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●山羊×戦人








しまった・・・・っ

そう、戦人が思った時にはその体は宙を浮いていたし刹那の瞬間、時間にしてコンマの世界、浮遊感。ぐるぐると視界の先で回って消えたのは、青空、うみねこ、波の音。


あ、俺!死んだ!!

一瞬のうちに様々な思考が高速で駆け抜ける。
次に気がついた時には背中が砕けるような衝撃、強烈な、まるで火がついたような熱。

体中に激痛が駆け巡り暴れる。

「ぁ・くっ・・・・はぁっ・・・!!!!!」

呼吸の仕方を忘れて大きく息を吸い込み火花が飛び散り続ける視界。
引き攣った声で声にならない声で叫ぶ、しかし体を動かさない。動かせない、
痛いから。
数回、小さな呼吸を短く早く繰り返して目尻に涙を溜めてパクパクと衝撃の余韻に耐えた。
パラパラと振ってくる砂や石が頬に落下、避ける気力などない。
炎天下のアスファルトの上をのたうちまくるミミズのように無様だ、と戦人は何処か自分の今の体制を冷静に考えた後で今一度視線を戻した。

空が高い。
波の音が近い。

落ちた、あそこから落ちたんだ。
冗談じゃないぜ。
崖から足を踏み外して落ちたんだ。

戦人が痛みになれて事態を少しずつ認識する。
海に落ちなかったのは奇跡と言っていいだろう。
崖の尖っている場所に落ちたのだろうか高さにして建物の三階ぐらいの高さ。
確か、人が助かる高さだったとは思い出すが。
混乱する頭、纏まらない思考。
『頭を強くうったのか・・・・・・』
考えながら荒い呼吸を繰り返す。
目線を這わせると離れた場所に足場があるのを見つけた。
動けるようになったらなんとかあそこまで飛べば上まで上がれそうだな、などと考えると直ぐに助かるし何も絶望ではない。
上からこれ以上物が落ちてきたら堪らない、と這って窪みになっている所まで避難した。
しかし、いい天気だなぁ、と仰向けに遠くに見える空と海を見てそれを最後にそのまま戦人は気を失った。





生暖かい息を耳元で感じた。
戦人は昔飼っていた犬の名前を呼びながら手で追い払う仕草をするのだが呼吸の音は益々近くなる。生臭い息が鼻腔を擽り、戦人は眉を顰めてうっすらと瞼を開けた。
其処には草食動物特有の知性が伺えないボタンのようなつぶらな瞳が近くにあった。

『山羊?』

ぼんやりと動物の形状から単語が頭をちらつく。
長い舌が伸びて戦人の目を舐めた。
粘着質のある唾液がべベロリと頬を撫でる。
「うぇ」
思わず背筋が震える。
意識が覚醒してくると同時に背中の痛みが蘇る。
眉を顰めて動かせるかを考えて慎重に慎重に上半身を起こした。
近くにいるであろうその動物がその気配に僅か身を引くのを感じた。
身を起こした後で息を吐く。痛みから玉のような汗がぶわっと流れて額を伝っていくのを感じた。
「ふっ・・・・」
脂汗を流しながら戦人は傷を自分の目で確かめておこうと足に目線を向けて後悔した。落ちる途中で岩で切ったのか血が流れている。
足の怪我と背中の打撲。暫くは動けない、と息をつく。

そこで低い呻き声を聞き、そういえば動物が近くにいた、と振り返った。
そして言葉を失ったのだ。



「・・・・・・・・・・・・・・・・え」

そこに立っていたのは山羊頭。
とはいえ山羊が立っているだけならなんという曲芸と拍手でも送ればよかったのだが、その体格は人間なのだ。しかもなんだかご丁寧に執事のようにしっかりと服をしっかりと着込んでいる。その使用人の服の下は人間のような体格ではあるが服の隙間から見える体毛は獣のものだ。

