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そんな結末

ユアンが風邪をひいた。

そうユアンの部下がロイドとクラトスにわざわざ知らせにきた。
たかだか風邪くらいで旅途中の人間を探して報告するなんて暇もいいところだ、とクラトスは思う。
しかし事態は深刻なようだった。少なくとも彼等にとっては。

「四千年も生きていらっしゃる方に我々のような普通の治療で治るのかと…」

それで同じように四千年生きているクラトスの元に来たという訳だ。
そう言われてもクラトスも困る。何せ風邪などクラトスもここ数千年ひいていない。最後に寝込んだのはいつだったかすら思い出せない(除く、マナ解放後)。
仕方なくロイドとクラトスは仲間に断って、ユアンのいるベースへと向かう事にした。






「…何しに…ゴホッ…きた…」

ユアンはベッドの上で横になりながら、今し方部屋に入ってきた親子を睨みつける。迫力は無いが。

「お前の部下がわざわざ報告に来た」

クラトスは来た理由をざっと説明する。別に心配で来た訳ではない事を強調して。

「余計な事を…」

ユアンは毒づきながらもそれ以上何も言わない。文句を言う余力もないのだろう。ゼェゼェと苦しそうに呼吸をしている。
流石にロイドは心配になる。

「なぁ、大丈夫か?」

無駄でも薬飲んだ方がいいんじゃ…、と薬箱を漁る。
無駄とか言うな。確かに効かないかもしれないが。そんな文句を言う余力もユアンには(以下略)。

「人工的な薬は効かぬかもしれぬが、これなら効くだろう」

そう言ってクラトスが取り出したのは数種類の薬草だった。
それを見て熱によって赤かったユアンの顔が青くなる。

「い、イヤだっ…!」

「お前は子どもか」

「だって絶対に苦いだろう!」

ユアンは毛布を頭まで被って薬草を拒否する。
そこまでイヤか、とクラトスは溜め息をもらした。

「でもさ、飲んだ方が楽になるだろ?」

「…苦いのはイヤだ」

ロイドが促すがユアンは亀のように動かない。

「よく言うじゃん、ミョーヤクは口にニコチンって!」

「ロイド、それを言うなら良薬は口に苦し、だ」

「そう、それそれ!だからさ、ちょっとガマンして飲んじまえよ」

まるで幼子をなだめるようにロイドはユアンに薬草をすすめる。そんな息子を見て「なんて優しい子だ」と親バカが思った事は言うまでもない。
しかし、それでもユアンは梃子でも動かない。どこの駄々っ子だ。

「じゃあさ、ハチミツとか入れて甘くするとか」

甘く、と言う言葉にベッドの上の塊がピクリと動く。
それを見逃す親子ではない。ここぞとばかりにソコを突く。

「フルーツも加えてミックスジュースのようにすれば多少は飲みやすいか」

「ビタミンも取れて一石二乗だよなっ」

「一石二鳥、だ」

そんな親子のやり取りを聞きながら、ユアンはようやく毛布から顔を出す。
そして…

「それならば…飲む…」

あっさりと落ちたのだった。



「それで結果はどうだったのかしら?」

とある宿の一室でリフィル、その向かいのソファーにロイドとクラトスが座っている。

「もうスゴかったんだぜ。人の顔ってあんなに青くなるんだなぁ」



薬草を煎じ、それにフルーツや蜂蜜を加えた結果は、言うまでもなく凄まじい臭いだった。明らかに薬草のみで飲んだ方がマシだ。
しかし蜂蜜やフルーツを混ぜる事を希望したのはユアンだ。責任を持って飲んで貰わなければならない。
あまりの臭いに暴れるユアンをクラトスが羽交い締めにし、ロイドが口に薬(という名の異物)を無理矢理流し込んだ。
それを飲み込んだユアンは顔を真っ青ににしてベッドに沈んだ。もとい気絶した。

「あの薬草のせいだとは思いたくないものだがな」

「そんな事はないハズよ。確かに人で試すのは初めてだったけれど」

実はリフィルは珍しい薬草を数週間前に手に入れていた。それをネズミや危険性の低いモンスターでその効能を試していたのだ。しかし人は好奇心には勝てない。リフィルは人できちんとしたデータを取ってみたかったのだ。
そこで絶好のチャンスが舞い込む。それが風邪をひいたユアンだった。
哀れ青髪の天使はリフィルの実験台に選ばれてしまったという訳だ。アーメン。

「一応コレが飲んだ後の状態とヤツの血だ」

クラトスは報告書(?)と採取したユアンの血液の入ったパックをリフィルに手渡す。
それを受け取ったリフィルは嬉々として、解析をするために自室へと戻っていった。

「なんかユアンに悪い事したなぁ…」

心根の優しい少年は犠牲となった天使を思い返して、少し罪悪感を覚える。そんな息子を親バカは(以下略)

「まぁこれで明日1日はのんびり出来る」

1日中ロイドどいちゃついたりいちゃついたりいちゃついたり出来るのだ。その為なら旧友を犠牲にする事など、これっぽっちも厭わない。

「今度はちゃんと見舞ってやろうっと」

その今度はいつになるやら。
だがクラトスは、そうだな、と同意した。






あの殺人的な薬(という名の異物)を飲まされたユアンは、次の日の朝には全回復していた。昨日の熱やだるさが嘘のようだ。

(あの薬草の効力か…?)

認めたくない。認めたくはないが、すっかり体調がいいのは事実だ。なのに素直に喜べないどころか、薬草を飲ませた親子に感謝も出来ない。

(あまりにも理不尽すぎるだろうっ…!)

しばらくユアンはベッドの上で、おおぅ…、と頭をかかえて唸るのであった。



END



5300HITのキリ番リクです。
グリル様に捧げます。
すみませ…楽しく絡むの楽しいがいずこかへ消えまし、た…orz
こんなのでも少しでもお気に召していただけたら感激です。
リクエストありがとうございました!
返品はいつでも受け付けしております(笑)





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