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Evidence
蛇と蛙


あたしは玄関の扉を開ける。
そして靴を脱ぎ、居間に入った。

「おかえりー。」

母が夕飯の支度をしながら言った。

「ただいま。」


母は黙々と料理を作る。
いつもこんな感じ。

今日は何があったの?

とか

元気ないわね・・・。

なんて言われたことがない。


母はあたしに興味がないのだ。
ただ、バカの一つ覚えのように
「アカデミーは行きなさい」
と言う。

世間の目を
極度に気にしているから。


トントンとまな板を
包丁で叩く音が聞こえる。

今日は父が帰ってくる。

どうせ嫌みを言われるのだろう。

あたしの体が少し大きくなってから
肉体的により精神的に痛みつけるようになった。

言葉の暴力っていうのは恐ろしい。


夕飯の支度が出来、
それと同時に父が帰ってきた。

ガララと音がし、
玄関の扉が開き、閉める音がする。

足音が、だんだん大きくなる。

「おかえりなさい。」
そう真っ先に言ったのは母だった。

「ああ。」

父はそう言ってあたしの隣に座る。

ドキドキと心臓が鳴る。
まるで蛇に睨まれたカエルだ。

「お帰りなさい。お父さん。」
声を震わせながら隣をチラリと見る。

「ああ。」

父は一言そう言うだけだった。任務帰りで疲れているようだ。
そのまま無言で夕飯を食べた。

今日は何もないだろう。怒鳴られたり、ぶたれたり。





でも何より怖いのは存在を消されること。



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