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●魔女三人+戦人
●EP2裏お茶会までのネタバレ
●魔女メイン。














「なんだかお茶会も飽きたわね」

ある日ベルンカステル卿がぼそりと呟いた。
その言葉に二人の魔女はきょとんとした顔を作った。

「言われてみればそうかものー茶菓子も同じ物ばかりであるしな」
「私はまだちょっとしか参加してないのよぉ。ベルンちょっと我侭なんじゃないのぉ?」

「そこで提案があるのだけど」
ラムダデルタが声を普通に無視してベルンはベアトリーチェを見る。

「自分達でお菓子を作って用意してみない」
緩やかに微笑んだ言葉に二人の魔女は顔を見合わせた。

魔法は禁止であくまで手作り。
という条件が出された。

別に競争の類ではないが、
誰が一番紅茶にあった美味しいお菓子を作ってくるか。
魔女達のプライドはそこにあった。




戦人はそこまでの話を聞いて自分達をあんな目に合わせている魔女がそんなのんびりとしたお茶会を開いている事にイラつくとかお前ら本当に遊んでいるよな、とか言いたい事は沢山あったが「はぁ」と一応相槌をうっておいた。
「しかし、言われても妾は自ら料理などしたことがなくてのぉ・・・ベルンカステル卿には自分の好きな物を作ればいいと言われてしまった」
いい加減聞いていいかな?と思って目線をあげる。
「それと俺が縛られているのになんの関係があるんだ」
魔女二人が後ろで食材を用意している後ろでベアトリーチェだけが戦人を連れてきている。
ベアトリーチェはその言葉を待ってましたと言わんばかりににこぉー・・と微笑んだ。


「自分の好きなモノでお菓子を作ろうと思っての?」
「俺は食材かよぉおおお!!!!」

冗談じゃない!この魔女は本気でやるぞ!!
戦人は逃げ出そうとしたが強く柱に結ばれている為に抵抗も出来ない。
どうする、これどうする!
などと混乱しているとベアトリーチェがゆったりと近づいてくる。
「お前の魂も容姿も全て気に入っておるぞ、自信を持って茶会の席に出せる程にな。ああ、そうだ髪の毛一本、余す事なく綺麗に使って振舞ってやろう」
クスクスと笑いながら指を伸ばして瞼に触れる。
そしてその指は胸に止まるその奥にある心臓を指差す。
「しかし、此処は妾一人がのけておく事にするがな、大切に・・・・な?」
ゆったりと爪を立てられる。戦人が痛みに目を細める。
「いひひ!俺なんて食べてもうまくねーぞ!第一それは人類の三大タブーじゃねーか!」
「近親相姦、親殺し、カニバリズム、かの?妾は愛おしい相手の全てを取り込むという事においては賛成でな、そもそも人ですらないがな」
にっこりと微笑みながら戦人を組み敷いてその手で頬を撫でる。
「言ったであろう・・・骨の髄まで愛してやると・・・のお・・・戦人」

妖艶に耳元で魔女は愛の言葉を囁いた。
戦人がぐっと息を飲んだ時だった。





「却下」



後ろでベルンカステルがぼそりと呟いた。
ベアトは『あるぇー』と言いたげな顔で振り向く。
「そんなの食べさせられて喜ぶわけないでしょう」
「豚とかもだけど、食べる前に食材見せられたら食欲ってうせるわよねぇ」

二人の魔女の言葉にベアトリーチェは少し拗ねたように戦人から身を離した。渋々と。
なんだか助かったのにいまいち喜べない複雑な心境で戦人は溜息をついた。

「というわけでベアトのお菓子が棄権になったから一番は私ってわけね!」

ラムダデルタが嬉しそうに笑いながらテーブルの上にどかどかとお菓子を置いていく。
飴細工をされたケーキやファンシーな形に作られたクッキーやらやたら豪華で綺麗なお菓子でテーブルの上にきらきらと飾られていく。
戦人一人があの時の光景を思い出して顔を青くしていたが後の魔女はお構いなく見入っていた。


「ほう・・これは見事な」
「本当・・・意外だわ」

二人の魔女が感嘆の息をつき率直に感想を述べた。


「をーっほっほっほ、凄いでしょう?ベルンより凄いでしょう!!なんていったって私は一番凄い魔女なんだから」
嬉しそうに両手を握り締めて喜んでいる。
ベルンとベアトはでは早速食べる事にしようとフォークを片手にそのケーキに刺そうとする。
そこで、二人は本能的、魔女的感ともでいうのか手を止めた。

