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あなたしか見えない!
「クラトス…」
「なんだ?」
「へへっ、呼んだだけ」
「フッ…そうか」

以下延々と続く甘い会話。旅の間ずっとこうなのだから仲間達もいい加減慣れてきた(決して嬉しいことではないが)

「ロイド」
「ん?何?」
「呼んだだけ、だ」
「っ…もー、クラトスのバカ…(赤)」

前言撤回。むしろ慣れたくもない。各々心の中で溜め息をつきながらも、黙々と街を目指す。
むしろ本当の戦いはここからなのだ……






宿を取った一行はクラトスとロイドの動向に目を光らせる。この街は武具だけではなく細工の技術も高レベル。そんな街にロイドが興味を示さない訳がなく、そして夜に可愛い息子をその父が一人で出歩かせる訳がない(最初からべったりだが)だから二人一緒に出掛ける。それはいい。ただ一般的に見て度が外れ過ぎているのだ。
手を繋いだり腕を組むのは当たり前。ただでさえ男同士でこの行動はイヤでも人の目を引くのに、下手をしたら道の往来で二人だけの世界を作り上げ愛を囁き合う。
そんな彼等の仲間だということで奇異の目をむけられるのは勘弁願いたい。大体何故自分達が安らげるはずの街で居心地の悪い思いをしなければいけないのか……
だから全力で阻止する。自分達の平穏の為に。






「クラトス早く早く!」

はしゃぐ息子に苦笑しながらもクラトスは早足でその方向にむかう。そして自然に愛する息子の手を握った。

「あまり離れると迷子になるぞ」
「オレもうそんな子供じゃねぇよ!…でも、手繋げるのは、嬉しい」
「ロイ――「あ、ロイドにクラトスさん!」

突然甘い空気をさらっていったのはジーニアスの声。

「さっきそこで飴貰ったんだ」

だからお裾分けと言ってロイドにいくつかの飴玉を手渡して去って行く。
別に今渡す必要は無いだろうと思いながらも、何事もなかったように二人は繁華街へと足を向けた。
しかしロイドが「この指輪キレイだなぁ」と言ったのを聞いてクラトスがロイドの左薬指にはめようとした瞬間、ゼロスがその指輪を横から奪って購入。さらに屋台で買ったたこ焼きをロイドがクラトスに食べさせようとすると、リーガルが串を持ってくる。おまけに「これで口を」と、ナプキンまで用意して。
流石にここまでされて気付かない程クラトスは鈍くない。明らかに邪魔をされていると感じたクラトスは、今日はもう遅いからという理由で二人仲良く宿へと戻った。





「俺様もぉムリぃ〜…」
「右に同じくだよ…」

あの後二人が宿の部屋に戻った事を確認してから、皆宿の談話スペースに集まった。
おかしい…街には休養する為に来ているのに、何故野営した時以上に疲れているのだろう。

「ちょっといちゃつくのをガマンしてくれたらいいだけなのに…」
「そうですね。それによって私達の心労も62%は軽減されます」
「なるほど、だからあの様な事をしたのか」

いるはずのないと思っていた人物の声に全員が凍り付いた。もしかしたらロイドとのデートを邪魔された腹いせに裁きの光を雨と降らせるかもしれない。全員身構えて術の発動に備えた。
―――が、いつまで経ってもクラトスからの裁きはない。恐る恐るクラトスの方に視線を向けると何やら考え込んでいる。

「ん?どうしたんだ、みんな?」

気まずい雰囲気がロイドの明るい声で一掃された。ちょうどいいとばかりにクラトスはロイドに詰め寄る。

「ロイド、今日から外で腕を組んだりするのはやめよう」

まさかのクラトスの発言に仲間達は一瞬恐ろしさを覚え、ロイドは絶望の表情を浮かべていた。
クラトスが慌てて説明に入る。

「男同士で腕を組んだり等は一般からしてみたら奇異の対象に他ならない。私はお前がそんな目で見られるのは…辛い」
「…それって、逆にクラトスも変な目で見られるってことか?」

そんなのヤダ!ロイドの気持ちはストレートでわかりやすい。

「だからこうしよう。街中での移動ではあまり構ってやれないが、その分宿でたっぷり愛してやる」

その場の空気が一瞬凍り付いた。それは仲間達だけではなく宿全体に広がっている。
ここは宿に泊まる人達が集まる談話スペース。もちろん他にも宿泊客はいる。つまり……

(き、聞かれて……)

迂闊であった。何故人が集まりやすい場所を選んでしまったのか。何故クラトスの存在に気付かず話してしまったのか。色々と後悔が押し寄せてくるが既に後の祭りだ。
当の問題二人は甘い空気をばらまきながら部屋へと戻って行った。
そして残った仲間達に注がれる、何か聞きたそうな視線の数々…


仲間達は思った。
ここであの二人を見捨てて今すぐこの街から逃げ出しても罰は当たらないんじゃないか、と……




END




"周りを振り回す仲良しなクラロイ"でしたが、無理矢理仲間を振り回した感が否めない作品で申し訳無いです。
もっと文章を勉強せねばですね…(土下座)
リクエストにちゃんと応えられているかわかりませんが、真夜様に捧げます。
本当に有難うございました!





あきゅろす。
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