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●留×戦
●留←戦
●18禁











沈黙が肯定の意味を成す事をまだ知らなかったのだろうか。







いつの間にか外から雨音が聞こえていた。
そういえば早めの梅雨に入ったのだとラジオが告げていた事を留弗夫は思い出した。
薄い窓が激しい雨に打たれてカタカタと揺れていた。
雨が降れば畳の匂いが部屋にこもるので好きじゃない。
そもそも畳があまり好きではない。
金蔵の趣味の影響か、育った環境のせいか、まぁどちらにせよ原因は金蔵にあるのだろうがあまり和風の建築物に興味もなかった。
何より畳みの痕は酷く肌に残るのだ。
そういえば前に寝そべっていて自分の腕に真赤な畳み痕をつけていたのをぼんやりと眺めていた事があった。
「痕すごいなぁ」と言いながら戦人がなぞった指の動きを逐一覚えている。
やけにその指の動きがゆっくりと見えて、その僅か触れる感触にぞくぞくと背筋が震えた。

『最近のこいつを、見る、自分の目が異様だとか自覚はあったんだが』

自分のもとへ戻ってきた後も特にこれといった興味などなかった。
話せばノリのいい奴だったのでまるで悪友のような親になっていた。
ここでの生活が始まり最初に泣かれてしまったので同情して、無能になってやろうと思った。
褒めてやるとこれがまた嬉しそうな顔をするので次に父親になってやろうと思った。

『じゃあ、今は?今は、俺はこいつの何になってやりたいんだ、』

部屋にその雨音に混じって聞こえる粘着質の音に留弗夫は口を歪めながら考えていた。
「っぁ・・・・・あ・・・っ・・あっ・・・・」
後ろから抱き抱えた状態で戦人の口から漏れる声に再び視線を元に戻しその肩筋に首を埋める。
引き締まった首筋から肩までのラインを舌で舐めて鎖骨をがりがりと歯を立てて齧った。首を横に捻りそのむず痒さから逃げるようとしたので留弗夫は下半身を弄っている手の動きを早めて敏感な所を引っ掻いてやる。
「んっ!!・・ぁ・・っっ〜〜〜〜・・・・」
押し切れなかった声をあげながら戦人は空中に向かって喘いだ。
片手は風呂上りの格好である薄いシャツを捲り火照った体に這わせもう片方は緩いズボンの間に潜りこませていた。


いつまでたっても返事をしない戦人に痺れを切らした留弗夫が手を伸ばして触れた。
強張った体をびくりと動かしたが戦人は何も言わなかった。
言えなかった、が正しいのだろうと分っていたが留弗夫は下唇を薄く舐めて喉をゴクリと鳴らし自分の欲望の為にその体を引き寄せていた。


腰を密着させて強くグリグリと下半身を刺激してやれば戦人は身をがたがたと震わせながら口から声をもらす。
その声に混じらせ首を振り小さく「離せ」と呟かれた。
「ああ?なんだって、」
耳元で優しく囁いてやれば戦人が荒い息を口から出してもう一度「離せ・・よ・・・・っ」と泣きそうな声で訴える。
「聞こえねーなぁ・・・」
留弗夫はにやにやと笑いながら手の動きを再開させる。先端から先走り零れ落ちる白濁を親指に擦りつけその指で太腿をねっとりと摩り上げいく。
ぐちゃりとした感触と強張る体の動きに喉奥で笑いながら自らも荒くなる息と欲情する心境を誤魔化す為に「戦人」と名前を囁いてやる。そのまま軽く扱いてやると戦人は体を痙攣させた。
 力が抜けたのだろう、上半身をぐったりとさせて荒い息を吐いていた。声は強く噛み押し殺してしまっていたので聞けなかったが、信じられないと大きく見開いた目が揺れている様を見られたので留弗夫は上機嫌だった。
ぞくぞくとする、口内は変な緊張でへばり付く。
「・・・ざけんなよ・・・はぁ・・んだよ、これ・・・・・なんなんだよ・・・?!」
絶頂を迎えた後の戦人は息を弾ませ途切れ途切れの声で混乱の様子を呟く。
目にかかっている赤い髪を握りしめて戦人は肩を上げて息をしていた。
「ば と ら、」
名前をまた呼んだ後でその頭を片手で畳みに叩き付ける。息を飲んだのを確認した後で白濁と濡れた指先で臀部付近を押しながら割れ目に強く捻りこんでいく、
「え・・っ・・あ・・・・・!?」
中指と人差し指を中でばらばらに蠢かせる、きつく締まる筋肉を内側から解していくように奥がわまで指の根元まで入れ込みながら上半身にもたれ戦人を畳みの上に押し倒していく。
「いっ・・ぅ・・っ、」
裂かれるような、痛みが混じった感覚に戦人はたっていられないような痛痒を感じてたまらず身動ぎをするが留弗夫の体重の為動けない。
「っ・・ひ・・・ぐ・ぅ・・っっ・・やめ・・・・」
搾り出したような声に答えるようにえぐりこみ、内壁に馴染ませるようにねちゃねちゃと音を立たせながら刺激をしていく。首筋を舐めながら舌で愛撫をしていく、シャツの隙間から覗く戦人の手には鳥肌が立っており眉を歪ませ目を細めて身震いをしていた。
 指を抜き、腰をしっかりと掴み引き寄せる。まだ完全に解れてはおらず挿入にはきついだろう、そもそも男と男だ、留弗夫とて経験はないが。
「おい・・・戦人。俺が今、お前に何をしようとしているか・・・・分かるか??」
乾いた笑いで留弗夫は戦人に問い掛けてみる。
首を横に向けた戦人が青ざめた顔をした。
「お・・・お前の好色ぶりの広さなんて、知りたくもない!!!そんなの、わかりたくねぇよ!!離せ・・・・ッッ!!」
戦人が畳みに手をたて留弗夫を跳ね除けようと躍起になるものなので留弗夫はまるで三流悪役のように下唇を赤い舌で舐めながら力を込めてその体を押さえつける。

