ピンポーン、と景気の良い音が聞こえてこれまたはーい、と愛想の良い声を出して玄関を開けるとそこにいたのは


「花火、しようぜ」

「…一護」

「久し振りだな」


花火シーズンはついこの前終わった筈だ。


「ちょっと遅くない？」

「余ったんだよ」

「暇だし、いいけど」


夏休み中見る事がなかったそいつの背中がなんとなくだが逞しくなったように見えた。

何をやってたかなんて敢えて聞かない。夜空の下のあたし達を星と代わる代わるの花火の光が照らす。


「その、…悪かったな」

「…なにが？」

「約束してた花火大会、一緒行けなくてよ」

「いいよ気にしないで。来年もあるし」

「来年こそ連れてってやっから」

「じゃ、待ってる」

「…おう」


音を立てながら段々と花火の数は減っていく。沈黙の中、花火の音だけが響いた。


「やっぱり締めは線香花火か」

「一護下手だよね」

「うっせー」


あたしは一番線香花火が好きだ。簡単に消えそうで消えない、そんな所が呆気なかったり嘘みたいに粘り強かったりする人の命に似ているからかもしれない。


「？…あ、」


一護の手元を見ると珍しく線香花火がまだ光を灯していた。そして短くなったそれは落ちる事なく消えていった。


「…なんてお願いしたの？」


質問に答える事なく一護はさ、帰るか、と立ち上がって踵を返した。


「ねぇってばー」

「教えねぇ」


星空と花火に願うは


ずっと一緒に居れますように。


君との約束を守る為。