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novel
不夜城の狂宴(R−18)
同性同士で行為に及んでるシーンが有るので、
気を付けておいて下さい。
閲覧はあくまで、自己責任で。









―――鉄格子の嵌まった小さな窓から差し込む光は橙色で、 夜の訪れをテイトに報せた。

差し込む光の色が、橙から朱、紫になり やがて総てを覆い隠す様な漆黒の帳が幕を降ろす頃
重厚な造りの扉が
錆びた音を立てて開かれた。

「良い子にしていたか?テイト。」

扉を開け、そう尋ねながら此方に歩み寄って来る男――アヤナミに、
テイトは手を伸ばして抱き着こうとして――…四肢を戒める鎖に足をとられ、失敗した。
「……!!」
バランスを崩して倒れかけた華奢な肢体は、広い胸と、逞しい腕によって支えられる。
「…全く…、危ないだろう。……そんなに私が恋しかったのか?」

(…アヤナミ様。)顔を上げ、肯定の意を示して
アヤナミの薄い唇に口付ける。
表面だけを触れ合わせて離れようとすると顎を捉えられ、貪る様な深い其が与えられた。

肉厚な舌がテイトの口内を暴れて侵す。呑み込みきれなかった唾液が溢れて首筋を伝う頃になって、漸くテイトは解放された。

「…テイト。」
申し訳程度に着ているシャツの襟を割って、酸欠の為に大きく上下するテイトの胸元に、アヤナミの大きな掌が差し込まれる。
「…っ!」
ひんやりとした掌の温度に、ひくりと躰を震わせると、
耳許で低く嘲笑う気配がした。
「――怖いのか?」吐息と共に囁かれ、湿った感触が耳朶を這う。
「…っ(アヤナミ様…っ)」
その感触に背筋が粟立ち、じくじくとした暗い欲望が、腹の底から沸き上がって来るのをテイトは感じた。
そして、それになんとか耐えようと、ぎゅ、と目をつむれば、まるでそれを責めるように強く歯を立てられた。

「!!っ…っ(ぅ…あぁ!痛い…!)」ギリギリと音がしそうな程に喰い着かれ、皮膚が破けて温かな液体が耳朶を濡らす。
たまらず 瞼を開けて、暗い熱毒を孕んだ紅玉を見つめ、止めて欲しいと視線に乗せて懇願すると、うって代わって
慰撫する様に熱い舌が優しく這わされた。

それに僅かばかり安堵して、テイトは、己の指先を白い喉元に添え、
訴える様に紅玉の瞳を見上げる。
(アヤナミ様…)

其に気付いたアヤナミが薄く笑い、
テイトの小さな指先ごと、包み込む様に喉元に手を添えて
口内で何事か呟くと、赤黒い文字が浮かび上がり、次の瞬間弾けて消えた。
「さぁ、これで喋れる筈だ。…声はでるか?」
労る様に喉を擽る指に促され、やっくりと言葉を紡ぐ。
「…はい…。」

視線を上げると、テイトの大好きな紅玉の瞳には、後悔とも狂喜ともとれる、
複雑な色が浮かんでいる。

アヤナミの表情は、何かに悔いる様に、哀しげに歪んでいる様にも………
暗い喜悦に、恍惚と歪んでいる様にも、テイトには見えた。

(…アヤナミ様、貴方はどうしてそんな顔をなさってるんですか?)

(哀しいんですか?)

(愉しいんですか?)

(…悔いて…いるのですか?)

自分から、自由という名の翼をもぎ取り、
言葉を奪って、

愛情という名の縛鎖でがんじがらめに縛り付け、

この小さな箱庭に閉じ込めた事を。

(…そんな事…。
アヤナミ様にだったら…オレは…。)


―――始まりは、テイトにとって、酷く理不尽なものであった。
繰り返されるアヤナミの歪んだ行為に、訳も解らず何度も怒りを覚えて泣き叫び、抵抗しては
暴力と快楽に打ちのめされ、屈辱を味わい、無力な自分を呪い、理不尽な行為を強いるアヤナミを、怨み、憎んだ事も在った。

――だが、テイトはアヤナミを受け入れ、更には彼を
愛したのだ。

………アヤナミの、自身へ向ける歪な愛を―テイトは赦し、そんな彼を、愛しいと………思ってしまった。

(だから、今更そんな顔、する必要なんか無いんだ。)



