SK短編
雨がもたらすもの(3)
合羽からバッグを出して荒々しくまさぐり、タオルを手に駆け寄った。
「な、なんで…っ…。」
そこにはずぶ濡れになって背中を見せて立つハオの姿。
ハオはこちらの存在に気付いていたようで、顔だけをこちらに向けた。
「やぁ。来てくれたんだ。」
寒かっただろ?と何事もないような調子で言うハオ。
言動に温度差がありすぎて、一瞬自分の方がおかしいのかと思ってしまうほどだ。
止まりそうになった手を動かして、タオルを彼の濡れた顔にあてがう。
「ハオの方が寒そうだよ…。」
目元は少し赤みを帯びていて、心なしか寂しさをにじませていた。
「確かに少し、寒いな…。」
これ以上彼が濡れたら本当に風邪を引きかねない。
そう思って合羽を脱ごうと手をかける。
「…大丈夫だよ。ちょっと雨に打たれたい気分だったんだ。」
にこ、と笑う彼はどこか力が入ってない。
それは私の手首を掴んだ彼の手からも伝わった。
「そっか。」
目の中に雨粒が入ってくる。
いつの間にかフードが頭から外れていた。
かけ直す気にもなれず、時々雨粒が入ってくる目を擦りながら彼と一緒に雨に打たれた。
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