「は?え、えええええ????!!!」


戦人は声を上げて身を離そうとするのだが痛みでそれも出来ない。
山羊頭は荒い鼻息を上げながら戦人に顔を近づけさせる。
近くに来れば分かる。
特殊メイクやお面ではない。間違いなくこれは現実のものとして今、自分の前にいるのだ。
「よ・・・よるな!!!!」
思わず叫ぶが山羊は言葉が通じていないのか戦人に近づき再び舌でベロリベロリと戦人を舐める。
負傷して血が流れている足を。
「ひ・・・・・っ」
背筋に冷たい感覚。ピチャピチャと音を立てながら舐めている様でこの生物の主食が何であるかうっすらと感じ取った。
ただ、息を殺して食われるであろう瞬間を怯えながら待っていたが山羊は暫くすると戦人から身を離してその場で獣のように蹲って動かなくなった。
戦人は焦りながらも何故助かったのだろうかと身を起こす。
そもそもこの絶壁の中、どうやってこの生物は此処に来たんだ。
嫌な予感がして気を失うまでに見た足場を見た。

崩れ落ちている。

「・・・・っくそ!!!!」

戦人を見つけて足場を使い此処まで来たのはいいがその足場崩れこの山羊も戻れなくなってしまっていたのだ。
戻れなくなった事の絶望感と、山羊に対する怒りが込みあがってきた時に自分が山羊に食べられなかった理由もわかった。

「用は、俺は非常食かよ???!!!」

思わず涙が出そうになった。
どうやらその生き物は知能はあるらしい。

山羊が動かなくなった後で戦人は自分の服を破り足を縛り止血をする。
「誰か!!!!近くにいないのか!!!!」
声をあげてみたが波の音で掻き消される。
余程、近くに誰かが来ない限り声は届かないだろう。
上を見上げるが勿論そこに親族達の姿はない。どのくらい気を失っていたか知らないが海辺に行く事は告げていたし自分を探しにきてくれる自信はあった。
親族会議でこの島にやってきたのだが、予定が思ったより早くついたらしので次男一家と長女一家は親族会議より一週間も早く滞在する事になっている。
それにしたって自分が見つかるまで帰るという事もないだろう。
『叔父さんか兄貴達が・・・探しに来てくれるさ』
お祖父様の趣味でウインチェスター等の銃器があの館にはあった。
それをもってこいつを撃ち殺しさえしてくれた後で俺が助かればいい。
戦人は小さく溜息をつき痺れる足を抱き寄せた。

半日ぐらいして山羊はのっそりと起き上がり戦人が止血していた布を指先で起用に外し、爪を立て血を舐めた。
「・・・・・ぐ・っ・ぁ・・」
痺れる感触、痛みで身を捩れば両方の肩を強く地面に抑え付けられた。
そして山羊は手を伸ばしズボン裾を持ち左右にびりびりと破り始める。
「はっ・・・・」
思わず焦って声を出したが山羊は手の動きを止めず露になった足の肌を舐めていき再び傷口に舌を潜りこませる。どうやら舐めにくかったらしい。
忌々しい、と戦人は、染みる、痛い、の感覚に息を吐きながら苦痛に耐えた。
生暖かい感触が傷口を舐めて潜りこんでくる。熱い感触。肉の味まで楽しんでいるのだろう。
抵抗すれば動けない自分はこの化物の胃袋の中に収まるかもしれないという可能性を考えるとされるがままになっている。
山羊は満足したのか身を離すとまた蹲って動かなくなった。

戦人は息を吐き空を見た。
俺だって腹減ってんだよ、毒づく。
何かないかと上着のポケットを弄るとチョコレートやら飴やらクッキーやらやたら入っている。
『そうか、ハロウィン・・・・・』
事前に六年ぶりにあう楼座から電話での連絡で娘の為にハロウィンパーティーを開いてやってくれと頼まれていた。
だから色々と用意していたのだ。
『わりぃ、真里亞』
心の中でまだ記憶の中で三歳の真里亞に謝った後で包み紙を開ける。
するとその僅かな音を聞いたのか山羊が起き上がる。
まさか、食べるのか、お菓子を。
じっと見ていたが山羊は再び戦人の足をべろりと舐めただけで再び蹲ってしまった。
どうやらお菓子に興味はないらしい。

