Heat up
気持ち悪い…
そう感じてロイドは目を覚ました。
空調の利いた部屋は心地いいハズなのに、体はいやにダルく吐き気までしそうだ。
そもそもロイドは、アルタミラのビーチで仲間達と遊んでいたハズだった。しかし、今いるのはどう見てもホテルの一室、しかもベッドの上だ。
(オレ…どうしたんだっけ…?)
浜辺で砂の城を作っていたのは覚えている。なかなかの出来映えで(砂で作ったとは思えない程でギャラリーまで出来ていた)クラトスにも見せたいな…と思った所で記憶は飛んでいた。
もしかして、と思った瞬間、部屋のドアが開く音がして、ロイドはそちらへと視線を向けた。慣れた気配だ。すぐに誰かはわかった。
「大丈夫か?」
「クラトス…」
クラトスはロイドの首の後ろに、タオルで包んだ氷嚢を差し入れた。
その冷たさが気持ちよく、ロイドはホッと息をついた。
「熱中症だ。水分も摂らずに遊んでいたのだろう?」
「ぅ……」
確かに城造りに夢中で、休憩もとっていなかった。
「ごめん…」
しゅん、とロイドは視線を落とす。
そんなロイドに苦笑しつつ、クラトスはロイドの傍らに座り、タオルで汗を拭っていく。
時々触れるクラトスの指が、ロイドには心地良かった。
「すまなかった…」
「へ?」
倒れたのはロイド自身の管理能力が甘かったせいであり、クラトスは何も悪くない。
ロイドは、なんで?と首を傾げた。
「側についていたら、こんな事にはならなかった…」
ロイド達がビーチで遊んでいる間、クラトスは別の街に買い出しと剣の手入れに行っていたのだ。以前に一緒にビーチにいた時、小さな子どもに「コワイ」と言われて傷付いたからとか、そんな理由ではない。決して。多分。
「あんたのせいじゃないって…」
ロイドは苦笑しつつ、クラトスの手に顔を擦り付ける。
「倒れたのは自己管理出来なかったオレのせいなんだから…」
だから、自分を責めないで欲しい。
そう伝えると、クラトスは、わかったと、静かに頷いた。
それに満足したロイドは、満面の笑みを浮かべたのだった。
「あーあ、でもおっしぃなぁ…」
「何がだ?」
突然残念そうに呟くロイドに、クラトスは聞き返す。
するとロイドは、だってさ、と続ける。
「あの砂の城、オレの粉砕の作だったんだぜ」
「……粉砕ではなく、渾身だろう」
粉々にしてどうする。元は粉々の砂だが。
クラトスがそう言うと、ロイドは、そうそうコンシンなと、へらっと笑った。
それにクラトスが頭痛を覚えたのは言うまでもない。
「クラトスにも見せたかったのにさ…」
残念そうなその言葉に、クラトスは微笑んでロイドの頭を撫でる。
「ちゃんと見たぞ。素晴らしい出来だった」
思わぬクラトスの返答に、ロイドは目を丸くする。
「何で?」
あの時クラトスはいなかったはずなのに。
「街から戻るとビーチの方が騒がしかったから少し覗いてみたのだ。そうしたらお前が一生懸命城を作っているのが目に入った」
「み、見てたのかよ?!」
「素晴らしいな、と思った瞬間、お前が倒れた」
「ぁ……」
少々気まずくなった空気の中、ロイドは、そういえば、とクラトスに疑問を投げかける。
「じゃぁ…ここに運んでくれたの…クラトス?」
それにクラトスは静かに頷いた。
「そっか…」
サンキュ、とロイドは嬉しそうに笑う。
きっと倒れた瞬間、大慌てで自分の側に来たのだろう。
思いっきり心配をかけてしまった事も安易に想像できる。
でも、そんな風にクラトスが自分を想ってくれている事が、ロイドは純粋に嬉しかった。
「少しは楽になったようだな」
ロイドの表情を見て、クラトスは症状が良くなったと判断したようだ。
確かに、目が覚めた時よりは大分マシだ。だけど…
「クラトス…」
ロイドはクラトスのマントを引っ張って、顔を近づけさせる。そして、疑問符を浮かべるクラトスを無視して、ちゅっ、と軽く口づけた。
「…ロイド?」
「助けてくれたお礼のちゅー♪」
それから、とロイドはもう一度クラトスに口づける。
「心配かけてゴメンのちゅー」
あまりにも可愛らしい行動に、クラトスも自然と笑みがこぼれる。
そして、今度はクラトスからロイドに口づけた。
「次は必ずお前の側にいる、誓いのキスだ」
ロイドは、きょとんとしながらも、にっこりと笑う。
「じゃあ、誓われましたのちゅー♪」
楽しくなってきたのか、何かにつけて親子はキスを繰り返していく。
約束を守ります、のちゅー
無茶はしません、のちゅー
愛している、のちゅー
オレも、のちゅー
心配して様子を見に来た仲間の一人がその場面にバッチリ遭遇し、静かにドアを閉めた後、ドアに「立入禁止」の紙を貼った事を二人は知らない。
END
暑いのに更に暑苦しい親子でゴメンナサイ。
「仲間の一人」は好きなキャラを当てはめて下さい。
と言いつつ、多分9割がゼロスを当てはめるに1票(笑)
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