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●楼座×戦人
●戦人×楼座
●15禁
●EP2沿いです










全く、と言えばそれは偽言になる事だろうがそれでもほとんど言っていいほど愛がない家庭だったと楼座は思う。
そんな家庭で育ったものだから兄弟達と言えば皆何処か歪んでいた、性格あるいは思想。
以前、蔵臼が自分の事を兄弟で一番純粋だと語った時に思わず「貴方は私の何をみていたの兄さん?」と泣きたくなった。
自分達がそうであったから、蔵臼は変な所で変な期待を自分に抱いていたのではないだろうか。
それでも兄弟達は皆、大人になれば人間になれていた。
皆、家族を持ち子供を持ち他人と関わる事で情を持ち、がちがちに凝り固まった思想を溶かし一人前の人間として地面に足をつけて歩く事を許されている。

『ずるいわ、兄さん達はずるい』

生まれたばかりの真里亞を抱え、家族の手を引いて歩く兄らの背中を見て楼座はぼんやりと思っていた。
兄嫁の明日夢の横を歩いていた戦人が振り返った。
どうしたのだろう、と、戦人と視線を交わす。
戦人は年相応の無邪気な笑みを見せて、とことこと近づいてくる。
普段は泣き虫なこの甥は自分によく懐いてくれていた。

「楼座さん」
「戦人ぁ、楼座叔母さんだろうが」
「うっせーーよ。親父は黙ってろよ、若い人におばさんとかつけられねーだろう」
どうやら『叔母さん』の意味を違えている息子の言葉に留弗夫は笑う。
意味を教えてやると少し驚き顔を赤くして、父を片手で追い払っていた。
確かに、蔵臼よりも甥達との方が年が近いと言えば近いが。
「ん、どうしたの戦人くん??」
何か用事でもあるのだろうか。朱志香と比べても背の小さい男の子に目線をあわす為に少し腰を下ろす。すやすやと寝ている真里亞を起こさないように。
戦人は顔を合わせないで手を突き出してきた。

「これ、やるよ」

一瞬、拳が突き出された事に条件反射でびくりと体が反応してしまったが、その手の中身が小さなガラス瓶だったので落ち着く。
ガラス瓶の蓋の上に可愛らしい桃色のリボンが結んであり中には星の砂が入っていた。
楼座が受け取ると横目でちらりとこちらを見た。
「私に?」
思わず聞くと一連の流れを見ていた留弗夫がにやにやとあの嫌な笑いをしながら
「おい、俺の息子とあろうものが女に送る贈物にしてはちょっと粗末じゃねーか?」
などと言ってくるが戦人は「うっせー」と短く返した後でもう一度楼座の顔を見る。
「いらないか?」
真里亞の出産祝いのつもりなのだろうか?
楼座はぶんぶんと首を横に振った。
「うんうん、嬉しいわ。戦人くん、ありがとう」
頭を撫でてやる、赤い髪を摩りながら、意外と柔らかい髪質を。
先程までどろどろと渦巻いていた感情など何処か遠くにいってしまっていて。素直に口から感謝の言葉が出た。
戦人は嬉しそうににっこり笑って
「あと、俺が大きくなったら結婚してくれよ、楼座叔母さん」
さらりと言ってのけた。

「あらぁ〜・・・子持ちの女を口説くなんて、さすが戦人くん。留弗夫の息子ねぇ・・・・??」
節操がない、とでもいいたのだろうか、絵羽からクスクスと嫌味の混ざった笑みを向けられて留弗夫は何処か居心地悪そうに咳払いをした。
「楼座叔母さんは俺が守っていくからさ」
普段は泣き虫で朱志香にさえ泣かされていた子が何をいっているのか、苦笑しつつも楼座はなんだか嬉しくなり微笑んだ。















「叔母さん、俺だ」
引き攣った笑みで両手をあげた戦人を見た楼座は小さく舌打ちをした。
眼の前にいるのはあの少年ではなく、声も低くなり身長も体つきも『男』になった甥の姿。構えていた銃を照準から外す事なく「驚かさないでね、戦人くん」と微笑み短く言葉を返す。

今、この館は死に包まれていた。
兄弟達や大勢の人間が死に犯人もその人数も分からない。狼探しは証拠不十分、疑わしきを追い出し部屋に立てこもっていた。
「・・・それで、そっちの鍵の方は大丈夫だった?」
「ああ・・・・誰も入って来れないだろうよ」
小さく「・・・兄貴たちもな」と付け足された。
彼らを追い出した自分を責めているのだろうか。
しかし、そんなの関係ない。あの家具共などどうなろうが。
「いいわ入って」
その言葉共に戦人は足を踏み入れそして部屋の中へと入る。そして扉の鍵を閉めようとしたので楼座はトリガーを引いた。

乾いた破裂音が響き、戦人の動きが固まる。
扉には抉られてついた銃弾痕。
鼻には火薬の匂いが漂った。
楼座は銃を構えたまま顔色一つ変えずに戦人を見た。
「戦人くん、もう一度言うわよ、私はまだ貴方を信用したわけじゃないの。貴方が此処に残りたいというから置いてあげるけど勝手なマネはしないでね・・・?」
そう言って自分で鍵を閉めた後、戦人の脇腹を蹴飛ばし部屋の中に入れた