「戦人、わかるか、俺は、俺にはお前が必要なんだ」

戦人の動きがぴたりと止まった。
横から見えるその目は大きく見開いており、透明な色をしていた。
抵抗の言葉は虚空に消えていた。


その隙を見計らい、留弗夫は戦人の腰をゆっくりと掴む。
あ、と気づいた戦人が逃れようとしたが留弗夫は自身を宛がい、一気に腰を叩きつけた。

「――――――――ッッ!!!!!!」

引き攣り、声にならない悲鳴が室内に響いた。
予想以上にきつい内部にひくりと喉を鳴らしつつ膣の後壁を摩擦する角度で、深く突き刺す。
腰を持ち背骨に手を押し当てぐちゃぐちゃと戦人の中に自分の昂ぶった楔を後ろから埋め込んでいく。
「っ・・・っっぐ・・・ひ・・・・・」
戦人は体を揺すられるたびに歯の付け根をガタガタと揺らした。
体を酷く強張らせているために思った以上に前に進まない。ゆっくりと腰を打ち付けていくたびに戦人は痛みで呻いた。
「お前、もう一回風呂はいらねぇと駄目だな、こりゃ」
汗で張り付いたシャツや押し付けられて変な後がついた髪などを見て留弗夫は笑いながら喋りかけた。
全てが扇情的に見える、酷く満たされていく気分で頭の中で行ったその行為の何倍も心臓が高鳴り、手足が痺れるぐらいの快感があった。
胸が痛いぐらいの交わりに留弗夫は満足するが戦人はというとただその行為に対して堪えるように目を瞑り歯を食い縛っている。

あくまでそういう態度を取るつもりか、

留弗夫は少し頭に来てその体を繋がったままの状態で引っくり返した。
足を掴み折り曲げていく。戦人はいきなり視界が開き、今、自分を犯している男の顔や今の自分の状態である体制を見せ付けられ顔が青ざめさせた。
「・・・・っ・・!!」
堪えきれずに顔を逸らそうとしたので留弗夫は手を伸ばし戦人の顎を掴み固定させる。少し親指に力を入れれば無理矢理に結合部分を見せ付けるように位置。自分の膨張した腹や収まった父親の部位。
「さい・・・あく・・・だっ」
現状に対してそう述べた顔は酷く泣きそうに歪んでいた。
「それは、どうも」
留弗夫は苦笑して腰を強く打ちつけた。
「――― っっぅ〜・・・!!!」
今まで以上の快楽にビクリと体を引き攣らせる。手ごたえがあったな、と留弗夫はにやりと笑いながら足の角度を突き進む方向に何度も何度も腰を引き、叩きつけていく。

