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YGO短編
乙女の作戦 planA※
※ジャッカリ・遊アキ要素アリ注意




「「はぁー…。」」

カップルが目立つ店内で女三人が背中を丸めてため息をつく。
傍からみれば変人の集まりにも見えるかもしれない。けれど当事者からしてみればそんなことに気を回していられる状況ではなかった。
日々悶々とした気持ちを抱える彼女たちが女子会という名目ストレス発散のためにでこのカフェに集まった。
噂の可愛い装飾で彩られたカフェがあり、メニューもかわいいくておいしいと聞いた彼女たちは今日という日を心待ちにしていたのだが、店内に入って周りを見渡せば男女のペアが多いこと多いこと。
それが彼女たちをより一層冒頭の状況へと追い込んでしまったのである。

「こんなにカップルが多いとは…。」

「まさしく“傷口に塩”って感じ〜…。」

「曜日も相まってるのかしら…。」

そう、本日は日曜日。平日ならまだしも、休日は混むのは当然と言える。こんな可愛いお店ならなおのことだろう。
リリーとカーリー、そしてアキの三人は予想できていなかったわけではないが、それを上回るものがあったため色々と消耗してしまっていた。

「お待たせいたしました。」

ウェイトレスがそれぞれが注文したものを運んできてくれた。
お礼を言って受け取る。リリーは自身の注文したカフェラテに口をつけた。

「…おいしい。」

二人もそれぞれ違うものを注文したが、同じようにおいしいと好感触を示していた。
それから女子ならではの話に花が咲き始めた。一見共通する部分が無いようにも思う三人だが一つだけそれがあるのだ。

「今日のジャックもかっこよかったなぁ〜。」

「二人を見てるとなんだか夫婦に見えてくるよ。」

「えぇー!もうリリーってば上手なんだからっ!」

「幼馴染のリリーこそ夫婦みたいよ。お互いわかり合ってる空気が羨ましいわ。」

「そ、そうかな…?昔から一緒にいるせいで向こうには全く意識されてない気がする…。私はアキと遊星のほうがムードあって好きだなぁ。」

「き、気のせいよ…っ!そもそも遊星はデュエルとDホイールで頭がいっぱいなのよ。私が入る余地もないぐらい…。」

三人とも顔を赤くさせながら各々の事情を話していく。
私を含め三人とも共通して“好きな人がいる”。
それだけではよくあることで済ませられるかもしれない。
しかし私達の想う先にいる人物は皆、完璧なまでの“デュエリスト”ということに少々頭を悩ませていた。
“デュエリスト”であることにはなんら異議はないのだが、あまりにもそちらしか興味の色を見せないためこの想いはいつだって宙ぶらりんのまま私達の心に住んでいる。端的に言えばにデュエルとDホイールが羨ましいということだ。
まさか“人ではないもの”にやきもちを焼いてしまうとは、と色々な意味でショックを受けている。
そして今回は女子会という名の「慰め会」のようなものでもあった。

「どうやったら振り向いてもらえるんだろう…。」

半分ほどに減ったカップの中身をじっと見つめながら、思わず本音がポロリと出てしまった。
しかしほかの二人も全く考えていなかったわけではないらしく、じっと自身のカップを見つめていた。

「あ、そうよ!イメチェンとかどうかな!?」

勢いよく立ち上がったカーリーは名案だと言わんばかりに前のめりになる。
私とアキはよくわからないままオウム返しで言葉を返した。

「そう、イメチェン!普段見慣れてない姿で会うの!ギャップよ、ギャップ!」

*****************

「大丈夫?変、じゃない…?」

お店の鏡を前にしてチェックしている私の後ろで、カーリーとアキは立っていた。
恐る恐る感想を聞くと二人とも満面の笑みで親指を立てる。
ほっと胸をなでおろす。これで三人分のドレスが揃った。
それぞれちょうどいい配色のドレスがあって運が良かった。
少し時間を遡ってカーリーが提案し始めたころを思い出す。

「パーティ?」

私もアキも顔を見合わせる。事態をうまく理解していなかった。

「そう!偶然にも取材先のご好意でパーティの招待状をもらっちゃったの!」

嬉々として話す彼女の話を要約すると、普段着ることのないドレスで各々をあっと驚かせてやろうという作戦らしい。
そしてお披露目をするのはパーティ会場で、とのことだった。

「ま、待って…私そのパーティ関係ない人間だけど行ってもいいの?」

「だいじょーぶ!私の友達ならオールオッケーなんだから!」

「私踊れる自信がないのだけど…。」

「遊星なら優しくエスコートしてくれるから!」

やる気満々といった感じですでに燃えているカーリーを尻目に私とアキは再び顔を合わせる。
その視線はほんとに大丈夫だろうか、という不安。

「というか、遊星たちも誘うんだ…。」

「当然!じゃないと意味ないでしょ!」

こういうときの前向きな彼女の姿勢は尊敬するが、それでもいくつか不安要素が残っていた。
しかし彼女がせっかくやる気になってくれているのだし、これで少しでも状況が好転すればいいと私達は思った。

そんなわけで先ほどまでパーティドレスを選んでいたのだが、ドレスが決まったのはいいが今更になって不安になってきた。
普段あんな華美な格好をしたことがないし、ああいうところは場慣れもしていないのだ。
やっぱり今からでも…と脳裏に過るもカーリーの顔を思い出しては拭い去る、というジレンマが続いている。

「じゃあ二人とも、パーティは明後日だからちゃんと伝えておいてねー!」

そういって彼女は仕事が舞い込んできたらしく、慌てた様子で走り去っていってしまった。
彼女の言う伝えておいてね、というのはクロウと遊星のことだ。おそらくジャックはカーリー自身から伝えるだろうからいいとして、私はクロウに聞かなければならない。
慣れない恰好、場所で踊らないといけないのか、と考えると不安は増していくばかりだ。

「明後日か…。早めに伝えたほうがよさそうだね。アキはこの後遊星のとこいく?」

「ええ、了承してもらえるかはわからないけど。」

そういって少し苦笑いをするアキ。不安と期待が混ざった表情だった。
きっと私も同じだろうな、と思いつつクロウも一緒にいる可能性が高いので、私もついていくことにした。

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