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Evidence
別れ道


「じゃあ、サスケ。今までホントにありがとう。」
少ない荷物を持って玄関の扉を開ける。

もう辺りは真っ暗でこれなら余裕で、フジなんかに見つからずあたしは里を出られると思った。

これで天気もよくて星なんか見えたら最高なのに。

案の定、ポツリポツリと雨が降ってきていた。

後ろには見送りなんかしてくれるサスケがいて、チラリと振り向くと心配そうな顔をしていた。

それに苦笑いし再び前を見る。
玄関から一歩踏み出そうとした。


その時、ふと手を掴まれる。
もちろん掴んだ相手はサスケで
「え・・・」

どうしたの?と言う暇もなく後ろから抱きしめられた。




「サスケ?」

サスケの顔が見えない。だけどサスケの体の温度が、触れ合っている場所から伝わる。

あたしはそっとサスケの手をほどく。

そしてサスケと向き合って、今度はあたしの方から彼の首に手を回した。
サスケもそれに答えるように、あたしの背中に手を回す。

このとき、やっと自分の気持ちに気づいた。



あたしの心臓は激しく鳴っている。

「好きだよ、サスケ。」
自然に口から言葉がこぼれる。

サスケは何も言わないけど、同じ気持ちだってことは、抱きしめる腕の強さや心臓の鼓動で分かる。

離れたくない、サスケがそう言っている気がした。


「いつかまた、サスケには会える気がする。」

彼は腕を放し、あたしを直視して
「いつでも帰ってこいよ。」
と言った。

そんなこと言われると、すぐにでも帰りたくなる。



あたしはサスケの唇に軽くキスをした。

サスケは目を丸くしている。

自分でもなんでそんなことしたのか分からないけど、そうせずにはいられなかった。


今度はあたしが彼を強く抱きしめ、
「じゃあ、またね。」
と言ってから外に駆け出した。



雨が冷たい。

でももう、行くしかない。


もう、誰にも甘えられないんだ。







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