ぱくっとチョコを齧って「喉、乾いた・・・」と思わず呟きながら戦人は夕暮に染まりつつある空を見上げた。


瞼が重くなり閉じようとしていた時だ。
「戦人くん!!!!」「おーい!!」
遠くで自分を呼ぶ声がしている。
慌てて戦人は上半身をあげて崖の上を見た。薄暗い夕闇の最中、確かに自分を呼ぶ声だ。声は近づいてきてパラパラと目線の先に砂粒が落ちていた。

 崖の端の方に譲治の姿が見えた。
声を出して居場所を知らせようと戦人は口を開けた。
「あに・・・・・っ」
しかし、それを大きな毛むくじゃらの手が阻止した。
「んっ・・・・む・・・ぐ・・・・・・・っ・!!!」
声が抑えられる。譲治が念入りに辺りを見回している。それなのに戦人は声が出せない。
山羊頭は戦人の口の中に手を突っ込みはじめた。
口内を指でなぞる。戦人が歯を突き立ててもびくともしない。
腕を振り上げ抵抗するが地面に押し倒され地面に顔を抑えつけられた。その巨躯に後ろから動きを封じられる。
やがて譲治は諦めたように踵をかえす、回りにいた親族達も集まり首を振りそこから立ち去ろうとしている。

『兄貴!!俺はここにいるのに!!!こんなに近くにいるんだよ!!!』

背中が少しずつ遠くなる。
完全に足音が遠のいた後で山羊は戦人から手を離した。
「兄貴!!!!皆!!!誰か!俺はここにいる!!!」
慌てて叫んだが誰も来ない、来る様子もない。声は誰にも届かない。
「くそ・・・・っ!!」
山羊は何事もなかったかのように戦人から体を離してまた指定位置にもどり丸くなっている。
苛立ちを込めてその背中を睨みつけたが山羊はもう興味がないらしい。
こいつはこいつの仲間が来るまでこうしているつもりなのだろうか。
戦人は苛立ちを込めて足を引き摺り、少しでもその化け物と距離を取る事にした。


次の日になっても山羊は戦人の足の傷を舐めていた、親族は来なかった。
口に入れるものはあったが戦人は喉の渇きからすぐに食べる気になれなかった。
喉が渇きすぎてひりついて仕方なかった。
そして次に目が覚めたのは昼過ぎ。激しい豪雨の音でだ。
戦人は半分助かったと渇きすぎていた喉を潤わす為に這って雨が当たる所まで行き、口を開けてぼんやりとしていた。
幾分潤った喉で窪みの所まで戻る。
しかし、9月後半だ。夜の上に雨が降っては酷く寒い。
定まらない思考でがたがたと震えながら這う。
ぼんやりしていると暖かい熱源をみつけて思わず寄り添う。
直ぐにそれが山羊だと気づき慌てて身を離そうとしたが山羊は薄目で戦人を見ただけで特に関心はないらしい。直ぐに眠ってしまった。
・・・・必要ない時以外は体力を温存しているのかもしれない。
どうせ雨に垂れて衰弱死するぐらいなら、と山羊の下に体を潜り込ませて獣臭いのを我慢し雨と風から身を守った。

結局半日寝てしまっていたらしい。背中の痛みは大分ひいていたが足の痛みは現在進行形。
外はまだ強い雨が降り続いている。
戦人はうっすら開けた目で自分の体を舐めている化け物を見る。
考えながら無抵抗に山羊を見ていた。
「なぁ・・・お前さ、一体なんなんだ??」
人型をしているからか、二日近く誰とも喋ってなかった寂しさからかつい言葉をかけてしまった。
山羊は勿論何も答えずに荒い鼻息を吐きながら戦人の肉の味を堪能している。
足を舐めて今日は上半身のシャツを左右に裂かれ胸板に赤く大きな舌を這わせている。
「ん・・・・・っ」
くすぐったさから身を捩る。
歯を立てられたおしまいだな、などと思いながら戦人は山羊を見ている。
「その紋章はお祖父様に許された人間だけがつける事を許されてるんだぜ・・・・」
だからお前みたいな山羊がつけていいものじゃねーんだよ?