「あ・・・あ、あ、あ、あ、っ!!!!!!」

そのうちに完全に快楽へとスイッチが入ったのだろう口をだらしなく開けて唾液を顎にまで伝わせながら、嬌声をあげていく。
普段聞く声の何倍も高い、引き攣った声。あれ程抑えていたというのに面白いように室内に落ちていく。

目は完全に焦点が定まっておらず快楽に完全に呑まれているのが分った。
手を伸ばし戦人の手と繋ぎ指と指を絡め顔を近づけさせる。

「、気持ちいいか」
「ぁっ・・う・・ぁ」

あえて聞くが短くくぐもった声しかかえってこない。

「は、なんなら・・・・さっきのAVでもつけるか?」
「ふ・・・・っ あ、あ、あっ・・ぁ・・・っ・・」

だらしなく開いた口で留弗夫が与える熱と痛みに体をよがらせ声など聞こえてないようだった。

「あー・・・どうやら、もう必要ねーみたいだなぁ、」

くっくっくと戦人のその様子を喉奥で笑いながら、がつがつと行為を貪るように留弗夫も没頭し始める。
ぎしぎしと揺れる畳の床、ぐちゅぐちゅと卑猥な泡立った音が耳につく下半身、かたかたと揺れている硝子窓。全てに現実味がない、彼にとっての覚えが少ない風景だというのに、ここではそれこそが鮮明だった。




そうやって行為にのめりこみ、何度目かになる精を中に吐き出し余韻に震える戦人片足から手を離し、留弗夫はようやく動きを止めた。
はぁはぁ、と荒い息をつきながらすでに気を失っていた戦人の頬をゆったりと撫でてやり汗ばんだ前髪を寄せて額をだす。
その額に口をつけた後で留弗夫も眠りにつく事にした。








目が覚めたのは時計で確認したところ昼に差し掛かる前の朝。
実感がわかないのは相変わらず続く雨の音と天気のせいだ、とまだそのせいで昨日の空気のままの室内で留弗夫は体を起こした。しかし、下敷きしたままだったはずの戦人の姿がない。
 ぼんやりとした頭で辺りを見回す。
戦人のボストンバッグがそのまま放置されており首からかけていたタオルが落ちており床には昨日の事情跡が色濃く残っていた。
 欠伸を押し殺しつつ、留弗夫は戦人がいない事に焦りはしない。
狭い室内なので人の気配ぐらいすぐに分かるのだ。
『そもそも、あいつが俺から離れるわけがない』
案の定目線を向ければ廊下近くで蹲っている戦人を見つける。
留弗夫は近づき手を掴み部屋の中まで引き摺りその体を転がす。
 戦人は目を合わせようとせずに押し黙っている。
留弗夫は暫く考えるように戦人を見ていたが今だ収まらない熱を感じその体に手を伸ばして腹筋に手を這わせはじめた。
そこでようやく戦人の口が動く。
「腹が・・・・気持ちわりぃ・・・・・」
その一言でぴたりと留弗夫は動きを止めた。
「あー・・・・それは出してないからだ」
留弗夫は戦人の下半身に指を突っ込み中で曲げる
「っ・・・ぃっ」
引っ掻くように指を動かせば引き締まった太腿を伝う白濁が零れ落ちる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
戦人が嫌悪で顔を歪めた。
「しかし、出しちまうの少し勿体無いなぁ、なぁ戦人???」
そんな顔を覗きこむように笑いかけてやれば戦人はきつく留弗夫を睨んだ。
「昨日から・・・!!発言が悪趣味すぎるんだよ・・・・・!!」
叫び拳で胸板を叩いた。留弗夫はしかし怯まず、
「でも、お前、俺の事が好きなんだろうが」
と言ってみせた。
どうせ「好きなわけがないだろう!!」と怒りに満ちた声が返ってくるのを期待して問いかけたものではあるが。
しかし、その言葉に戦人はじっと留弗夫を見ていた。


「・・・・・・ああ、好きだぜ」


あまりにも率直な言葉に留弗夫の方が驚いてしまった。
戦人と言えば表情を歪ませ口だけを開く。

「好きだ、俺は、あんたが好きなんだ」

両手で顔を隠しながら前髪を掴んで声を押し殺す。
しかし初日の時のように泣いてなどいなかった。変なところで頑固なこの男はもう二度と留弗夫の前で泣いたりしないだろう、そこだけは変な確信があった。



「・・・・なんで、俺はあんたなんかが好きなんだ」


それが少し寂しいと、父親として寂しいと留弗夫は静かに感じる。


もう、名乗る資格などないかもしれないのに。















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