「っ叔母さん・・激しすぎるぜ・・??」

戦人が苦痛に顔を歪めながらも口元を吊り上げて呟いた。
「あら、ごめんなさい」
全くと言っていい程に心の篭っていない謝罪の言葉。
一歩間違えれば自分と真里亞の命が危ないこの状況で『六年ぶりにあった甥』などという不安要素をどうして信用できるというのだ。
それを思うと急激に不安になる。
この男が本当にあの戦人か確証は持てない。
留弗夫でさえ何年も会ってなかったという。遺産欲しさに本物の右代宮戦人を殺して成り代わってここに来たという考えだって、いや、流石にそれは推理小説の読みすぎか?
楼座はぐるぐると考えながらも生まれた不安を取り除く事が出来ない。
その時に目線の先にそれが入った。
「戦人くーん・・・ちょっとこっち来てくれる??」
楼座は笑顔で微笑みながら手招きをする。
その手には部屋の端にあった荷造りようの縄。
戦人が困惑気味に目線をあげると楼座は目を細めて戦人を見た。
「椅子に座って」
銃を構えられて促される。戦人は冷や汗を流しながらも腰を下ろす。
「いっひっひ、ここまでしないと・・・いけない事かよ?」
額を伝った汗を感じながら目線を上に上げる。
「・・っ」
楼座は黙々と縄でその体を縛っていく。強く、緩まないようにと。
「当り前よ、背後から襲われたら堪らないもの」
「・・・・・違いない」
そんな事しない!!と叫ぶとでも思ったが今の楼座には逆効果になるだろうとわかっているのだろう。
酷く冷静な甥に苛立つ。
戦人は大人しくされるがままに縛られる。
縛り終えた後、楼座は安心して地面に腰を落として深い息を落とした。
「楼座叔母さんは本当に紗音ちゃん達が狼だとでも思っているのか?」
問われた言葉に楼座は顔を上げる。
「ええ、だって他に考えられないでしょう」
「他に考えられない?違うな、叔母さんは思考を停止させてんだよそっちの方が納得がいくから他にある選択肢を放棄して楽な方へ逃げてんだ」
「じゃあどうしろっていうの?譲治くん達やあの家具共を連れ戻せとでも?」
嘲笑うかのように問う。

「そうだよ」

戦人は楼座が恐ろしくて出来なかった事を簡単に言ってのけた。

「俺じゃあどう考えても信用がない。俺より信用出来るのはそれこそ長年仕えた紗音ちゃんたちだろう?」
自分を守る為に、という理由をつけるか。楼座は眉を寄せる。
「戦人くんは・・・本当に口が達者ねぇ?」
「いっひっひっひっ!お褒めの言葉として受け取っておくぜ」
こちらは銃を持っているというのに尚も関わらずにやにやとあのやらしい兄に似た笑みで笑ってくる。
「・・・・その笑み、やめてくれる?留弗夫兄さんを見てるみたいでいい気がしないの」
「お、確かにそれはすっげぇ不愉快だな?」
そう言いつつ留弗夫似の笑い方をやめない。
それが酷く楼座の癇に障って仕方が無い。
この甥に一泡吹かせてやりどちらが今、守られており優劣であるかを知らしめるべきだと思った。
楼座は口元に笑みを作る。

「戦人くん、自分の立場、わかってる?」
「え・・・ああ?」
楼座はそのままの体制で戦人に近づく。
不思議に思い戦人がその様子を見ていると楼座はズボンの上から戦人の下半身を細い指先で弧を描くように摩ってきた。
「うをお・・っ???!ちょっ・・・・え・・な、何を」
「戦人くんは今何も出来ない、発言を許される立場にもいない、それ、分かってる??」
ズボンの上から楼座はその部分に口をつけて顎を動かす、びくりと戦人は大きく反応した。
ようやく見れた甥の焦りの反応。笑った後でぐりっと押し込むように布下を噛んでいく。
ベルトに手を伸ばして緩めてずらしそれを空気中に晒す。
手を伸ばして止めたいが縛られているためそれも出来ないのだろう。
「ちょっ・・・おばさ・・・・!!!」
戦人が抗議の声をあげる前に楼座は根元を下に押さえ、ざらざらとした陰毛を摩る。
そして指を滑らせて筋を辿っていく。
滑り落ちる指先の感触に戦人の口から声が漏れはじめる。
びくびくと長身の男が下肢への刺激により怯える小動物のように震えている。

『あの留弗夫兄さんの子供にこんな事するなんて思いもしなかったわ』

楼座は僅かな優越感に口を歪ませた。戦人をもっと鳴かせる為に強く扱く。
「・・・んんぅっっ!!」
手の動きに仰け反る仕草、先程までの傲慢な態度は何処にいったのやら。
戦人は、「はぁ・・・」と息を吸い込んで罵倒しよとしたのだろうか、しかし楼座の顔を見て言葉を飲み込んだ。
相手が相手なだけに強い言葉でけなす事も出来ないのだろう。