ゆっくりと一人で諭すように話かけてやるが山羊は鳴き声一つあげない。
「なぁ、俺の言葉とかわかってんのか?」
山羊は戦人首筋を舐めて無遠慮に肌に触れていく。
「っ・・・・・ぁ」
無意識だろうがざらざらとした舌の感触に体をびくつかせた。
その後で山羊は足の傷を広げ再び血を舐め始めた。
『血ってどのくらい流れても平気なんだったっけ?』
山羊は血を舐めているうちに興奮してきたのか戦人の足に歯をつきたてた。
「いっ――――――!!!!!」
体を一際大きく震わせた後で掠れた息をつく。
山羊はその戦人の悲鳴に喉をごろごろと鳴らした。喜んでいるのだろうか。
手をぼろぼろになったズボンの下に突っ込み太腿を掴み、顔を入れて舐めている。
戦人が喘ぎに似た声を出すと歯を立てて僅かに噛み付かれた。

「っぐ・・・もう少し・・・優しくしろよ・・・・」

無駄だとは分っていても悪態をつく。
その言葉の後に山羊はぴくりと動きを止めた。
顔を上げてじっと戦人を見た後でちろちろと舌で傷口を舐め始めた。
その山羊の行動に戦人は驚いたように眺めた後で、


「・・・・言葉、通じてるじゃねーか」


小さく溜息を零しつつ雨音に消されそうな音量で呟いた。

夜も結局寄り添って眠る事にした。山羊は身動き一つとらずに規則正しく胸の位置だけを上下に動かし息を吐き丸くなっている。
ピンクの歯口から鋭い爪が見える。グロテスクだなぁ。などと考えながら手を伸ばしてみた。感覚が鈍っていると思いながら戦人は山羊の顔にぺたぺたと手を触れていく。
流石に山羊も気になりはじめたのかまた薄目を開けてヌイグルミにつけられた黒いボタンのような目で戦人を見るのだが戦人の方に怯えはなくなっていた。
山羊頭は目を瞑って再び眠り始めた。
『もう一度兄貴達、探しにきてくれないかな』
朝日が昇り始めた頃にぼんやりと戦人は考えながら波の音を聞いた。
そこに落ちて更には山羊と一緒に遭難してしまい何日ぐらいたっただろうか、戦人の頭の中では三日、四日程度と記憶しているが痛みから逃れる為に寝てばかりいた上に気をどのくらい失っていたか分からないから正確な日数も時間も分からない。
 ただ、もうポケットの中に菓子は入っていないし雨水ももう尽きかけていた。
山羊がのっそりと起きてきて戦人に近寄っては来たが戦人が衰弱しているのに気がついたのか血は舐めずに足だけ舐めて直ぐに横になった。
戦人も体力を温存しようともうそのまま何もしなかった。日が落ちていく様だけ眺めている。
 何をするでもなく、横になって灯台の灯りをぼんやりと眺める。風が吹くと潮の香りがして、暗い海に打ち寄せる波を想う。
胸奥から込み上がってくる感情を隠す為にも戦人は山羊に寄り添う事にした。


