが止めてって言わなければデイダラは生きてないってことだ。

少し嬉しくなってデイダラに笑いかければ、
「やっぱお前筋がいい!うん!」
と言って彼に頭を優しくなでられた。



ぽかぽかと心が暖かい。





さっきはデイダラが死にそうになってとても怖かった。

前まではそんな状況になっても、あそこまで焦らなかったはずだ。


デイダラに対して湧き上がった感情に、あたしは戸惑った。

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