両手を伸ばして頬に触れ、
複雑な感情に揺れる紅玉を正面から見据える。
「――アヤナミ様。」
「……。」
「オレは、貴方を、愛しています。」

「…!」
惑う瞳が僅かに見開かれる。
「貴方の、優しさも、狂気も、愛も、執着も、…憎悪でさえ。」

「…だから―…!っふ…ぅ」
――言葉の続きは、アヤナミの口内に呑み込まれて消えた。

テイトの総てを奪うかの様な荒々しさでもって舌が口内を荒らす。

引き千切られる様にして弾け飛んだ釦が硬い音を立てて床に散らばる。

温度の低い掌が、性急な動きでもってテイトの白い肌を這い廻り、稜線をなぞる。

「―っふ、は、ぁっ」
口付けが解かれると、口端から伝い落ちた唾液を辿る様に、柔肌を舐め上げられる。

唇から顎、首筋を辿って浮き出た鎖骨にかじりつかれ、
更に下って薄桃色の突起に噛みつかれると、堪えきれず喘ぎが漏れた。
「ひゃ…ぁっあ、アヤナミ…さまぁっ!」
アヤナミの頭を抱き込む様に腕を回して縋りつくと、
腕の中で、くつりと笑う気配がした。

「テイト…気持ち良いのか?」
アヤナミは、舌で先端を弄ぶ様に転がし、
もう片方を指の先で押し潰しながら、揶揄の色を含んで尋ねてくる。

「あっ…ゃっぁ…は…ん、だ……だめ…っ」
「駄目…?そんな筈は無いな。」

否定の言葉を口にすると、可笑しそうに笑い、
胸元を弄くっていた手が下肢に降ろされ布地を押し上げ主張するテイト自身に触れた。
「あっ…ゃ……ん。」
そしてそのまま掌に覆われ、布地ごと揉み込まれる。

「…此処をこんなにして…いやでは無いのだろう?テイト…。」
耳許で甘く囁かれ、ふるふると首を振って、否定しようとするのだが、
躰はそれを裏切って、下肢を弄くるアヤナミの手に擦り付ける様に、あさましく腰が揺らめく。
そして、その動きに応える様にアヤナミも手を動かしてやる。
「あっ…ぁっ…ゃ、ぃくっ、ぁぁ…っ」
やがて、びくびくとテイトの細腰が揺れて、下衣に射精を示す卑猥な染みが広がった。

「はぁ…、はぁ………!?ぁっやっアヤナミ様、まっ…ぁぁあっ!」

テイトが息を整える間もなく、些か乱暴な所作で下衣がずり降ろされ、
長い指が秘部に当てられ、突き進んでくる。
「やっあ、…ん、…あっアヤナミ様、アヤナミ様!」

押し寄せる異物感に耐えようと、
必死でアヤナミの名を呼ぶテイトを宥める様に、汗ばむ額に口付けが落とされる。

何度か抽挿を繰り返し、アヤナミの指がある一点を掠めた時、テイトの躰が跳ね上がった。
「あぁっ!」
「テイト、…此処が良いのか?」
アヤナミは、其処を重点的に攻め上げる。
「ん…ぁあ、だめ…また…ぃっちゃ…!?」

あと僅かで再び絶頂を迎える手前で、 アヤナミの指が、体内から引き抜かれた。

「ぅ…ぁ…アヤナミ…さま…?」

「…テイト。そろそろ私を愉しませてくれても、良いだろう…?」

蕩けた後孔に猛る熱塊が押し付けられ、そのまま一気に貫かれる。

「あっ…ひぁぁあっ!」

衝撃で再び精を放ってしまうテイトをそのままに、
アヤナミは腰を打ち付け、内奥を深く穿つ。

「ぁっあっ…ぁゃ…な…ぁあ、」
ガクガクと揺さぶられ、
過ぎる快楽に視界が生理的な涙で滲む。
眦から零れ落ちた涙を、アヤナミが舌で嘗めとり、
そのまま深く口付けられた。
「ん……ふ…んんっ。」
どちらともなく舌を絡めて求めあい、我を忘れる様にして、互いの躰を貪った。

「ぅ…ぁっ、ぁあ、あっ…あや…アヤナミ…さまぁ!」

「くっ…」

やがて、テイトの幼い雄が限界を迎えて弾け、
アヤナミもその後を追うように、欲望をテイトの内奥に放った。




―――薄暗い室内で、
早馬の様に息を荒くしたまま向かい合う。

快楽に蕩けて甘く潤んだ翡翠と、
深い欲情を湛え熱毒を孕み、鈍い光を放つ紅玉が絡まる。


――まるでお互いに吸い寄せられる様に唇が重なり、
再び律動が開始される。
「…アヤナミ様。」
「テイト…。」

(……きっと、私達は壊れているのだ。
…愛する者を籠に閉じ込め、自由を奪い、狂った様に愛する事しかできぬ私も…そして其を、受け入れてしまったテイトも…。だが…それでも、構わない。
愚かな私を愛してくれる、愚かなテイトがどうしようも無く――愛しい。)

(壊れていても良い、破綻した関係でも構わない。…オレが何処かに飛び去ってしまわない様に
翼を折り、手足を引き千切ってでも、オレを繋ぎ止め、独占しようとするアヤナミ様が………
どうしようも無く、愛しい。――だから、神様。…どうかこのまま、この人と、ずっと――…)




際限無く求め合う二人を、小さな格子窓から差し込む月明かりが、
優しく照らしだしていた。



――――二人の哀しみと狂気の愛の宴は、まだ終わらない―――。


end

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