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Evidence
空気

「サスケー!ごはん!まだ?」

サスケが風呂から上がった直後、お腹がすいてたまらなかったあたしは我慢できず叫んだ。


「黙れ!テメーは人に頼りすぎだ!」

「だってあたしは料理作れないし。」


唇をとがらせて言うと、サスケは無視して準備をし始めた。

サスケは(意外にも)優しいからその程度で怒らないことくらい、分かっていた。
一緒に、同じ屋根の下で過ごしているからかな。


今日の晩御飯は、肉じゃがときんぴらごぼうと味噌汁という質素な食事。
しかし、サスケはどこで味付けを覚えたのだろうか。

下手すればあたしの義理母よりも美味しいと思う。

「サスケはいいお嫁さんになれそうだね。」
あたしは向かいに座っているサスケに、からかうように言った。

「ふざけんな。」
サスケはあたしを睨む。

「うそうそ。」
あたしは笑って言った。

こんな何気ない会話をしながら食べる夕食はなんておいしいのだろうか。


「こうやって、家でゆっくり誰かと向かい合いながら食べたことってなかったな。」
あたしは呟く。

サスケはちらりとこっちを向いたがすぐに視線を戻す。


ナルトは何してるかな。
ナルトはきっと今も家で1人で誰と会話するでもなく食べているんだろう。

あたしが居なくなったら、ナルトはまた一人きりなのかな。

夕食の後片付けも終わりのんびりする。(本当はやりたくないけど居候の分際なので茶碗ぐらいは洗う)

サスケは畳の上でクナイを磨いている。その隣に座って綺麗になっていくクナイを見つめていた。



これからあたしはどこへ向かうのだろう。
未来はどうなっていくのだろう。
たったひとりで生きていけるのだろうか?
今更、言いようもない不安や孤独が押し寄せてきた。

「・・・オレは急になにもかも失った。」
クナイを磨きながらいきなりサスケは口を開く。

「先のことが見えず苦しんだ。だが辛いのなんて最初だけだ。」
あたしは喋り続けるサスケをじっと見ていた。

「だが、だんだんオレのやらなくてはならないことが分かってきた。」

サスケと目が合う。

「お前はもう分かってんだろ?」

分かっている・・・。
分かっている。だけど。あたしはサスケみたいに孤独を受け入れられるほど、強くはない。

「1人きりは怖いよサスケ。」
あたしはサスケから目をそらし膝を抱えてうずくまる。

「お前が決めたことだ。里に残ることだってできたのに、お前は復讐を選んだ。」


「うん・・・。」

「復讐だ復讐だと自分にいい聞かせろ。孤独なんて忘れてしまうくらいにな。」


一言も、不安だなんて口にしていないのに。
サスケはあたしの心を読めていた。


サスケの服を、自然に握っていた。


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あきゅろす。
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