「・・・いかがなさったベルンカステル卿」
「そういう貴方こそどうしたの、ベアトリーチェ」

二人は顔を見合わせる。そしてにこにことその様子を見守るラムダデルタの方へと視線を向けた。

『こいつがはたしてまともな物を作れるのだろうか』

二人の思想は珍しく一致した。

そこでベアトはもう何でもいいからこの場から立ち去りたいと願うやつれた戦人の方へと視線を向けた。

「戦人ぁ〜・・・・・」

にやぁ〜・・・・・と口の端を吊り上げてベアトは笑う。
戦人はびくりと肩をあげる。
「なんだよ」

ベアトが微笑む。
「なぁに、折角のゲストだ。茶菓子の一つでも振舞わねばホストとしての質が問われよう」
ベルンが表情を和らげる。
「みー。戦人がお腹をすかせて可哀想なのです。美味しいものを食べさせてあげたいのですよー。にぱ〜」

戦人は勝手な魔女たちの言葉にげんなりとする。
「明らかに実験台じゃねーか・・」
食材にされるよりはマシか?と眼の前にあるケーキに目を映す。
「変な物いれてないだろうな」
「失礼ね、あんた。人間が使う物しかいれてないわよぉ」
ベアトはその問いを肯定と受け取りフォークでケーキを刺し口まで運ぶ。戦人は渋々と口を開ける。
珍しくかなり美味しいシュチュエーションなのだが相手が相手なだけにあまりときめきはない。
その上ベアトが標準をわざとずらすものだから口の周りは生クリームだらけでべとべとになっている。
「おまえ・・・」
「すまぬ、すまぬ。悪戯がすぎたようじゃな。ほれ」
フォークを思いっきり口の奥まで突っ込めば戦人は口を閉じる。そして一度二度噛む。
柔らかいケーキを噛む音ではなく、なにか、ゴムを噛むような感触。
顔の色を真っ青にかえて静かに意識を手放した。


「ラムダ、貴方この中になにいれたの?」
ベルンが静かに聞いてみる。
「ふふ〜ん。見栄えがよくなるようにお気に入りの絵の具全色使ったんだからね」
「ほう・・・絵の具。他には?」
「ビー玉や綺麗そうな色をした水とか形が崩れないように粘土で固めたりとか色々頑張ったんだから!ね、美味しそうに出来てるでしょう??」


なるほど。確かに人間が使う『物』だ。

言葉に出したいのを抑えながらベルンカステルはラムダデルタの方へちらりと視線を送った。
「ふん!なんていったって私は超パーだからね!グーやチョキに負けないような秘策を立てる事ぐらい簡単なんだから!!」

ラムダはにっこりと微笑んで胸を張って笑った。




超パーはお前の頭だよ。




という突っ込みを二人の魔女は魔女に残された一欠けらの優しさから飲み込み曖昧に微笑んであげた。

「とりあえず、妾たちはベルンの焼いた焼き菓子でも食べながらお茶会を続けるとしようかのぉ・・・」

「ええーー!なんで!私が焼いたのも食べなさいよ!ベルン!ベアト!」
「ラムダ、形が綺麗すぎて勿体無くて私たちには食べれないのよ。ラムダが先に食べていいわよ」
ベルンカステルがにっこりと微笑めばラムダは表情を明るくして「わかったわ!」と言って口に放り込んだ。
そして隣で屍となっている戦人の横に静かに倒れこんだ。


ようやく静かになった席で二人の魔女が談笑しつつ二つの屍をおいてお茶会を再開した。

「ところでベルンカステル卿、お主が焼いてきたこのクッキーだが、やたら塩辛くて適わんぞ」
「ベアトそれは醤油煎餅というのよ、甘くはないけど味は美味しいでしょう?」
「美味とはいえば美味だが・・・紅茶には合わんぞ・・・」

ぼりっ、と、ある意味では老体に一番よく似合う音を響かせながら二人の魔女は紅茶を片手に煎餅を食べ続けた。
一番は一応食べれるだけベルンカステルなのか。
日本茶が欲しいなぁなどと思いながら時間は流れていった。




なんだかとても散々なお茶会でしたとさ。









まるで駄目な魔女達の昼下がり












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