今は何時だろうか。
 空が曇っているので時間が特に分からない。
 その空を覆い隠すように戦人の視線を山羊が遮った。口から涎をだらだらと零して戦人をねっとりと見ている。
戦人の肩を握りしめて口を大きく開けた。
『なんだ、もう限界なのかよ』
戦人は肩の力を抜いてぼんやりとそんな山羊を眺めている。
 口が近づいてきたのであ、今度こそ俺死んだな、などと考えている。
 しかしいつまでたっても山羊の牙が戦人に突きつけられる事がない。
不思議とその目が疑問を感じて止まっているようにも見えた。
戦人は少し考えた後で口を開く。
「あ・・・・ひょっとして叫んだほうがいいのか?」
山羊に語りかける、
「ひぃい、とかぎゃああ、とか叫んだ方がいいのかって??」
聞くが山羊は勿論答えない。戦人はそこで口の端を吊り上げて悪党のように顔を歪ませる。
「いっひっひっひ!!!!」
可笑しそうに声を上げて笑う。山羊は動かない。
「ひっひ・・・・だったら絶対に怯えてやらねーよ。頭だけになっても眼球だけになっても笑っていてやるよ」
ざまーみろ、化物、と戦人は呟く。
山羊は暫く何かを考え込むように戦人を見ていた。
「さっさと食えよ。痛いのは嫌いなんだよ」
睨みつけながら戦人はガタガタと震える足を、汗で湿ってしまっている手にばれないように握り締めて強く口を噛んだ。
カタカタと歯が揺れてしまったがそれでも声は震わさせずにすんだ。

山羊はそこで戦人から体を離した。
そして一歩二歩距離を取る。

戦人が不思議そうにその様子を見ていた。
山羊頭は深く頭を礼儀正しく下げた。
敬愛する主人に対する使用人のように。

戦人は口を開き山羊に何か語りかけようかと思った。
しかし、山羊が立ち上がった時にその足元がグラリと揺れて山羊の姿が消えた。

「え」

ぼちゃん、という水面から音が聞こえた。
戦人が這って水面を確認したがそこに山羊の姿は見当たらなかった。

「・・・・・なんだよ・・・・それ」

戦人は力つきたように地面に横たわって動かなくなった。





目が覚めたらそこには天井があった。
「?!」
辺りを見回すとそこは室内だった。
「よかった!戦人くん、目が覚めたのね」
髪の長い女性が心配そうに優しく笑っていた。6年前の記憶を引っ張り出し唇をゆっくりと開く。
「楼座・・・叔母さん?」
名前を呼ぶと肯定の意味を含めてふんわりと楼座は笑った。
「待ってて今皆を呼んでくるわ」
そう言い扉から出て行った。
どうやらあの後戦人はすぐに発見されて館に保護されたらしい。
毛布に包まり暖かいスープを飲ませてもらい衰弱した体を休めせている。
「しっかし、酷い目にあったぜ〜」
いっひっひと手当てをしてもらった足を見せながら戦人は笑った。
勿論、山羊の事など言っていない。頭を疑われるのがオチだし、何より戦人自身あれは夢か何かだったのではないだろうか、と疑っているぐらいだ。
喉もとすぎれば、なんとやら。戦人は助かった喜びだけを感じている。
南條が巻いた包帯だが南條曰く応急処置でしかないらしい。早く本土の医者に見せたほうがいいとの事だが嵐が近づいている為、船は二日後まで待たないといけないらしい。
「でも、ついた早々慌しくて驚いたわ。留弗夫兄さんなんて見た事もない程顔を青ざめさせてたしね」
楼座が留弗夫の顔を見てクスクスと笑うと留弗夫は「うるせーよぉ・・・・」とぼそりと呟いた。
和やかな空気の中、戦人もつられて笑っていた。
「戦人ーーーうーーうーーー」
先程仲良くなったばかりの真里亞がクロッキー帳を持ってくる。そこに書かれていたのは杖を持った女の可愛らしい絵。
「おっ真里亞、うめーな。これは誰の絵だ?」
「魔女!」
真里亞は即答する。

戦人はその単語に一瞬背筋を震わせた。

「しかし、戦人君も無事見つかったし、今年も無事、親族会議が開けそうで何よりだよ」
蔵臼がゆっくりとよく通る声で発言をした。

「親族・・・会議」

そういえばこの島にやってきた目的を戦人は思い出す。
一週間近く自分達はこの島に滞在していたのだ。そして楼座が来たという事は兄弟が揃ったという事で、それすなわち10月4日がやってきたという事なのだ。






大人達に流れる異質な空気に戦人再び嫌な予感がした。




なぜか・・・・あの山羊ともまたすぐに会える気がした。




そして

















あきゅろす。
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