「声を抑えて頂戴?・・・・真里亞が起きちゃうわ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!!!」

楼座の言葉に戦人は言葉を飲み込んだ。
後ろで疲れて眠っている真里亞がいる事を思い出したのだろう。

その反応を見て楼座は首を僅かに横に向けて微笑む。

「それにしても戦人くんって敏感なのね・・・・もう、ここ、こんなになってるわよ・・?
・・・・私は頭がいい子も、理解力がある子も・・・・・そして素直な子も好きよ?」

いいながら髪を耳に掻きあげて口を開けて勃ち始めているそれを咥えた。
「・・・・っ・ぁ・・・っ・・ろー・・ざぁ・・おば・・さん・・・!!」
目を細めながら戦人はその様を呆然と見ている。
室温の寒さと口内の熱から息が白く染まっていく。
卑猥な水音に耳を閉じたくなる気持ちで沢山だった。
「〜〜っ、あっ・・・・っ・・・く、、、、」
「うん・・・?どうしたの?・・情けない声だして・・・」
絵羽のような嫌味を含めた笑みで楼座は楽しそうに戦人の顔を見て笑ってやった。
あの憎たらしい兄も一緒に痛めつけているようで愉快だった。
男としてのプライドを傷つけてしまったのだ、悔しいだろうな、などと考える。虚ろな目は焦点を合わす事なく、それでも楼座の方向を見ていた。
軽く歯を立てた所で限界が来たのだろう、戦人は短く呻く。楼座は静かに口を離した。
達した後で戦人はぐったりと体を項垂れさせた。
「っ・・・・・」
煩いくらいの静寂の中で戦人の呼吸音だけが響いていた。

「・・・お疲れ様」

楼座は呟いて戦人から身を放す。
そのまま放っておこうと身を翻そうとした時、
戦人が顔を俯かせてぼろぼろと泣いているのに気がついた。
楼座は驚く。
まさか泣くとは思っていなかった。
声を出さずに泣かれるものだからじわじわと罪悪感が湧き上がってくる。

本当に恥かしかったのだろうか。

楼座はその頭に手を伸ばす。
無言で口を閉ざして撫でた。意外な事にその髪質は柔らかい。

その姿が何年か前の甥の姿と重なった。
疑いようもなかった。彼はあの、戦人だ。
「ごめんなさい」
楼座は呟き戦人ごと椅子の背凭れに抱きつき手を回して縄を解いた。
ぱらりぱらりと解ける拘束にようやく戦人が顔を上げた。目は赤くなっていた。
ようやく自分がした事への重さに気がついていく。


娘が横で寝ていたというのに、戦人は自分達を守る為に残ってくれたのに。


「・・・戦人くん・・・ごめんなさい、違うの、私、ただ留弗夫兄さんが嫌いで、え?違う・・・貴方の笑い方が・・・兄さんに見えて、ああ・・・」

いつだってこうなのだ、かっとなって、そして後から最大限に後悔する。
酷く、自分が狼狽しているのが分かった。色々な思い出がフラッシュバックする。
『誰が、誰が兄弟で一番優しい心を持っているっていうのよ、私は・・・私は立派に貴方達の妹だわ・・・・!!』

悪い事をした。
また馬鹿にされる、怒られる、と思い身を震わす。

「違うの、兄さんが、兄さん達が悪いのよ・・・・!いっつも私ばっかり嫌な役目を押し付けて!!自分たちだけ・・・自分達だけぇ〜〜〜っっ・・!」


いきなり喚きだす楼座に戦人は驚いた顔をしていた。
その様子に、少しずつ状況を理解していく。
そして戦人はその手をゆったりと伸ばして楼座を抱きしめた。
楼座はびくりと肩をあげる。

「叔母さんは、もう忘れてるかもしんねーけどよ・・・・約束だから」

掠れた声で戦人が呟く。

「・・・・楼座叔母さんは・・・俺が守るから」

いつか何処かで似たような事を言われた。
楼座は戦人の服をきゅっと強く掴む。
その時、もぞりと後ろのソファーから気配が動いて真里亞が目を擦りながらのろのろと起きてきた。
「うー・・ママ・・・・?・・・・戦人?」
二人の近くまで行き、顔を伏せている楼座を見て大きな瞳を曇らせる。
「うー・・・ママ?どこか痛い?大丈夫??」
自分の母親が声を押し殺し顔を抑えているので心配そうな声音で聞いてくる。

『ああ、そうだわ。わたしずっと誰かに甘えてみたかったのよ』

真里亞を引き寄せて戦人にしがみついたまま楼座は声を押し殺して嗚咽。
泣き虫なのは一体どっちだ。声に出さずに呻く。


今、ようやく、がちがちに凝り固まった思想を溶かし一人前の人間として地面に足をつけて歩く事を許された。
もし、朝を迎える事が出来たのならば、今度こそ、少しずつ大人になっていこうと二人を強く、強く抱き寄せて思う。


朝を、迎える事が出来たのならば。

















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