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Flower -君を飾る花-

「明日1日は自由行動にしましょう」

昨夜、突然リフィルが誰の断りもなく言い放った。
理由は明白。この街の外れで新しく遺跡が発見されたのだ。遺跡マニアのリフィルがこれに食い付かないハズがない。
これでも今すぐ飛び出しそうな姉さんを抑えたんだよ、とジーニアスの顔には疲労が見て取れた。



そんなこんなで、この日は各々朝から自由行動だ。
クラトスとロイドはノイシュを連れて街から少し離れた森へと来た。
そこは4000年前に王都があった場所、クラトスの故郷だ。今は深い森に被われていて影も形もないが。
以前にも二人はここに来たことがあった。その時ロイドは「また来る」とクラトスの両親(ロイドにとっては祖父母だ)に告げていた。
そして自由行動が出来る今日、久々にこの地を訪れたという訳だった。

「気持ちいーな!」

風は少し冷たかったが、その分木漏れ日は柔らかく暖かい。散策するにはちょうどいい気候だ。

「じーちゃん、ばーちゃん、久しぶりだな」

ロイドは木の根元に花束を置いた。祖父母の正確な墓の位置はわからないが、前に来たときにクラトスが花束を供えたその場所が何故かしっくりくるような気がしたからだ。
クラトスを見れば目を瞑って黙祷を捧げていたので、ロイドも同じように黙祷を捧げた。



「なあ、ちょっと奥まで行ってみようぜ」

この前は花を供えた後、すぐに宿に戻った為この森の全体を把握出来なかった。上からレアバードで見た限りではあまり大きくなく、ガオラキアほど深い森でもなさそうだ。迷う心配もないだろう。
クラトスは頷くとロイドの手をとった。
それにロイドは、にへっ、と嬉しそうに笑ったのだった。

「なあなあ、お城ってどの辺にあったんだ?」

ウキウキと好奇心を全開にしてロイドは森の奥へと歩みを進める。所々に他では見られないような珍しい植物も点在していたので、ロイドの興味は尽きないようだ。

「地形も変わって目印もないからな…」

流石にクラトスもこれにはお手上げとしか言いようがない。
だがロイドはさして気にも止めず、そっか、と言いクラトスに寄り添った。

お城の位置なんか本当はどうでもいい。
こうしてクラトスと二人だけで(ノイシュもいるが)、誰もいない、誰も知らない場所でゆっくりできるのが嬉しい。

再び、にへっ、と笑うロイドにクラトスも微笑み返した。しばらくそうやって歩いていると、風に乗って甘い香りが漂ってきた。果物にしては、甘いのに爽やかだ。おそらく花の香りなのだろう。
今まで嗅いだことのない匂いにロイドは興味をそそられる。
そちらへ行こう、とクラトスの腕を引っ張る。が、クラトスは動かなかった。

「クラトス?」

ロイドが見上げるとクラトスは驚いたような表情をしている。普段表情を変えない彼にしては珍しい。

「どうかしたのか?」

その声にクラトスはようやくロイドに視線を合わせた。いまだに少し驚いた表情はしているが。

「…少し、確認したい」

クラトスはそう言うとロイドの手を引いて香りのする方へと歩みを進める。
元よりその香りが気になっていたロイドは何も言わずクラトスについていく。しかし今はクラトスの態度の方が気になった。

(確認…って事は、クラトスは何か知ってるのか?)

ただ、知っているというだけであの驚き様は普通ではない。
着けばわかるのだろうか、とロイドは何か聞きたい衝動をぐっとこらえる。
それ程、クラトスの表情は真剣だった。



森の奥まった所まで進むと、急に視界が開けた。そこは今までの木々ばかりの風景とは一変し、淡い青色をした花の絨毯に覆われていた。

「すっげ……」

初めて見るその光景にロイドはただ感嘆の声をあげるしかない。
よく見ると青の花弁は、光の加減によっては虹色に輝いているようにも見える。香りの元もこの花で間違いないようだ。

「すっげーキレイだな!」

なっクラトス!とロイドはクラトスを見た。瞬間息を飲む。

茫然と花畑を見ているクラトスの表情が
今にも
泣きそうに見えた

「…クラトス…?」

声をかけてから、ロイドはしまったと思った。
案の定、クラトスはハッとした表情になりロイドに視線を向けた。

「…すまない」

何をあやまる事があるのだろうか。クラトスの邪魔をしまったのは自分だ。そうロイドは首を振った。

「…この花、クラトスは知ってるのか?」

あんなに思い詰めた表情をするくらい重要な花なのだろうか。
そんなロイドの問い掛けにクラトスは優しく微笑み、ゆっくりと口を開いた。

「この花は私の国の花だった」

「国の花?」

「国花と言ってな、4000年前の時代はその国や都を象徴する花があったのだ」

今はもう無くなってしまった風習。
時代の流れと言えばそれまでだが、ロイドはどことなく寂しい感じがした。

「不思議なものだな…てっきりもう絶滅してしまったと思っていた…」

「…きっとさ」

「ん?」

「きっと、じーちゃんとばーちゃんが父さんのために咲かせてくれたんじゃねーかな」

突然この子は何を言い出すのか。
目を白黒させるクラトスにロイドは笑顔で答える。

「"おかえり"ってさ…」

そんなハズはない、とクラトスは言おうとして思いとどまる。
何となくそう感じられるのだ。
これがロイドではなく、他の者だったらこうは思わなかっただろう。

「そう、か…」

「そうだよ、きっと」

では、ちゃんと挨拶をしなければ。

「ただいま…父上、母上…」

それに応えるように、優しく花びらが舞った。



END



思ったよりシリアスになってしまった…
クラトスの両親の呼び方に少し悩みましたが、いい家の出っぽいのでアレに落ち着きました。
本当はもっとイチャイチャさせたりギャグもいれたかった…!



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