クリスマスプレゼント
「くしゅっ…!」
アイテム補充の為に入った道具屋から出た途端、ロイドはくしゃみをした。
それを一緒にいた父親が見逃すはずは無い。
「大丈夫か?ロイド」
「ん…へーき」
昼間、太陽が出ている間はまだ幾分か暖かいが、それが傾き始めると最近は一気に冷え込む。この日は曇りがちだったから余計だ。時折吹き抜ける風も寒さを増長させていた。
それでも、所々露出している彼の服に比べれば、ガッチリ着込んでいる自分はいくらかマシなのだろう、とロイドは思う。
「今日はさっむいなぁ…」
「昨日も同じ事を言っていたぞ?」
寒いもんは寒いんだよ、とロイドは荷物を抱え直しながら身をすくめた。
「クラトス早く帰ろうぜ」
ロイドがそういうと、クラトスは店の並ぶ方向へ歩き出した。
そっちは宿と反対じゃん、と文句をいいつつ、ロイドはクラトスの後を追いかける。
そして、クラトスは雑貨屋の扉を開いて中へ入った。
「…へ?」
そこはどちらかと言うと若い女性向き、強いて言うならコレットやしいな達にはぴったりな店だ。間違ってもクラトスが入るような店ではない。しかしクラトスは何の迷いもなくその店に入っていった。
ロイドは店の前でどうしようかと考える。クラトスに付いて入るべきか。しかし如何せん恥ずかし過ぎる。そもそも何故クラトスがこの店に用があるのかがわからない。
そうやってロイドが悩んでいる間に、クラトスが店から出てきた。
「ぁ…も、もういいのか?」
「あぁ」
そっか、とロイドは息を吐く。店に入らずに済んだ安堵感から出たものだ。
同時にクラトスの手にある荷物が気になり始める。可愛らしくラッピングされたソレは、とても彼に似合わない。
もしかしたらコレットにでも買い物を頼まれたのかもしれない。それともクラトスにはそういう可愛らしい物を集める趣味でもあったのだろうか。それはそれでイヤだ。
「なぁ…何買ったんだ?」
気になって気になって仕方がないロイドは、荷物を見つめたままクラトスに尋ねる。
するとクラトスはロイドにその包みを渡した。
「へ?」
「お前にだ」
うっかり受け取ってしまい、ロイドはすっとんきょんな声を出す。
「…コレ…俺の?」
クラトスと包みを交互に見つめるロイドをよそに、クラトスはほんの少しだけ頬を緩ませて頷いた。
「気になるのなら開けてみなさい」
クラトスはそう言うと、ロイドの持っていた買い出しの荷物を代わりに持つ。
ロイドは少し迷ったが、気になるものは気になるので包みを開けてみる。キラキラしたものやフリフリした物が出てこない事を祈りながら。
しかし、出てきた物はロイドの予想とはかけ離れた物だった。
「これ…マフラー?」
暖かそうな落ち着いた赤い生地に細かく白のチェック模様が入っている。どうやら男女兼用のようだ。
「1日早いが、クリスマスプレゼントだ」
「っ?!」
もしかして、とロイドは思う。
「コレ、前から…?」
迷わず店に入ったのも、入ってすぐに出てきたのも、前々から用意していたとしか思えない。
ロイドがそう言うと、クラトスは賢い子だ、と笑った。そして、前日にこのマフラーを見掛けて、ロイドに似合うかもしれないと、店の人に取っておいてもらったという事も白状した。
もちろん、クリスマスに渡す予定で。
「だが、先に風邪をひいては意味が無いからな」
クラトスは買い出しの荷物を足下に置くと、マフラーを取り、ロイドの首に巻き付けた。そして、にっこりと微笑む。
「やはり、よく似合っている」
見立て通りだと、クラトスは満足気だ。
ロイドはしばらく目をパチパチさせていたが、すぐに顔をほころばせてクラトスに抱きついた。
「ありがと、クラトス!」
嬉しいのと暖かいのと幸せなのとがロイドの心と体を満たしていく。
そんなロイドを見て、クラトスも嬉しい気持ちになる。
「ほら、もう宿に戻ろう」
さっきよりも冷えてきた空気にクラトスは言う。
ロイドは頷いて足下の荷物を抱えた。クラトスももう一つの荷物を抱えて歩き出す。
「あ、俺プレゼント何も用意してない…」
サプライズだったとは言え、貰いっぱなしはイヤだった。だが今から用意するには時間も時間だ。それに帰りが遅いと他のメンバーが心配する。
しょぼん、と落ち込んだロイドに苦笑しつつ、クラトスはロイドに顔を近づけた。
「クラトス?」
「――――――…」
「なっ?!」
耳に囁かれた言葉に、ロイドは顔を真っ赤にする。
「プレゼントはそれで構わぬぞ」
無理強いはせぬがな、とクラトスは楽しそうだ。
ロイドは顔を真っ赤にしたまま叫んだ。
「く、クラトスのバカっ!」
その夜、ロイドからのプレゼントはちゃんとクラトスに渡されたらしい。
Merry Christmas!
END
ロイドからのプレゼントってなんだろな!
父さん何言ったのかな!
オイラも気になる!←をい
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