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●戦人×ベアトリーチェ
●戦人攻めです。
●4月1日の話。











「ベアトリーチェ、愛している」




室内にぽとりと落ちた言葉にベアトリーチェはけらけらと笑った。

「くっくっく、大分、うまく言えるようになってきたじゃないか、のぉ、戦人ぁああ・・・しかし、まだまだ妾が満足すると思っているのかぁああ???あああ???」

端麗な顔を凶悪に最大限まで崩し心の其処からの嘲笑の表情で戦人を見て笑う。
彼女は自分の手にある親族達の駒をぶらぶらと揺らし、歩きながら余裕を持って戦人を見た。

戦人と言えば呆れたように深い溜息をついていた。
「くだらねぇー・・・・・」
その反応にベアトは少し口を緩めて手を伸ばして戦人に笑いかけてやった。
「まぁそれでよい。約束だからな。この駒は見逃してやろう。妾は約束は守る」
にこにこと満足そうに笑いベアトリーチェはチェス駒に近づき駒を静かに盤に置きなおした。

うまく愛が囁ければその一手を待ってやるという話。
少しでもこの状況から抜け出したく藁にでも縋りたいであろう戦人へ持ちかけたのも魔女の余興であった。
戦人の口から安堵の溜息が少しでも漏れれば笑いながらチェス盤を叩き割ってやる為に。

しかし、いつまでたっても戦人の口から安堵の溜息は漏れない。
その反応に魔女はつまらなそうに戦人を見た。
不思議な事に戦人の視線はじっとベアトリーチェを見ている。
「?なんだ」
ベアトリーチェはその目線に少し不快感を覚えて眉を寄せて戦人に目を向ける。


「・・・・・・・・愛しているぜ、ベアトリーチェ」

ぽそりと言葉が落ちる。

「、好きだ好きだ、ベアト、愛している、愛しているぜベアト本当に心の底から好きなんだ。好きだ好きだ」

続いて一息も入れる事なく戦人は言葉を小さくぶつぶつと呟きながらベアトリーチェに浴びせ、ゆったりと立ち上がった。
豹変した態度に虚を衝かれ、大きく瞳をあけて固まるベアトリーチェだが戦人はくだらなそうな目のままだ。

「・・・・聞こえなかったのかぁあ????右代宮戦人????
妾はそれでよいと言ってやったのだ。わかったならさっさと席に戻り、無い知恵を働かせてみろよぉおおお」

彼女の機嫌一つで大きく変わるこの彼女に一方的な勝負。ベアトリーチェは本来は好意の言葉である単語を波のように流されて少し馬鹿にされているような気分になり眉を寄せる。
しかし戦人の方は顔色一つ変えない。

「好きだ」
とまた一言呟いた。

「・・・いい加減に、」
「あんな薄い愛の言葉で満足するなよ」

戦人は表情を和らげてベアトリーチェが見た事がない穏やかな笑みを向けた。

「、好きだ、知ってたか俺は少し前から愛しているんだベアト。実はもう勝負なんてもうどうでもよくなってんだ。ただ好きだ好きだ好きだ。お前を閉じ込めたいぐらいに好きになってる。だから俺はお前を閉じ込める為にお前をもう何があっても信じない。お前が復活出来ないように逃れられないように永遠この島で飼い殺してやる。ああ、そうだ逃がさねーぞ、逃がすか。逃がすものか。ベアト、ベアトリーチェ!お前が好きだ!!お前の全てが堪らなく愛おしい、千年生きたならば残りの永劫は俺と過ごしてもらうからな!!!!」

声は少しずつあがっていき最後には大きな声となりベアトリーチェに捧がれた。
それは彼の祖父よりは静かに、しかし熱烈的に、縋りつく声ではなく理知的に追う者の声として紡がれていた。

ベアトリーチェは驚きで大きく目を見開き、一歩、驚きで戦人から距離を置いた。
その足音にぐるりと目玉を動かし戦人はベアトリーチェを捕らえた。

「・・・・・戦人・・・?」

思わずぼそりと魔女は焦ったように戦人を見た。
人間など恐ろしいものではない、が、それは普通の人間ならばの話だ。
右代宮の一族とは恐ろしいものでその執念はまさに不死鳥と魔女自ら称えた程に深く、そして彼女を地獄に陥れるものだ。

相手が近づけば魔女は警戒した目でその男を見た。

戦人が近づく。
そしてベアトリーチェに手を伸ばした。
ベアトリーチェの肩が僅かに揺れた、時、

「嘘だぜ?」

と、言葉が落ちた。

「何?」
その言葉の意味が分からずベアトリーチェは狐に包まれたかのような表情で戦人を見た。

「いっひっひ!日付を思い出せよ。今日は本来なら4月1日だろう?」
と、表情が崩れていつものように八重歯を覗かせた。
間の抜けた顔でベアトリーチェは戦人を見る。
ベアトリーチェのその様子を見ながら戦人はさらに声をあげて笑う。
ようやく言葉の意味を少しずつ理解しながら4月1日、人間達の会話の記憶からエイプリルフールの『騙しても許される日』『4月馬鹿』『嘘をつく日』などの意味を思い出しベアトは顔を歪めた。

「・・・・人間のくだらぬ催し事など妾はいちいち把握しておらん」

騙された事に怒りを覚えて少し低い声で唸ったが戦人は「まぁ、たまにはこんな仕返しがあったっていいだろう?黄金の魔女様よ」と少し苦々しく言葉を落とした。

「・・・しかし、そのわりには随分と感情が入っておったではないか戦人ぁ」
仕返しといわんばかりにそこでベアトリーチェは意地悪く頬を吊り上げて見せた。
「いっひっひ、仕方ないだろう、嘘なんだから」
戦人も笑いながら答える。
ベアトリーチェも再び笑おうとした時に答えになっていない答えに首を僅か捻った。



「だから、嘘だって言うのが嘘だぜ、ベアト」


右代宮戦人はゆったりと手を伸ばして彼女の陶器のように滑らかな頬を指先でゆったりとやらしく撫でた。盲目的な崇拝者のような瞳でじっとりとその体を、存在を嘗め回すように眺めながら自分の体を使い壁際に彼女を押し潰す。
その細い肩を両手でしっかりと抑えつけてから長身を屈めて額と額とを重ね合わせ最も近い位置に目線を合わせた。







「べあとりーちぇ、あいしてる」























あきゅろす。
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