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聞こえる?

それは見慣れた光景。
でも慣れたくはない。


クラトスが女の人に囲まれているところなんて。


身長があって、見目もよくて、クールな雰囲気。近寄りがたさがあるものの、女性は強しか、街に出れば多くの視線と掛かる声。
そりゃ、息子としてはカッコいい父親は誇らしいし、同じ男としては羨ましいことこの上ない。

でも…

恋人としては

非常に面白くない

クラトスは優しいから、寄ってくる女の人を邪険に扱ったりもしない。
かといって、クラトスはオレのだって引っ張って行くのも子ども過ぎてイヤだ。
だから、こうしていつも少し離れた所で、ほとぼりが冷めるのを待つしか出来ないでいる。
宿に着けばイヤっていう程構ってもらえるのに。
いっぱい抱きしめ合って、いっぱいキスして、いっぱいクラトスを独り占めできるのに。
それでもオレの気持ちは貪欲で。

クラトスに触るな
クラトスと話すな
クラトスを見るな

クラトス…クラトス…クラトス…クラトスクラトスクラトスクラトス…!

クラトス、オレだけを見て…!

「ロイド」

暗い思考に捕らわれていたオレに温かい声が響く。同時に体にも廻る温もり。
クラトスに抱きしめられているのだと気付くのに、少し時間がかかった。

「クラト、ス…?」

少し離れた所(クラトスが女の人に囲まれていた場所だ)から、ざわめきが聞こえる。
その声でようやく状況を把握したオレは、とりあえずクラトスの腕から抜け出そうと暴れた。

「あ、あんた何やって…!」

でもクラトスはオレを離そうとしない。むしろ抱きしめている腕に力を込めて、さらにオレを押さえ込む。
もうオレの顔は真っ赤で、頭の中もぐちゃぐちゃで、少しパニックを起こしそうになっていた。
そんなオレに、クラトスは優しく言葉をかける。

「お前が、私を呼んだのだろう?」

え?とオレは目を丸くした。
クラトスの事を考えていた。側にいて欲しくて心の中で何度も叫んだ。でも口に出して言った覚えはない。
驚きで大人しくなったオレから少し体を離し、クラトスは優しく微笑む。

「確かに聞こえたぞ?"オレだけを見て"とな」

「なっ…?!」

何で?!クラトスはオレの心が読めるのか?!
困惑しているオレに、クラトスはくすくすと笑う。

「私には聞こえた」

どんな小さな声でもな、って。
無意識に零していたのだろう、って。

自分でも気付かない位、小さな囁き程度の音だったに違いないのに。

「天使聴覚であってもなくとも、私はお前の声を聞き逃したりはせぬ」

そして、独りにしてすまないと、クラトスはまた抱きしめてくれた。
人がいっぱいいるのに、さっきまで見られているのが恥ずかしくて仕方がなかったのに、今はそんなの全然気にならなかった。
クラトスが気付いてくれたのが嬉しくて。
どんな小さな声でも聞き逃さないと言ってくれたのが嬉しくて。

オレは、小さな小さな声で、ありがとうって言って、クラトスを抱きしめ返した。
そしたら、当たり前の事だ、って返してくれて、もっともっと嬉しくなった。

「ロイド」

「何?」

「どんな小さな声でもいい。どんな時でもいい。何かあれば、すぐに私を呼んでくれ」

すぐにお前の元に駆けつけるから。
さっきの様に。

あぁ、もう、嬉しすぎて、オレ、どうにかなっちゃいそうだ。

言葉にするのももどかしくて、オレはいっぱいいっぱいの想いを込めて、クラトスにキスをした。




END



ベタです。
甘甘です。
自分が砂はきそうです←
たまにはお約束的なネタもいいですよね。
(普段特殊なネタを書きすぎである)



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あきゅろす。
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