Evidence
アカデミー嫌い
このアカデミーは嫌いだ。
他の子は「友達ができる」とか、「一流の忍者になりたい」とかその他もろもろの理由で楽しくこのアカデミーに通っているみたいだけど。
「よお。相変わらずめんどくせー顔してんな。」
どんな顔だ。
こんな失礼なことを言うのは、隣の席のシカマル。
ま、隣の席だからか知らないけど俗に言う「友達」。
「ま、そろそろここも卒業だからな。」
シカマルはそう言ってイスに座り机に顔をうずめた。
そうか。そういえばもうすぐ卒業じゃないか。
卒業試験というのをクリアできれば、の話だが。
まあそんなものは簡単にあたしは合格するだろう。
アカデミーは嫌いだが勉強や修行は嫌いじゃないし。好きでもないけど。
「卒業」
その二文字が顔をほころばせる。
「シカマル。楽しみだね、卒業。」
寝ている彼につぶやく。
それに気づいたシカマルはめんどくさそうに起き上がり口を開く。
「そんなんどこが楽しみなんだよ。」
「だってここ来なくてすむようになるんだよ。それだけであたしは幸せ。」
「お前なぁ、卒業したら任務、任務、任務なんだぞ。オレはアカデミーにいた方が幸せだと思うけどなぁ。」
忘れていた。卒業することだけ考えてその後のことなんて何にも考えていなかった。
まあ任務はアカデミーよりは退屈でもなさそうだ。
それなりに報酬も貰えるんだしな。
「なぁ、美里。」
頬杖しているシカマルから視線が向けられる。
「なに?」
と言うと、
「お前親御さんと上手くいってんのか?」
シカマルが柄にもなく心配そうに尋ねるのでプッと吹き出してしまった。
それでもシカマルが神妙な面持ちをしているので明るく答えた。
「ちゃんと上手くいってるよ。あいかわらず鬼婆だけど。」
「いや、そっちじゃなくて・・・」
「"そっち"も大丈夫だから心配しなくていいよ。」
あたしは笑ってそう言いながら立ち上がる。
あたしはシカマルに背を向け席を立ち去ろうとした。
去る間際にあたしはふと振り返り
「心配しなくてももうあんな事しないよ。」
と満面の笑みを浮かべて言ってのけた。
本当は笑って言えることではない。
本当は大丈夫でもない。
早く一人前になって家から出たい。
それが、アカデミーを卒業したい1番の理由だった。
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